結論 ── 738円は「妙味あり」か
○ 保有妙味あり · 4.0/52026/2の自己株取得は5万株・4,650万円のみ。開示文に「一部株主より売却意向の連絡を受けた」と明記されたToSTNeT-3取引で、還元目的ではない。
決算説明資料の株主還元パートは配当グラフのみ。ROE・PBR・資本コスト・政策保有株削減方針・総還元性向すべて記載なし。中計の目標も売上高と営業利益率だけ。
取引先持株会14.5%+財団7.7%+銀行7.9%+社員持株会3.2%。敵対的TOBもアクティビストによる強制的な変革もほぼ不可能な資本構成。
資産の精査 ── 含み益はどこにあるか
主役は土地でなく有価証券| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 現金及び預金 | 34.09億円 | 現金同等物は31.97億円 |
| 有価証券(流動) | 0.30億円 | — |
| 投資有価証券 | 39.12億円 | 2026/3末 43.18億円 |
| 保険積立金 | 5.51億円 | 準現金(解約返戻金) |
| 有利子負債 | ▲35.38億円 | 短期20.0+1年内0.54+長期9.93 |
| 純金融資産 | 43.64億円 | 時価総額の46% |
2026年3月末は短期借入金が20億→53億に急増(賞与・仕入債務決済の季節要因)。自己資本比率は63.1%→60.4%。
バリューの源泉はキャッシュではなく投資有価証券39〜43億円。ここを取り違えると投資判断を誤ります。
| その他有価証券評価差額金(2025/12末) | 21.07億円 |
| 同(2026/3末) | 23.65億円 |
| 逆算した税引前含み益 | 約30.3億円 |
| 推定取得原価 | 約8.8億円 |
| 売却時の税金流出 | ▲約9.3億円 |
実効税率30.5%前提。大株主構成(京都銀行・滋賀銀行・GSユアサ・松風)から京都地場企業との相互保有と推定されます。
| 所在 | 用途 | 簿価 | 面積 | 簿価単価 | 評価 |
|---|---|---|---|---|---|
| 本社工場(京都府城陽市寺田新池) | 稼働中 | 1.57億円 | 29,000㎡ | 5,413円/㎡ | 含み益 大 |
| 筑西土地(茨城県筑西市) | 賃貸中 | 4.94億円 | 14,000㎡ | 35,274円/㎡ | 含み損リスク |
| ㈱デジテック(城陽市) | 稼働中 | 0.57億円 | 555㎡ | 102,072円/㎡ | 中立 |
| 連結 土地簿価 合計 | — | 7.07億円 | — | — | — |
城陽市の公示地価平均は97,141円/㎡(2025年、前年比+3.07%)、市内最高地点147,000円/㎡。工業地・大区画はこれを大きく下回るが、本社工場の簿価5,413円/㎡(1966年取得)は極端に低い。
| 想定単価 | 時価 | 含み益(税前) |
|---|---|---|
| 30,000円/㎡ | 8.7億円 | 7.1億円 |
| 40,000円/㎡(中立) | 11.6億円 | 10.0億円 |
| 50,000円/㎡ | 14.5億円 | 12.9億円 |
税引後では5〜9億円、1株あたり約40〜70円。稼働中の本社工場であり移転を伴わない限り換金不能。
内訳:有価証券評価差額 21.1億/退職給付調整 10.8億/為替換算 6.1億
株式市場が2割下落すればBPSは1株あたり100円程度毀損し得る。「PBR0.49倍」の分母自体が株式市況に連動している点は、下値見積もりで割り引くべきです。
バリュエーション ── 実質EVで見る
EV/EBIT 3.2〜3.7倍| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 時価総額 | 95.1億円 | 株価738円ベース |
| − 純金融資産(含み益売却税控除後) | ▲34.4億円 | 43.6億 − 税金9.3億 |
| = 実質EV(事業価値) | 60.7億円 | — |
| FY25 営業利益 16.5億円 | — | EV/EBIT 3.7倍 |
| FY26 会社予想営業利益 19.0億円 | — | EV/EBIT 3.2倍 |
| FY25 EBITDA 21.9億円(+減価償却5.4億) | — | EV/EBITDA 2.8倍 |
営業CFはFY25で21.1億円(前期9.8億円)。実質EV60.7億円は営業CFの約3年分。
逆に、PBR0.49倍だけを見て「含み益がさらにある」と考えると割安度を過大評価します。実質EV/EBITが最も歪みの少ない物差しです。
| 純金融資産(税引後)34.4億円 | 1株267円 |
| BPS × PBR最低0.31倍 | 464円 |
| 過去5年の株価安値 | 415円(2022/11) |
| 2024年の株価レンジ | 434〜624円 |
| 年度 | 高値 | 安値 | PBR高 | PBR安 | 時価総額(高) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年12月期 | 724円 | 490円 | 0.72倍 | 0.49倍 | 95.8億円 |
| 2022年12月期 | 675円 | 415円 | 0.63倍 | 0.39倍 | 89.4億円 |
| 2023年12月期 | 566円 | 426円 | 0.48倍 | 0.36倍 | 74.9億円 |
| 2024年12月期 | 624円 | 434円 | 0.47倍 | 0.33倍 | 82.6億円 |
| 2025年12月期 | 857円 | 462円 | 0.58倍 | 0.31倍 | 113.5億円 |
| 2026年(現在) | 930円(2/12) | 695円(6/25) | — | — | 95.1億円 |
2026年2月12日終値930円(自己株買付価格)から1Q決算(5/13)後に700円近辺まで下落。738円は直近レンジの上限付近です。
事業性 ── テーマの誤解を正す
主役は防爆照明| セグメント | 売上高 | 表面利益 | 表面率 | 全社費用配賦 | 配賦後利益 | 実質利益率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 照明機器 | 9,905 | 1,986 | 20.1% | ▲761 | 1,225 | 12.4% |
| 情報機器 | 9,531 | 1,313 | 13.8% | ▲732 | 581 | 6.1% |
| コンポーネント | 5,420 | 332 | 6.1% | ▲417 | ▲85 | ▲1.6% |
| その他 | 527 | 29 | 5.5% | ▲40 | ▲11 | ▲2.2% |
| 連結(全社費用 2,013 控除後) | 25,385 | — | — | — | 1,648 | 6.5% |
全社費用1,950百万円を売上高比で按分した参考値。修正点①「照明機器の営業利益率20%」は全社費用配賦前の数字。フル配賦では12.4%。修正点②コンポーネント事業はフル配賦で実質赤字。
前期比:産業用+4.0%/道路・トンネル+0.8%/LEDモジュール+23.6%
| セグメント | 受注残高 | 前年同期比 | 売上に対する厚み | ストック性評価 |
|---|---|---|---|---|
| 情報機器 | 89.6億円 | ▲26.7% | 約11ヶ月分 | 唯一の積み上げ型だが急減中 |
| 照明機器 | 26.3億円 | +9.9% | 約3ヶ月分 | 実質フロー型 |
| コンポーネント | 6.2億円 | +39.6% | 約1.3ヶ月分 | 完全にフロー型 |
| 合計 | 122.1億円 | ▲19.0% | — | — |
修正点③ ストック性は高くありません。官需比率49%、情報機器と道路トンネル照明は一般競争入札。リカーリング収益や保守契約による安定収益源は開示上確認できません。実質「毎期取り直し」のフロー型ビジネスです。
・2030年度までの道路照明LED化:政府のカーボンニュートラル施策
・LEDトンネル照明の「内部交換技術」を開発し、高速道路会社向けに施工性・コストで差別化
長期保有を考えるなら、2030年以降に照明機器事業が何で稼ぐのかという問いへの答えが必要。現時点で会社の開示に明確な回答はありません。
業績とダウンサイドリスク
8月2Qが山場| 項目 | 1Q実績 | 前年同期比 | 上期会社予想 | 通期会社予想 | 通期前期比 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,784 | ▲7.2% | 11,250 | 26,000 | +2.4% |
| 営業利益 | 416 | ▲39.2% | 500(▲37.3%) | 1,900 | +15.2% |
| 経常利益 | 416 | ▲38.9% | 510 | 1,970 | +13.1% |
| 純利益 | 264 | ▲44.3% | 240(▲58.2%) | 1,330 | +8.0% |
下期に営業利益14.0億円(=上期の2.8倍)を作らねば通期計画に届きません。1Q時点で会社は通期予想を据え置き。
| セグメント | 売上高 | 前年比 | 利益 | 前年比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 情報機器 | 1,934 | ▲27.7% | 195 | ▲62.4% | 10.1% |
| 照明機器 | 2,455 | +7.1% | 601 | +13.8% | 24.5% |
| コンポーネント | 1,233 | +9.1% | 92 | +81.4% | 7.5% |
| その他 | 161 | +14.9% | ▲2 | — | — |
照明機器とコンポーネントは好調。全社減益の犯人は情報機器ただ一つ。情報機器の1Q売上を年率換算すると77億円で、通期予想94億円との乖離が大きい。
| 信用買い残 | 306,900株 |
| 信用売り残 | 500株 |
| 信用倍率 | 613.8倍 |
| 1日出来高(直近) | 12,000〜19,000株 |
| 買い残 ÷ 出来高 | 約20〜25日分 |
930円で買った層の戻り売り圧力が構造的に上値を抑えます。小型・低流動性銘柄でこの倍率は、上昇局面での上値の重さを意味します。
株主構成とカタリスト ── MBO/TOBは現実的か
安定株主45.6%| # | 株主 | 比率 | 性質 |
|---|---|---|---|
| 1 | 星和電機取引先持株会 | 14.47% | 安定株主 |
| 2 | 公益財団法人京都青少年育成スポーツ財団 | 7.73% | 創業家系財団 |
| 3 | 株式会社京都銀行 | 4.62% | 相互保有 |
| 4 | 株式会社タチバナ | 3.39% | 安定株主 |
| 5 | 株式会社滋賀銀行 | 3.25% | 相互保有 |
| 6 | 星和電機社員持株会 | 3.16% | 安定株主 |
| 7 | 増山晃章(前社長) | 2.96% | 創業家 |
| 8 | 株式会社GSユアサ | 2.09% | 相互保有 |
| 9 | ヨシダトモヒロ | 2.02% | 個人 |
| 10 | 吉岡徹治 | 1.92% | 個人 |
親会社なし。ただし取引先持株会+財団+銀行+社員持株会+創業家で約39%。大量保有報告に名を連ねるのはみずほ系(信託銀行・銀行・アセットマネジメントOne・証券の共同保有)とみられ、アクティビストの参入は確認できません。
| 取得株数 | 50,000株(発行済の0.38%) |
| 取得総額 | 4,650万円 |
| 取得方法 | ToSTNeT-3(立会外買付) |
| 取得日 | 2026年2月13日 |
| 取得価格 | 930円(2/12終値) |
開示文に「当社の一部株主より、その保有する当社普通株式を売却する意向を有している旨の連絡を受けています」と明記。株主都合の受け皿取引であり、株主還元目的の本格的な自社株買いではありません。
✕逆風:社長交代でむしろ創業家主導のMBO動機は薄まった可能性。増山氏の直接持分は2.96%と小さく、財団7.73%を含めても支配的ではない。取引先持株会14.5%の合意形成というハードルもある
△兆候:スクイーズ目的の大規模自己株取得、経営陣による買い増し、アドバイザー起用の観測 ── いずれも確認できません
| 開示物 | 資本政策に関する記載 | 評価 |
|---|---|---|
| 2025年12月期 決算説明資料「株主還元」 | 配当推移のグラフのみ。ROE目標・PBR目標・資本コスト・政策保有株削減方針・総還元性向はすべて記載なし | ✕ |
| 中期経営戦略(2024-2026年12月期) | 数値目標は「売上高・営業利益率」のみ。ROE・PBR・資本効率の目標なし | ✕ |
| 配当方針 | 「安定配当の維持と将来の事業展開のための内部留保の充実」という旧来型の文言のまま | △ |
| FY25 年間配当20円 | うち2円は創業80周年の記念配当。実質的な普通配当は18円据え置き。FY26も20円予想=記念配当分を普通配当に振り替えただけとも読める | △ |
| 自己株式取得(2026/2) | 50,000株・4,650万円のToSTNeT-3。株主都合の受け皿取引 | ✕ |
PBRが2010年以降0.31〜0.93倍で推移し、一度も1倍を回復していない根本原因は、割安が見過ごされているからではなく、会社が是正に動いていないからです。
最終投資判断
総合 4.0 / 5 · ○| 項目 | 初版 | 改定 | 改定理由 |
|---|---|---|---|
| 割安性 | 4.5 | 4.5 | 変更なし |
| 事業の質 | 3.0 | 3.0 | 変更なし |
| カタリスト | 2.0 | 3.5 | 初版は「PBRが是正されるか」を採点していた。実際のリターン源はBPS複利であり、リレーティングは不要。起きなくてもいい事象の確率で減点していた。 |
| タイミング | 2.5 | 3.0 | 3年保有なら738円 vs 650円の差は年率約4%。テーゼを左右しない。待って買えないリスクの方が大きい。 |
| 総合 | 3.5(△) | 4.0(○) | サテライト配分も20%→30%で妥当に修正 |
| 価格帯 | PBR | 配分 | 判断根拠 |
|---|---|---|---|
| 738円(現値) | 0.49倍 | 1/2 | 現値でもPBR一定で年8〜12%。待つ理由が弱い |
| 650円台 | 0.43倍 | 1/2 | 8月2Qの下方修正で下げたら買い増す |
| 580円台 | 0.39倍 | 追加余力 | 歴史的バーゲンゾーン。想定外の下げ用 |
初版の「738/650/580で1/3ずつ」から「738で半分、650台で半分」に修正。3年保有前提では、12%高く買うコストより待って結局買えないリスクの方が大きいため。ただし1日出来高1〜2万株の低流動性銘柄であり、ポジションサイズは流動性から逆算して決めること。
② 有報「株式の保有状況」 ── 政策保有株の個別銘柄・保有目的・縮減方針の記載有無
③ コーポレート・ガバナンス報告書(最新版) ── 「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の記載有無
④ 岩崎電気(旧6924・2023年にカーライル系とのMBOで上場廃止=非上場)等との防爆・産業用照明での競合状況、シェア推移
⑤ 2027年以降の蛍光灯更新需要ピークアウト後の照明機器事業の姿
リターン試算 ── BPS複利という主エンジン
是正不要で年8〜12%| BPS成長率 | 3年後BPS | 3年後株価 | 累計配当 | 3年配当込みリターン | CAGR |
|---|---|---|---|---|---|
| 年6%(内部留保のみ・保守) | 1,783円 | 879円 | 60円 | +27.2% | +8.4% |
| 年8%(中立) | 1,886円 | 930円 | 60円 | +34.1% | +10.3% |
| 年10%(過去5年実績並み) | 1,993円 | 982円 | 60円 | +41.2% | +12.2% |
株価738円基準。PBRは現値の0.493倍で固定。PBRの改善・増配・カタリストを一切織り込んでいません。
| 期末 | BPS | 前期比 |
|---|---|---|
| 2020年12月期 | 914.74円 | +7.7% |
| 2021年12月期 | 1,002.14円 | +9.6% |
| 2022年12月期 | 1,071.03円 | +6.9% |
| 2023年12月期 | 1,187.78円 | +10.9% |
| 2024年12月期 | 1,315.10円 | +10.7% |
| 2025年12月期 | 1,471.04円 | +11.9% |
| 2026年3月末 | 1,497.14円 | — |
5年間で1度も減少せず、CAGR +9.97%。減配もなし。「安心して持てる」の実体はここにあります。
| 年度 | 純利益 | 包括利益 | うちOCI |
|---|---|---|---|
| 2021/12 | 909 | 1,283 | +374 |
| 2022/12 | 1,101 | 1,070 | ▲31 |
| 2023/12 | 793 | 1,733 | +940 |
| 2024/12 | 1,350 | 1,900 | +550 |
| 2025/12 | 1,232 | 2,129 | +897 |
| 5年計 | 5,385 | 8,115 | +2,730(33.6%) |
単位:百万円。OCIの中身は有価証券評価差額・退職給付調整・為替換算。純粋な内部留保によるBPS成長は年5〜6%程度と見るのが保守的。だから上表は「年6%」行が現実的なフロアです。
| 配当性向 | 1株配当 | 現値738円での利回り | 3年累計配当 | 実現の現実味 |
|---|---|---|---|---|
| 19.5%(現状) | 20.1円 | 2.73% | 60円 | ベースケース |
| 30% | 31.0円 | 4.20% | 93円 | 次期中計で還元方針が入れば射程内 |
| 40% | 41.3円 | 5.60% | 124円 | 政策保有株売却を原資にすれば可能 |
| 50% | 51.6円 | 6.99% | 155円 | 東証要請への本気の対応が前提 |
配当性向を40%に引き上げるだけで、株価が1円も動かなくても年率リターンは約2.9pt上乗せされます。加えて増配は通常PBRの切り上がりを伴うため、実際のインパクトはこれより大きくなります。
つまりこの目標株価はリレーティングをほとんど織り込んでおらず、むしろ保守的。配当込みリターンは738円基準で+40.9%、CAGR +12.1%。
PBRが過去レンジ上限に近い0.65倍まで戻れば3年後は1,226円で、CAGRは20%を超えます。
| 項目 | 遠藤照明 | 星和電機 |
|---|---|---|
| 3年累計リターン | +35.0% | +41.9% |
| 年率換算(CAGR) | +10.5% | +12.4% |
| 成功確率・業績安定性 | 上 | 中 |
| 配当利回り | 3%台 | 2.73% |
期待リターンは星和電機がやや上、確度は遠藤照明が上。ポートフォリオは遠藤照明70%/星和電機30%が妥当という結論を支持します。