Investment Research · 7871 東証STD/名証M · 2026.09.23 更新 · 株価 1,012円(9/18終値・9/21〜23は現物市場休業)

フクビ化学工業 (7871)
統合投資分析レポート

現金・投資有価証券・年金資産(税後)で時価総額の約93%/金融資産床801円/株探PBR0.48倍
成長エンジン=フェノール断熱材「フェノバボード」×省エネ義務化 / 持ち合い解消を自社株買いで吸収する資本政策へ

A−当商会の採点
当商会の検証済み上値基準 1,258円 / 下値基準 649円
非対称比0.68(幅・小)×確度14点(高)=A−。
株探PBR0.48倍。ただしROE4%台=低評価には理由がある。
原資料の3年シナリオは未検証のため、ランク計算には使わない。
現在株価
1,012円
時価総額 193.7億円(自己株控除19,141,242株)
自社株取得反映後BPS 2,063円
修正BPS比 0.49倍
6月末・8月自社株買い反映後
現金+証券+年金(税後)
937円/株
株価の約93%をカバー
金融資産床
801円/株
現金−有利子負債+有価証券75%
EV/EBITDA
1.2倍
証券は税後控除・27/3期予想EBITDA37億
当商会ランク
A−
6軸14点・非対称比0.68
01

なぜ今、フクビ化学なのか

5つのカタリスト
Catalyst 01 · 最重要
🔄
持ち合い解消の「受け皿」は自社株買い
8.97→6.12%
三井化学 変更報告書(義務発生日 2026/8/10)
8/10にToSTNeT-3で65万株(3.27%)を993円で取得。同日に三井化学(退職給付信託)の保有割合が2.85pt低下=約59万株。政策保有株の売りを市場に出さず自社で吸収する前例ができた。残る長瀬産業11.91%・三井化学6.12%・三井物産プラスチック4.75%も確認対象。比率は会社開示・大量保有報告書の公表ベースで表記。
需給の重し解消EPS+3.4%
Catalyst 02 · 成長エンジン
🧱
フェノバボード × 省エネ義務化 × 競合の受注停止
+26.7%
27/3期1Q フェノバボード売上 前年同期比
2025年4月の省エネ基準適合義務化、2027年GX ZEH、2030年ZEH水準義務化で高性能断熱材の需要が構造的に増加。ナフサショック下で旭化成建材がネオマフォームの受注を一時全面停止(4/20〜)し、需要がフェノバに流入。第2工場(投資36.5億・補助金上限9億)は2027年10月完了予定。
国内2社体制(推定)補助金採択
Catalyst 03 · 資産
🏦
本業が実質タダ ── EV/EBITDA 1.2倍
92%
ネットキャッシュ+証券+年金資産(税後)÷時価総額
ネットキャッシュ95.9億+投資有価証券(税後)60.8億+年金資産(税後)22.7億=179億円 vs 時価総額194億円。土地含み益(税後17億)まで足すと時価総額を上回る。売上428億・EBITDA37億の事業が値段ゼロで付いてくる計算。
NCAV≒株価自己資本比率72.5%
Catalyst 04 · モメンタム
📈
通期営業益+30%予想・1Qは+44%
OP 22.5億円
27/3期会社予想(前期17.3億)・EPS 98.6円
迅速な価格転嫁と生産性改善で1Q営業益5.5億(+43.8%)。精密(車載メーターカバー・HUD)が売上2.2倍。PER10.3倍・配当利回り3.1%・累進配当。
Catalyst 05 · オプション
🗝️
MBO・TOBの「条件」が揃いつつある
① 支配構造
創業家(資産管理会社 八木熊13.4%+創業家個人(会長)4.3%)17.7%。上位10株主で約59%、安定株主が厚く公開買付けの成立ハードルが低い。
② 資金面
1,600円(PBR0.76倍)でのMBOでも必要資金254億円。余剰現金+証券売却+EBITDA3倍のLBOで約240億円を賄える。会社の資産で買える典型形。
③ 外部圧力
会社自身が「PBR1倍割れ・ROE<資本コスト9%」を認め改善を宣言(企業価値向上2030)。東証要請・持ち合い解消の進行で、非公開化が合理的な選択肢になり得る。
2025〜2026年 主要イベント
2025.03.25
「企業価値向上2030」公表。PBR1倍割れ・ROE<株主資本コスト(9%前後)を明記、ROE8%以上を2030年目標に。
2025.05
累進配当を導入(配当性向30%以上+機動的自己株取得)。
2025.10 / 2026.01
フクビ岡山が大規模成長投資補助金に採択→交付決定。フェノバ第2生産拠点を福井県内に建設(投資規模36.5億円)。
2026.04
ナフサショック。当社は全製品で供給制限・納期調整。旭化成建材がネオマフォーム受注を停止(4/20)→株価は上場来高値1,347円(4/22)。
2026.05.14
26/3期決算。通期予想は中東情勢を理由に「未定」→株価は6/11に年初来安値846円。
2026.08.07〜10
1Q好決算と通期予想(OP+29.9%)公表、同時にToSTNeT-3で65万株取得。三井化学が8.97%→6.12%へ。
現株価1,012円の位置づけ
ネットキャッシュ+証券(税後)818円
+年金資産(税後)937円
金融資産床801円
現在株価1,012円
当商会上値基準1,258円
SOTP理論値(中央)1,531円
BPS(自社株取得反映後)2,063円

バー長は自社株取得反映後BPS2,063円=100%。株価はその約49%。SOTPは参考推計で、当商会のA−判定には使用していません。

一文投資テーゼ
フクビ化学は、現金・有価証券・年金資産だけで時価総額の9割を賄う「実質EVゼロ」の樹脂建材メーカー。省エネ義務化で伸びるフェノール断熱材という成長エンジンと、持ち合い解消を自社株買いで吸収する資本政策の変化が重なり、低ROEゆえの株探PBR0.48倍には理由がある。ただし上値を開けるのは「ROE改善」か「資本イベント」であり、時間を味方につける前提の銘柄。
02

NAV分析 ── 時価総額194億円の中身

本業は実質ゼロ評価
現金及び預金
105.5億円
6月末111.9億−自社株買い6.45億(推定)
投資有価証券
76.4億円
上場株 含み益51.1億(取得原価の3.2倍)
退職給付に係る資産
32.8億円
年金の積立超過(前期比+11.3億)
有利子負債(リース含む)
9.6億円
借入1.2億+リース8.5億・実質無借金
時価総額 vs 非事業資産の積み上げ(億円・税後)

税率30.6%で含み益・年金資産を税後換算。土地含み益はBaseケース(P3参照)。

資産ブリッジ ── 1株あたり(発行済−自己株=1,914万株)
項目金額1株対株価
ネットキャッシュ(現預金−借入−リース)95.9億501円50%
投資有価証券(含み益に税効果控除)60.8億318円31%
小計:キャッシュ+証券156.6億818円81%
年金資産(税後)22.7億119円12%
小計:+年金資産179.4億937円93%
土地含み益(税後・Base)17.0億89円9%
非事業資産 合計196.4億1,026円101%
時価総額(1,012円)193.7億1,012円100%

残りの運転資本(売上債権・棚卸資産−仕入債務)・工場設備・ブランド・顧客基盤は0円で付いてくる勘定。

バリュエーション指標
指標値コメント
PER(27/3期予想EPS 98.6円)10.3倍ネットキャッシュ控除後の実質PERは約5倍
株探PBR0.48倍9/18確定終値。自社株取得反映後BPS2,063円で株価/BPSは0.49倍
修正PBR(土地含み益Base加算)0.47倍修正BPS 2,152円
金融資産床801円現金−有利子負債+有価証券75%(当商会の検証値)
EV/EBITDA(証券税後控除)1.2倍証券を税前で控除すると0.8倍
配当利回り(年31円)3.06%累進配当・配当性向31%
正規化FCF利回り約7%EBITDA約30億−法人税約6億−設備投資約10億
ROE(27/3期予想)4.8%会社認識の資本コスト9%を大きく下回る
SOTP(事業価値+非事業資産)── 1株あたり理論値
事業価値の置き方事業価値株式価値1株
NOPAT 15.6億 × 8倍125億261億1,364円
NOPAT 15.6億 × 10倍156億293億1,531円
NOPAT 15.6億 × 12倍187億324億1,693円
EBITDA 35億 × 5倍175億312億1,630円
EBITDA 35億 × 4倍140億277億1,447円

非事業資産=余剰現金(現預金−月商1ヶ月分36億)+証券(税後)+年金資産(税後)−有利子負債−非支配持分。土地は事業用のため二重計上を避け除外。中央値≒1,531円。

有価証券の中身と「縮減」の進捗
その他有価証券(上場):取得原価23.4億円 → 時価74.5億円、含み益51.1億円(含み損は0.04億のみ)。非上場株1.97億、地方債0.2億。

政策保有株式は18銘柄・純資産比19.4%(CG報告書、2026年3月末)。中計では2027年度までに累計20億円の縮減を掲げ、24年度573百万・25年度479百万(売却益217百万)を売却済み。長瀬産業とは相互保有(当社は長瀬の議決権0.2%、長瀬は当社の12.8%)。

含み益の主役は土地ではなく有価証券。ただし時価でBSに載っているため「隠れ資産」ではなく、既にBPSに反映済み。売却すれば現金化=還元・成長投資の原資になる。

銘柄別明細は有価証券報告書「株式の保有状況」に記載。本稿は連結注記の取得原価・時価総額ベースで評価。

市場が"正しく"付けている価格 ── 残余利益モデル
前提 ROE資本コスト8%資本コスト9%
4.4%(26/3期実績)0.49倍 / 1,003円0.43倍 / 876円
4.8%(27/3期予想)0.54倍 / 1,120円0.48倍 / 980円
6.0%(中計28/3期目標)0.71倍 / 1,472円0.63倍 / 1,289円
8.0%(2030年目標)1.00倍 / 2,063円0.88倍 / 1,804円

適正PBR=1+(ROE−CoE)/(CoE−g)、g=1%。現株価は「ROE4.8%が続き、資本コスト9%」という現状維持シナリオとほぼ一致。資産の厚さだけでは上がらず、ROE6%への道筋か資本イベントが株価を動かす。

03

土地含み益 ── 取得時期×公示地価で拠点別に推計

Base 税前24.9億 / 税後17.0億
📌 連結の土地簿価は19.1億円(約29万㎡、平均6,600円/㎡)。福井の本社工場は昭和37年取得で簿価1,290円/㎡と極小だが、郊外の大規模工場用地のため単価が伸びず、含み益は「厚いが巨大ではない」。広済堂型の"都心一等地の眠れる資産"ではなく、資産価値の主役はキャッシュと有価証券である点に注意。
Bear(保守)
11.4億円
税後7.8億 · 41円/株
Base(中立)
24.9億円
税後17.0億 · 88円/株
Bull(強気)
39.4億円
税後26.8億 · 139円/株
土地簿価(連結)
19.1億円
Base時価 約44億(簿価の2.3倍)
拠点別 土地評価(有価証券報告書 主要な設備の状況 × 2026年地価公示・基準地価)
拠点(所在地)取得時期面積簿価参照地点(2026年・円/㎡)評価単価 Bear/Base/Bull含み益 Bear/Base/Bull
本社・本社工場
福井市三十八社町33-66
1962〜63年
昭和37〜38
79,716㎡3.70億
4,640円/㎡
福井09-1 上森田(工業地域・大規模工場)17,100/09-5 若栄町 22,500/09-6 重立町 23,3001.3 / 1.8 / 2.3万6.7 / 10.6 / 14.6億
坂井工場
坂井市坂井町定旨1-1
1983年
昭和58
92,857㎡3.84億
4,135円/㎡
坂井05-4 上新庄(丸岡駅前商業)29,000/坂井00-7 住宅地 30,500 → 郊外工場地として40%水準0.8 / 1.2 / 1.6万3.6 / 7.3 / 11.0億
三方工場
若狭町三方
1970年頃
旧フクビミカタ
14,139㎡0.29億
2,050円/㎡
若狭00-1 三方駅前(路線商業)17,900(−1.6%)0.5 / 0.8 / 1.1万0.4 / 0.8 / 1.3億
東京支店 フクビビル
品川区大井1-23-3
1993年竣工
平成5
約450㎡
推定
8.78億
3拠点計
3,144㎡
品川05-20 大井1-10-4(大井町駅180m)3,220,000(+19.3%)/品川05-2 大井3丁目 1,440,000130 / 180 / 240万0.3 / 3.6 / 7.9億
大阪支店 フクビビル
吹田市江の木町17-12
1995年竣工
平成7
約800㎡
推定
旧吹田7-4 江の木町(準工)158,000(2010年)/吹田05-7 江坂町1丁目 1,930,000(+12.2%)28 / 35 / 45万
その他営業拠点
名古屋は賃借
—約1,894㎡
推定
地方都市の業務地を想定5 / 8 / 12万
フクビハウジング(71%)
岩手県紫波町片寄
1991年
バブル期
12,469㎡1.33億
10,670円/㎡
紫波05-1 日詰(商業)31,100/紫波00-2 住宅 32,8000.7 / 1.0 / 1.3万−0.5 / −0.1 / +0.3億
アリス化学
あわら市東田中6-1
2016年
連結時に時価取込
12,562㎡0.68億
5,410円/㎡
あわら00-3 市姫(住宅)22,800/00-1 15,8000.5 / 0.8 / 1.1万−0.1 / +0.3 / +0.7億
FUKUVI USA(75.9%)
Huber Heights, Ohio
1996年〜74,150㎡
18.3エーカー
0.48億オハイオ州工業用地(1エーカー当たり)$55k / $85k / $120k想定、1ドル147円—1.0 / 1.8 / 2.8億
FUKUVI VIETNAM(86.7%)
Amata工業団地(ドンナイ)
2019年15,774㎡1.78億
長期前払費用
土地使用権。取得から7年、工業団地賃料上昇を反映±0 / +25 / +50%0 / 0.4 / 0.9億
合計約30.5万㎡20.9億11.4 / 24.9 / 39.4億

出所:有価証券報告書(第91期・第92期)主要な設備の状況、国土交通省 地価公示(2026年1月1日)・都道府県地価調査(2026年7月1日)。工場用地は大規模画地・郊外立地のため近隣の商業地/住宅地の35〜60%で補正。東京・大阪・その他の面積配分は有報の合計値(3,144㎡・簿価8.78億)から当方推定。税率30.6%、子会社は持分比率で按分。千葉工場・岐阜加工センター・あわらバイオマス・名古屋支店・フクビ岡山(岡山)は賃借。

拠点別 含み益(税前・億円)
取得時期から読む「含み」の濃淡
昭和37〜38年(1962〜63)
本社工場・本社:高度成長期の取得で簿価1,290円/㎡(本社工場部分)。福井市工業地の平均は1996年の約16万円/㎡から3万円/㎡へ下落したが、取得価格が極小のため含み益は約11億と最大。
昭和58年(1983)
坂井工場:簿価4,135円/㎡。9.3万㎡と面積最大で、第2の含み益源。
平成5・7年(1993・95)
東京・大阪のフクビビル:バブル崩壊直後の竣工で簿価は高め(平均27.9万円/㎡)。ただし大井町は再開発で2026年+19%、江坂は+12%と上昇が続き、含み益に転じつつある唯一の成長資産。八木熊など関係会社がテナント入居。
平成3年(1991)
紫波町(フクビハウジング):バブル期取得で簿価1.07万円/㎡、地方の地価下落で含み益ほぼゼロ〜微損。

賃貸等不動産は「重要性が乏しい」として時価開示なし=会社自身も大きな含みとは見ていない。

04

事業性 ── 樹脂の異形押出70年と断熱材の寡占

ニッチトップ性 B / ストック性 C+
建材事業
254.4億
営業益37.4億(14.7%)· 売上の61%
CSE事業
101.6億
営業益5.0億(4.9%)· 住設OEM・車両
精密事業
20.7億
営業益3.5億(16.8%)· 前期比+30%
グローバル事業
37.9億
営業損0.3億 · 米国・ASEAN
セグメント別 売上・利益(26/3期、億円)

セグメント利益は全社費用(24.9億)配賦前。主要顧客は伊藤忠建材(68.7億・売上の16.9%)。

値上げ1%の効き(営業利益率5.3%の薄さ)
製品価格の引き上げ(売上比)営業利益への上乗せ営業利益営業利益率
+1%+4.3億 +19%26.8億6.3%
+2%+8.6億 +38%31.1億7.3%
+3%+12.8億 +57%35.3億8.3%
📌 会社予想(売上428億・営業益22.5億)に対し、数量と費用を一定と置いた単純計算。実際に1Qは建材の粗利率が37.5%→37.9%へ上がり(値上げが原料高を上回った)、CSEは14.5%→12.3%へ低下。売上の6割を占める建材が値決めの側に立てているかが、この会社の利益の振れ幅を決める。
27/3期 1Q セグメント動向(前年同期比)
セグメント売上営業益ドライバー
建材64.7億 +5.9%10.1億 +17.2%駆け込み需要・価格転嫁、フェノバ+26.7%、防水部材・内装建材
CSE27.6億 +8.5%1.2億 −18.5%床材+12.7%・浴室OEM増も値上げが原料高に追いつかず
精密7.9億 +122%1.6億 +338%車載メーターカバー・HUD、カメラレンズカバー
グローバル9.0億 +5.2%−0.1億 改善ASEAN・米国の建材、円安
ニッチトップ性・ストック性の評価(製品別)
製品・分野ポジションストック要素成長ドライバー評価
フェノバボード
フェノールフォーム断熱材(フクビ岡山)
2019年に積水化学から事業承継。住宅用フェノールフォームボードは旭化成建材「ネオマフォーム」との実質2社体制(当方推定)。熱伝導率が板状断熱材で最高水準、不燃性・平滑性ハウスメーカー・工務店の断熱仕様に採用されると継続受注省エネ義務化(2025)→GX ZEH(2027)→ZEH水準義務化(2030)で付加断熱が標準化A−
樹脂製内装部材
見切・廻縁・巾木・目地・下地材
創業来の異形押出成形。品揃えの幅でプロ向け建材流通の定番(シェア開示なし)新築・リフォームの"消耗部材"。伊藤忠建材など流通経由で指名買い着工減で汎用品は逆風、非住宅・リフォームで補完B
外装・防水・通気部材
瓦桟・水切り・床下/屋根通気
坂井工場で生産。ナフサショック時に他社の供給制限で需要が集中工法(通気工法)に組み込まれるスペックイン型耐久性・省エネ性能要求の上昇B
非住宅:OAフロア・PLANTOOL
フリーフロア、フォークガード等
オフィス・工場・倉庫の安全/床システム。PLANTOOLは+14.1%物流施設・工場の新設/改修で継続需要物流倉庫・工場投資、ZEB化B
再生木「プラスッド」業界初「エコリーフ」取得、隈研吾事務所監修品。+22.7%公共・商業施設のデッキ・ルーバー環境配慮・県産材活用B−
CSE:浴室パネル・床材・車両ダクト2008年に松下電工の乾式浴室内装事業を承継。バス等大型車両ダクト、光ガイディングバー住設メーカーへのOEM=長期供給契約型住設の値上げ・リフォームC+
精密:AR(反射防止)成形品車載メーターカバー・HUD・カメラレンズカバー車種ライフ(4〜6年)の量産受注車載ディスプレイ大型化B+

会社はシェア・No.1を公式に開示していない。「2社体制」は国内の住宅用フェノールフォームボード製造者の状況からの当方推定。フクビ岡山は「フェノバボード国内唯一の生産拠点」(会社開示)。

市場環境 ── 「戸数は減るが、1戸あたり断熱は増える」
新設住宅着工:2025年度71.1万戸(−12.9%)と62年ぶりの低水準。建設経済研究所は2026年度77.7万戸(+7.6%)と反動増を見込むが、野村総研は2040年度61万戸まで減少と予測。

一方で規制は断熱材に追い風:2025年4月に全新築で省エネ基準適合義務化、2027年4月にGX ZEH基準、2030年までにZEH水準へ引き上げ。野村総研は2050年目標達成に年120万戸規模の省エネ改修が必要と試算。リフォーム市場は2024年8.3兆円→2040年9.2兆円。

→ 汎用内装材は"戸数"に連動して縮むが、高性能断熱材は"性能×改修"で伸びる二極化。会社も成長牽引分野の売上を約140億→FY27 240億→FY30 294億へ倍増させる計画。
ストック性の実像(評価 C+)
準ストック要素:①工法・仕様への組み込み(スペックイン)で一度採用されると継続、②住設メーカーへのOEM供給、③リフォーム・非住宅は新築より景気感応度が低い、④車載部品は車種ライフで数年単位の受注。

弱点:売上の6割が住宅関連で、汎用品は着工戸数と価格競争に晒される。過去7期の売上は356〜413億円、営業益8〜18億円とブレは小さいが、利益率は4%前後で頭打ち。サブスク・保守型の収益はない。

ナフサショック時の示唆:供給制約下で「モノを持っている会社」に需要が集中し価格転嫁が通った(建材OP+17%)。一方CSEはOEM顧客への転嫁が遅れ減益=交渉力は製品ごとに差がある。
05

業績・中期経営計画 ── 回復の初動と未達の中計

27/3期 OP+29.9%予想
1Q 売上高
107.8億
前年同期比+11.9%
1Q 営業利益
5.52億
+43.8%・期初1Q予想を38%上回る
27/3期 営業利益予想
22.5億
+29.9%・1Q進捗24.5%
27/3期 EPS / 配当
98.6円 / 31円
累進配当・2期連続増配
売上高(左軸)と営業利益(右軸)の推移(億円)

27/3期は会社予想、28/3期は中計目標。営業利益率は2.3%(21/3)→4.3%(26/3)→5.3%(27/3予)→6.2%(中計)。EBITDAは26/3期31.4億(マージン7.7%)。

第7次中計(2023〜2027年度)の目標と進捗
指標26/3実績27/3予想28/3目標判定
売上高405.9億428億450億要+5%
営業利益17.3億22.5億28.0億要+24%
営業利益率4.3%5.3%6.2%途上
当期純利益16.8億19.0億21.6億要+14%
ROE4.4%約4.8%6.0%以上未達濃厚
ROIC3.4%—5.9%未達濃厚
自己資本比率72.6%72.5%65%資本過剰
D/Eレシオ0.0270.0240.4倍以下レバ未活用

2030年展望:売上500億・営業益35億・ROE8%以上・ROIC7%以上。会社は25年度を「成長率が想定に届かず計画未達」と自己評価。

PBRとROEの推移 ── 「ROEが上がった年だけPBRも上がる」

会社開示(決算説明資料・中計進捗)。現在の株探PBRは0.48倍、ROEは4%台。残余利益モデルは参考推計です。

キャピタルアロケーション(2023〜27年度累計・会社計画)
原資億円使途億円
営業CF132成長投資105
負債活用50└ 新たな住まい(断熱等)45
CCC適正化15└ M&A / モビリティ10 / 5
政策保有株式縮減20└ R&D・人的資本・DX45
更新投資32
株主還元(配当35+自己株10)45

自己株取得は計画10億に対し24年度2.58億+26年度(8月)6.45億で9.0億まで消化。フクビ岡山は20億円のシンジケートローン(北陸銀行アレンジャー)を締結し、初めて本格的に負債を活用。

株主還元の推移
決算期年間配当配当性向総還元性向自己株取得
23/3期22円30.0%53.6%3.51億(62.7万株)
24/3期31円36.2%36.2%—
25/3期26円35.2%52.8%2.58億(35万株)
26/3期29円34.1%34.1%—
27/3期予31円31.4%約65%6.45億(65万株・ToSTNeT-3)

25/3期は業績連動で減配(31→26円)。その反省から25年5月に累進配当を導入し、以後は減配しない方針。

株価の10年レンジ(年間高値・安値・終値、円)

2026年は上場来高値1,347円(4/22)、安値846円(6/11)。信用買残9.4万株・売残0(9/11)。

06

株主構成とMBO・TOBの仮説

確率は置かない
大株主(2026年3月末名簿を8月の自社株買い・三井化学の売却で補正)
株主株数比率性格
㈱八木熊2,574,14013.45%創業家
長瀬産業㈱2,464,30812.87%持ち合い
三井化学(退職給付信託)約1,266,0006.12%*売却進行中
三井物産プラスチック㈱983,2205.14%取引先
創業家個人(会長CEO)829,7034.33%創業家
㈱福井銀行710,3003.71%地銀
昭和興産㈱669,5733.50%取引先
㈱北陸銀行624,9003.26%地銀
従業員持株会600,8083.14%安定
蝶理㈱600,3823.14%取引先
上位10名 合計11,323,33459.2%

比率は原則として8月の自己株取得後の自己株控除19,141,242株を分母に再計算。三井化学のみ変更報告書の公式比率6.12%(発行済ベース)をそのまま表示しているため、分母が異なります。会社開示の3月末比率では長瀬産業11.91%、三井物産プラスチック4.75%。株主数3,872名、外国人10%未満。八木熊は役員及びその近親者が議決権の過半数を持つ会社(関連当事者)。

株主属性
大量保有報告の履歴:2007年に三井化学→長瀬産業へ約3.3%のブロック移動、三井化学は9.68%→8.97%(2020)→6.12%(2026/8)。三井物産は6.74%(2020年時点、現在は三井物産プラスチック名義)。アクティビストの保有報告は見当たらない。
MBOの試算
価格プレミアムPBR必要資金
1,400円+38%0.66倍222億
1,600円+58%0.76倍254億
1,700円+68%0.80倍270億

必要資金=創業家17.7%以外の買付総額。PBRは27/3期末BPS予想2,114円基準。

資金の手当て(1,600円ケース)
余剰現金(月商1ヶ月分控除)約70億
政策保有株の売却(税後)約61億
LBOローン(EBITDA37億×3倍)約110億
合計約241億(必要額の95%)

長瀬産業など安定株主の再出資(ロールオーバー)があれば資金は十分。

資本イベントの仮説(確率は置かない)
MBO(創業家+ファンド):仮説
資金・支配構造は揃う。一方で会長は福井商工会議所会頭で地元経済界の顔、上場維持の意義を重視する可能性。

事業会社・ファンドのTOB:仮説
長瀬産業は自身も持ち合い縮減の立場で買い手より売り手寄り。断熱材強化を狙う化学・建材大手やPEが候補(旭化成は寡占上困難)。

現実的な本線:持ち合い株の売りを自社株買いで吸収し続ける「じわじわ型の資本効率改善」。
07

検証済みレンジ ── A−判定に使った上値と下値

上値1,258円 / 下値649円
📌 当商会のランク計算に使ったのは、現在値1,012円、資産基準の上値1,258円、PER下限による下値649円です。原資料にあった3年後Bear/Base/Bullや確率加重期待株価は当商会では未検証のため、本公開版では判定材料から外しました。
現在値・上値基準・下値基準
ランク計算の3点
現在値1,012円2026年9月18日確定終値。9/21〜23は現物市場休業
上値基準1,258円自社株取得反映後BPS2,063円 × PBRレンジ上限0.61倍
下値基準649円PER長期下限6.56倍 × 会社予想EPS98.9円
上値
+24%
資産基準
下値
▲36%
PER下限
非対称比
0.68
幅・小
確度
14 / 18
高 → A−
08

リスク分析

低評価には理由がある
① 新築着工の構造減
2025年度71.1万戸は62年ぶりの低水準。売上の約6割が住宅関連で、見切・巾木など汎用品は戸数に連動。野村総研は2040年度61万戸を予測。フェノバが伸びても汎用品の縮小を埋め切れないリスク。
② ナフサショックと反動減
2026年4月から全製品で供給制限・納期調整。1Qの好業績は駆け込み需要と他社の供給停止による部分がある。原料が正常化すると反動減と値下げ圧力が同時に来る可能性。CSEは値上げが原料高に追いつかず減益。
③ 低ROEの固定化
ROE4.4%・ROIC3.4%に対し会社認識の資本コストは9%。自己資本比率72%の資本過剰体質が続く限り、PBRは0.5倍前後に張り付く(残余利益モデルと一致)。中計の営業益28億は未達濃厚。
④ ガバナンス・関連当事者
2006年に当社および八木熊での架空取引が発覚し監理ポスト入り(その後解除)。現在も創業家の八木熊から年32億円を仕入。関連当事者取引の条件と、創業家支配下での少数株主保護が論点。
⑤ 大型投資の実行リスク
フェノバ第2工場は投資規模36.5億円(補助金上限9億)、2027年10月完了予定。需要が一巡すれば償却負担で利益率を下げる。補助金は完了検査で減額の可能性。シンジケートローンには純資産・営業損失の財務制限条項。
⑥ 流動性・需給
9月の出来高は1〜18日で6.4万株(1日平均5千株前後)。売買代金は1日500万円程度で、まとまった売買は株価を動かす。長瀬産業11.91%・三井化学6.12%などの大口保有が市場で売却されれば上値が重くなる。顧客集中(伊藤忠建材16.9%)も留意。
📈 ポジティブ監視リスト
追加の自社株買い/ToSTNeT-3:長瀬産業・三井化学・三井物産プラの保有減少と同時なら確度高い
フェノバボードの伸び率:四半期ごとの開示(1Q+26.7%)が2桁成長を維持するか
上方修正:1Q進捗24.5%、2Q累計予想10.6億の達成度
第8次中計(2028年春):ROE8%・DOEや総還元性向の数値目標の有無
大量保有報告:アクティビスト・ファンドの新規5%超
📉 ネガティブ監視リスト
下方修正:駆け込みの反動・原料再高騰で建材の営業減益
累進配当の撤回:還元姿勢後退のシグナル
持ち合い株の市場放出:自社株買いの受け皿なしで売られるケース
第2工場の延期・投資額増額:補助金減額や資材高
関連当事者取引の拡大:八木熊との取引条件の変化
09

最終評価

2026.09 総合評価 A−(当商会の6軸×非対称比)
当商会の採点(6軸×非対称比)── 総合 A−

当商会のランクは幅(上値÷下値)×確度(6軸・18点)のマトリクスで決まります。収益性は上値の置き方に、流動性はリスク軸に入れ、二重には引きません。ランクは下がりにくさの指標です。

軸点根拠
🦦安さ2PBR0.48倍で0.5倍以下。ただし中身は現金5割・有価証券4割の混合で「預金型」ではない。修正NCRは112%
🦉財務3自己資本比率72.5%、借入0.97億円・リース8.47億円に対し現預金105億円(取得後)でネットキャッシュ
🦫モート2福井県が「乾式の断熱パネルでは国内シェアナンバーワン」と紹介。付加断熱工法への採用拡大=工法に組み込まれる。ただしROIC3.4%は資本コスト9%に届かず、堀が数字に出ていない
🐊触媒3三井化学の変更報告書(8.97%→6.12%、義務発生日2026/8/10)と同日のToSTNeT-3で65万株(3.27%)取得。持ち合い解消が「すでに動いている」
🐝インカム3利回り3.06%(年31円)に加え、累進配当と配当性向30%以上を原則とする方針(会社資料)。配当性向31%、利益率は改善中で減配フラグなし
🦞リスク11日平均約5,000株(約500万円)で流動性が薄い。支配株主はいない(創業家系で約16%)

上値:資産基準(1株実質純資産 2,063円 × PBR 0.61倍)=1,258円、+24%。下値:株価より下の候補(52週安値 846円/床(1株あたり金融資産) 801円/PER下限×会社予想EPS 649円)のうち最も深いもの=649円、▲36%。非対称比 0.68(幅・小)× 確度 14点(高)→ A−。1銘柄の上限はポートフォリオの4%。到達PBRを0.5倍(決算期末の上限)〜0.67倍(2026年4月の高値)に振っても、下値を床(801円)に替えても A− のままです。

検算メモ(沼底バリュー商会・2026年9月22日)
  • 株価1,012円(9/18終値)・PBR・配当31円・27/3期予想(営業益22.5億円)は株探で一致。1Q(売上107.8億円・営業益5.52億円)は決算短信で一致
  • 現預金111.9億円・投資有価証券76.4億円・借入1.15億円・自己資本比率72.5%(6月末)は決算短信で一致
  • ToSTNeT-3:2026/8/10に650,000株を総額6億4,545万円(1株993円)で取得、自己株を除く発行済の3.27%(同社開示)
  • 三井化学:変更報告書で8.97%→6.12%(義務発生日2026/8/10)
  • 累進配当・配当性向30%以上:同社の個人投資家向け説明資料(2025年8月)。ROE目標(FY27 6%以上)・株主資本コスト9%前後:「企業価値向上2030」(2025年3月)
  • 補足:旭化成建材は2026年7月下旬にネオマフォームの受注再開を発表しています。1Qの追い風の一部は一時的です
  • 訂正反映済み:流通株式は6月末の自己株897,183株+8月取得650,000株を除く19,141,242株(1,914万株)で統一し、BPS・資産の1株値・時価総額を再計算しました
  • 土地含み益の拠点別推計・SOTP・MBO仮説は原資料由来の参考推計です。当商会のA−判定には使用していません。未検証だった3年確率シナリオは公開版から外しました
項目別スコア
評価軸評価根拠
割安性A株探PBR0.48倍・金融資産床801円・EV/EBITDA1.2倍
財務健全性A+自己資本比率72.5%・借入1.2億のみ
資産の含みA−証券含み益51億+年金資産33億+土地25億(税前)
収益性CROE4.4%・営業利益率4.3%・ROIC3.4%
ニッチトップ性Bフェノール断熱材の寡占・異形押出の老舗(シェア非開示)
ストック性C+スペックイン・OEM型の準ストック、新築依存
成長性B省エネ義務化・ZEH・精密倍増/汎用品は縮小
株主還元B累進配当・ToSTNeT-3、配当性向は31%と控えめ
カタリストB持ち合い解消の吸収・MBO余地、時期は読めない
ガバナンスC2006年の架空取引歴・創業家関連取引
流動性D1日売買代金 約500万円
総合(当商会基準)A−当商会の6軸×非対称比ではA−。資産の厚さ×成長エンジン×資本政策の変化を評価し、低ROEと流動性はリスク軸等へ反映
観察プラン(価格帯ごとの確認ポイント)
価格帯配分考え方
1,000円前後1/3現値。ToSTNeT-3価格993円近辺
900〜930円1/3現金+証券+年金(937円)割れ
850円以下1/326年安値・キャッシュ+証券(818円)接近

流動性が低いため指値で時間分散。2Q決算(11月)で建材の反動減の有無を確認してから2回目を入れるのも有効。

利確・撤退ルール
再評価目安:PBR0.65倍(約1,350円)に近づいたら、資産評価とROE改善が追いついているかを再確認。
見直し:①通期下方修正で建材が営業減益 ②累進配当撤回 ③第2工場の延期 ④持ち合い株が市場で大量に売られ、自社株買いが伴わない。
時間軸:3年でROE5%に届かず、自社株買いも止まれば資金を移す。
最終評価 ── 「本業タダ」×「成長エンジン」×「持ち合い解消」
1,012円を当商会の基準でどう見るか
株探PBR0.48倍、清原式ネットキャッシュ比率1.18倍、累進配当、持ち合い縮減を吸収する自社株買いを確認。一方でROE4%台と薄い流動性がある。6軸14点×非対称比0.68でA−と評価する。
なぜ安いのか(割り引くべき点)
ROE4%台で資本コストを下回り、残余利益モデルでは現株価は現状維持シナリオの適正値。土地含み益は25億程度で決定打ではない。ガバナンス歴と流動性の低さも機関投資家を遠ざける。資産だけでは上がらないことを前提に持つ。
何が株価を動かすか
①フェノバボード増産と省エネ規制でROE6%(中計)へ近づくこと、②持ち合い株の売りを自社株買いで吸収し続けること(EPS・ROEを押し上げる)、③PBR0.5倍・資産で買える構造が招くMBO/TOB。①②が本線、③はおまけのコールオプション。
当商会上値基準
1,258円
現値比 +24%
当商会下値基準
649円
現値比 ▲36%
確度
14 / 18
高
総合ランク
A−
幅・小 × 確度・高
一文要約
フクビ化学は、現金・証券・年金資産で時価総額の9割を持つ"本業タダ"の樹脂建材メーカーに、省エネ義務化で伸びるフェノール断熱材が乗った銘柄。低ROEという値札の理由は残るが、持ち合い解消を自社株買いで吸収し始めた点は変化だが、当商会の検証済みレンジは上値1,258円・下値649円。3年シナリオは判定から外し、A−は6軸×非対称比だけで付けている。