Investment Research · 7868 · 2026.06

広済堂ホールディングス (7868)
統合投資分析レポート

東京博善売却観測(1,500〜1,800億円)/ NAV推定 1,021円(中立)/ 現株価521円は"決着前の価格"
TOB最頻値 800〜900円 / 時間 × 資産 × 制度 の三層構造型投資案件

TOB最頻値 800〜900円 · 現在比+54〜+73%
現株価はNAVの約50%水準。
「制度的決着」で即座にNAV再評価。
下値BPS492円・上値は大きい。
現在株価
521円
時価総額 約750億円(1.44億株)
NAV(中立ケース)
1,021円
現株価はNAVの50%水準
TOB最頻値ゾーン
800〜900円
規制ディスカウント後の現実解
土地含み益(中立)
800〜900億円
昭和期取得・都内6斎場
下値フロア(BPS)
492円
現株価との差▲5.6%
売却実現確率
70〜80%
会社コメント・都動き反映
01

なぜ今、広済堂HDなのか

5つのカタリスト
Catalyst 01 · 最重要
🔥
会社が売却検討を公式認定
1,500〜1,800億円
KKR等外資ファンドが買い手候補
FACTAスクープ後、「東京博善を含む子会社の売却など企業価値向上の施策を検討している」と公式コメント。否定せず、検討の存在は事実上確定。
会社が認定時価総額の2倍規模
Catalyst 02 · 最重要
🏛️
NAVが現在株価の約2倍
×約2倍
NAV中立1,021円 vs 現株価521円
土地含み益800〜900億円+事業価値780億円。統合EV約1,630億円・株式価値換算1,021円に対し現株価521円は約50%のディスカウント。決着が来ればNAVへの収れんが必然。
昭和期取得で簿価極小地価上昇で含み益拡大中
Catalyst 03 · 重要
🏙️
東京都介入で入札競争が発生
競合入札
KKR vs 行政 → 価格が上振れ
都知事が「墓埋法見直し・新設検討」を明言。都検討会でも民間買収が議題に。火葬場新設は物理的に10年以上要するため買収が唯一の現実策。どちらに売っても株価はポジティブ。
新設=物理的に不可競合で価格上振れ
Catalyst 04
⚖️
下値BPS492円・非対称リターン
1 : 3.3
リスク・リワード比
下値▲約120円(BPS492円)に対して上値+280〜+780円。下値が限定的・上値が大きい非対称構造が投資妙味の本質。
Catalyst 05 · 構造
⏱️
「何もなし」シナリオが構造的に消えつつある
① 広済堂HD側の出口事情
料金値上げ批判・規制強化圧力が高まるほど「今売る」が最合理な選択。現金残高+92%・有利子負債▲29%という財務変化がその証左。
② 10年縛りの迂回
縛りは「広済堂が東京博善株式を売却しないこと」のみ。KKRや東京都が広済堂HD本体をTOBするシナリオでは一切適用されない。
③ 制度的圧力の不可逆性
墓埋法改正・補助金・検討会と行政の動きが連鎖。規制が強まるほど売却インセンティブが上昇し、膠着はむしろ起きにくい。
一文投資テーゼ
広済堂HDは、社会問題化した火葬場事業の制度的決着に賭ける「時間 × 資産 × 制度」型投資。現在株価はNAVの約50%水準に放置されており、TOBがあれば800〜1,000円帯、制度決着が進めば1,000円超も説明可能なアセット型案件。
02

NAV分析 ── 資産の本当の値段

現株価はNAVの50%水準
保守(公示地価×70%)
600〜700億円
換金困難・制度封印を強く織込
中立(公示地価×100%)
800〜900億円
推奨ベースケース
強気(公示地価×120%)
1,000億円超
地価上昇継続・長期オプション
東京23区地価上昇(2026年)
+13.8%
渋谷区609万/㎡・品川区+15%
6斎場 所在地 × 路線価
斎場所在地路線価目安評価
代々幡渋谷区西原2丁目150〜200万円/㎡最大
桐ヶ谷品川区西五反田120〜160万円/㎡
落合新宿区上落合3丁目100〜130万円/㎡
堀ノ内杉並区梅里1丁目80〜110万円/㎡
町屋荒川区町屋1丁目70〜90万円/㎡
四ツ木葛飾区四ツ木50〜70万円/㎡小〜中

各斎場推定敷地3,000〜6,000㎡。昭和30〜50年代取得で地価は現在比10〜30倍超。含み益は年率+10〜15%で拡大中。

土地NAV評価の要点
用途制限があっても換金は可能:事業ごと売却すれば全額実現。「使えない」のではなく「単体では換金しにくい」だけ。
代替取得不能の希少性:都心で3,000〜6,000㎡を今から新規取得することは不可能。希少性プレミアムが乗る。
待てば待つほど高くなる:売却が遅れても地価上昇で含み益が積み上がる。時間が投資家の味方になる資産。
統合NAV ── 企業価値と株式価値換算(発行済み1.44億株)
シナリオ土地NAV事業EV(EV/EBITDA 12〜14倍)統合EV純有利子負債控除株式価値株価換算
悲観650億円480億円1,130億円△159億円971億円674円
中立(推奨)850億円780億円1,630億円△159億円1,471億円1,021円
楽観1,050億円1,070億円2,120億円△159億円1,961億円1,362円

純有利子負債:有利子負債159億円。現金224億円は運転資金・還元原資として留保。残存事業(印刷・人材)の事業価値は+100〜150億円程度を加算余地あり。

なぜ現在株価521円はNAVの半値なのか
市場は土地の用途制限・流動性の低さ・売却時期不明を理由に「解放されない可能性」を強くディスカウントしている。現在価格は"制度的決着の前の価格"であり、決着が見えた瞬間にNAVへの収れんが起きる構造になっている。
投資家にとってはこのディスカウントがチャンス。決着の蓋然性が高まるにつれてディスカウントが縮小し株価はNAVに近づく。TOB・買収提案が出た瞬間、市場は「解放される」前提でNAV再評価を開始する。
03

売却シナリオ ── 株価インパクトと確率

TOB最頻値 800〜900円
📌 TOBはNAV満額では実施されない。規制・世論・出口制約をディスカウントした「現実解」がTOB価格。東京都との競合入札が起きれば価格は上振れる。
X:売却なし
20〜25%
膠着・規制のみ
株価 470〜560円
BPS492円が下値の壁
業績軟化が再評価される
C:部分売却
15〜20%
不動産先行・段階的
株価 700〜850円
土地のみ200〜400億円
特別配当・自社株買い
B:東京都系買収
25〜30%
公的機関 800〜1,200億円
株価 800〜1,100円
確度高く安定的
TOB最頻値800〜900円圏
A:KKR等TOB
25〜35%
1,500〜1,800億円
株価 1,200〜1,600円
+130〜+207%
都競合で上振れの可能性
確率加重 期待株価
シナリオ確率中心株価加重寄与
X:売却なし22%515円113円
C:部分売却18%780円140円
B:東京都系28%950円266円
A:KKR等32%1,400円448円
期待値100%967円
確率加重期待値
967円
現在比 +86%
最大下値(Bear)
▲120円
BPS492円が床
10年縛りとTOB迂回
縛りの文言:「廣済堂は東京博善を今後10年間は売却しないこと」

KKRや東京都が広済堂HD本体をTOBするシナリオでは一切適用されない。親会社株をまるごと取得すれば東京博善は自動的についてくるため、出口の大半で10年縛りは実質的な障害にならない。
04

行政・制度動向

都は売却加速装置として機能
✅ 東京都の直接買収は財政・政治的に困難。ただし行政の動きは「売却阻止」ではなく「KKRへの売却を間接的に後押しする圧力」として機能している。
行政動向タイムライン
2025年8月
特別区長会:火葬助成(2.75万円/件)を新設。年間72,000件×2.75万円≒年20億円の財政負担開始。
2025年9月
小池都知事:都議会所信表明で「墓埋法見直し・監督強化・火葬場新設」を明言。
2026年初頭
厚生労働省:全国約1,300カ所の火葬場の実態調査を開始。国レベルの制度見直しが本格化。
2026年5月
東京都検討会:「民間施設の買収」が議題に浮上。新設が10年以上かかることも確認。
2026年5月21日
広済堂HD:ロイターに「売却を含む施策を検討中」とコメント。事実上の公式認定。
東京都の打ち手と実効性
手段実効性制約
民間施設の買収△困難都議会承認・KKR競合・運営能力
公営新設✕不可都市計画法・建築基準法・10年超
価格規制上限✕困難墓埋法に規定なし・財産権抵触
墓埋法改正△長期数年単位・国会対応必要
補助金継続+KKR容認◎現実的売却後に料金規制を法整備すればよい
「売却加速装置」の構造
規制強化が進むほど東京博善の収益モデルへのリスクが高まり、広済堂HD側の「今売りたい」インセンティブが上昇。

都がKKR売却を容認する論理:①売却後に料金規制を法整備 ②直接買収より政治コスト低 ③税金での高値買い批判を回避

→ 東京都は「対抗入札者」ではなく「価格競争の後押し役」として機能する。
05

最新決算(2026年3月期)

現金+92%・負債▲29%の意味
売上高
362億円
前期比▲5.4%
営業利益
67.4億円
前期比▲18.8%
純利益
47.4億円
前期比+6.2%(増益)
翌期経常利益予想
69億円
前期比+5.0%(回復へ)
貸借対照表(2026年3月期末)
項目金額前期比注目点
総資産720億円▲6.9%収縮中
純資産495億円+3.3%健全
現金・同等物224億円+91.8%異例の急増
有利子負債159億円▲29.4%急速返済
自己資本比率68.5%+7.7pt大幅改善
BPS492円/株下値の床
「現金+92%・負債▲29%」が示す意味
通常の営業活動だけでは説明できない財務変化。「売却前のBSクリーンアップ」という解釈が最も自然。

・大型不動産案件の回収完了
・投資有価証券の一部処分
借入金の前倒し返済(売却準備)

直近IR「剰余金の配当等をより機動的に行う選択肢を確保」→ 大規模現金還元の布石の可能性。
株式指標
PER(翌期EPS予想)約14.4倍
PBR約1.06倍
配当利回り(年13.34円)2.6%
ROE(翌期予想)9.4%
06

リスク分析

正直に向き合う
① 情報の信頼性
現時点で正式IR発表なし。東証が注意喚起済み。報道は「関係者によると」の推測表現を含む。ただし会社が「検討中」と公式認定しており、完全否定はしていない。
② 需給の重し
信用買残約1,700万株(発行済みの約12%)。5月高値で入った信用の期日は11月前後。正式発表なければ断続的な投げ売り圧力が続く。460〜480円台まで掘られる可能性を排除できない。
③ 規制強化のみの膠着
売却不成立のまま料金規制が進めば東京博善の収益モデルが毀損。現在の営業利益率20%超が急低下する可能性。逆説的にこれが売却インセンティブを最も高める要因でもある。
④ 売却後の残存事業
東京博善売却後に残る事業は印刷・人材・葬儀。印刷は構造的縮小、人材は課題残る。残存事業の株式価値は200〜250円相当で、売却益の特別配当と合わせて株主に還元される形が想定される。
⑤ 時間軸の不確実性
いつ決着するかは読めない。3年以内に動きがなければ資金移動を検討すべき局面。その間の機会コストと資金固定化リスクは常に意識が必要。
⑥ BPSは理論上の床
BPS492円は長期的な安全網であって短期の下値保証ではない。売却報道が完全否定された場合、需給相場では一時的にBPSを下回ることも起きうる。「大きな損失は出ない」という安心感でポジションを大きくしすぎないこと。
📈 ポジティブ監視リスト
IRトーン変化:「検討中」から「決定」へ
大株主変動:KKR等の大量保有報告書提出
行政文書化:都・区が処遇を明示する公式文書
特別配当・自社株買い:現金224億円の大規模還元発表
出来高の急増:情報先行の需給変化
📉 ネガティブ監視リスト
報道否定:「売却の意図なし」という公式発表
重大事故:火葬場での事故・スキャンダル
長期沈黙:半年以上の公式コメント・動きなし
資本政策放棄:配当の大幅削減・自社株買い中止
設備投資停止:縮小路線への転換
07

最終投資判断

2026.06 確定版
NAV比ディスカウント
▲50%
521円 vs NAV中立1,021円
TOB最頻値(現実解)
800〜900円
現在比+54〜+73%
確率加重期待株価
967円
現在比+86%
リスク・リワード比
1 : 3.3
下値▲120円 vs 上値+400円
Bear(売却なし)
20〜25%
膠着・規制のみ
470〜560円
▲10〜▲20%
BPS492円が床
Base(部分売却)
15〜20%
不動産先行売却
700〜850円
+34〜+63%
特別配当で還元
Bull(都系買収)
25〜30%
公的機関800〜1,200億円
800〜1,100円
+54〜+111%
確度高く安定的
Max(KKR等)
25〜35%
外資最高値売却
1,200〜1,600円
+130〜+207%
都競合で上振れも
最終投資判断 ── 3層構造で捉える
投資テーゼの本質
現在株価はNAVの約50%水準に放置されている。これは「制度的決着の前の価格」。決着が見えた瞬間にNAVへの収れんが起きる構造。短期はTOB・制度材料で700円超を狙え、中長期は決着後のNAV再評価で1,000円超も説明可能。最悪シナリオでも資産価値は毀損しにくい。
521円の評価と分割戦術
BPS492円まで▲5.6%の水準。信用買残1,700万株の整理が続く局面では460〜500円台まで掘られる可能性がある。値幅を空けた分割積み増しで平均コストを管理しながら、正式IR発表後に向けた余力を残すのが最も合理的な戦術。総投資額の上限を決め、その枠を守ること。
時間軸と撤退条件
3年以内に何らかの動きがなければ資金移動を検討すべき局面。ポジティブ・ネガティブ監視リストを定期チェックし、シナリオが壊れたと判断した時点で迅速に見直す規律が投資を機能させる。「待つだけ」ではなく「条件付きで持つ」姿勢が重要。
TOB最頻値
800〜900円
+54〜+73%
NAV中立
1,021円
完全解放時 +96%
下値フロア
BPS 492円
現株価比▲5.6%
時間軸ルール
3年
動きなければ資金移動検討
一文要約
広済堂HDは、社会問題化した火葬場事業の制度的決着に賭ける「時間 × 資産 × 制度」型投資。現在株価はNAVの約50%水準に放置されており、TOBがあれば800〜1,000円帯、制度決着が進めば1,000円超も説明可能。最悪シナリオでも資産価値は毀損しにくいアセット型案件。