応用地質株式会社|東証プライム 9755|2026年7月 総合投資レポート(株価2,746円ベース・国土強靱化20兆円/盛土規制法/優待新設を反映)
応用地質 9755 総合投資レポート
現在株価 2,746円(2026/7/8時点)|地質調査業 売上シェア断トツ首位(2位に約2倍差)|FY2025売上762.9億(+3.0%)・7期連続増配110円・総還元性向92.7%
国土強靱化実施中期計画20兆円(2026-2030始動)×八潮陥没→上下水道全国点検×盛土規制法の調査義務化|ネットキャッシュ236億(時価総額の約36%)のバランスシート・バリュー
現在株価
2,746円
時価総額664億(自己株控除後629億)
PBR
0.81倍
BPS3,404円・過去レンジ0.36〜0.97倍
予想配当利回り
4.01%
110円予想・7期連続増配
ネットキャッシュ
236億
時価総額の36%(現預金+投有証−有利子負債)
キャッシュ調整後PER
9〜10倍
見かけPER 実14.5倍/予16.0倍
NCAV(清算価値)
2,195円
流動資産−総負債。株価はNCAV+25%
B+
やや強気(押し目分割で買い)|インカム+資産バリューの長期保有向け|「負けにくく、待てば報われやすい」
ネットキャッシュ36%・NCAV2,195円・利回り4%という三重の下値の床の上に、国土強靱化20兆円(2026-2030)・八潮陥没起点の上下水道全国点検・盛土規制法による地質調査の法定需要化という制度的追い風が重なる。地質調査首位×資格・実績・信用が参入障壁の業界構造はご指摘の通り優位。一方でROE5〜6%・営業利益率5.4%の低収益が万年割安の根本原因であり、再評価の主導権はテーマではなく「総還元性向90%超の継続×SFP(9.6%保有)等の株主圧力×次期中計での資本政策」にある。テーマは着火材料、還元と資産が本体──という整理でB+。
最重要確認:次期中期経営計画(2027年2月頃想定)の資本政策 | 国際事業の損益 | 優待制度の継続性
01

業績と財務の全体像

FOUNDATION
売上高(FY2025実績)
762.9億
+3.0%・10年で1.5倍(CAGR4.5%)
営業利益 / 利益率
41.1億
−6.2%・利益率5.4%(ここが課題)
純利益(FY2025)
43.3億
+8%・EPS189.2円
自己資本比率
71.8%
有利子負債37.3億のみ・実質無借金
直近業績と会社計画
売上高営業利益経常利益純利益EPS
FY2024/12(概算逆算)740.8億43.8億53.2億40.1億約175円
FY2025/12(実績)762.9億41.1億49.5億43.3億189.2円
FY2026/12(会社予想)48.0億(−3.1%)約39億約171円
FY2026 1Q(1-3月)実績201.9億26.8億28.5億(−12.5%)進捗59.3%
※FY2024は決算短信の前期比(売上+2.97%・営利−6.21%・経常−6.83%・純利+8%)からの逆算概算。1Q進捗59.3%は通期経常計画48億に対する比率で、5年平均48.6%を上回り順調。12月決算のため公共案件の納期が集中する1-3月(1Q)に利益が偏重する季節性がある。
内部留保の積み上がり:利益剰余金と現預金の推移(億円)
本業の姿:国内の防災・インフラ事業と環境・エネルギー事業が堅調に成長し、利益の押し下げ要因は国際事業(米国計測機器等)の不振に集中している。国内公共ストック(主要顧客:国土交通省)が業績の土台で、景気変動より「国の予算」に連動するディフェンシブな売上構造
弱点も明記:営業利益率5.4%・ROE5〜6%は上場建設コンサル・調査業の中でも低位。公共調達の単価構造と人件費率の高さが原因で、「売上は伸びるが利益率が上がらない」ことが株価が万年0.8倍以下に据え置かれる根本理由。
公共予算・法規制国土強靱化20兆円
盛土規制法・下水道点検
災害復旧・国交省調達

法定・制度需要
応用地質(9755)地質調査 売上首位(2位の約2倍)
連結2,718名・全国拠点網
調査+解析+計測機器の一気通貫

調査・コンサル
機器・データ
国土インフラ道路・ダム・トンネル
上下水道・宅地・海洋
風力・地熱・資源探査
防災・インフラ事業(国内・柱)

地質調査・地盤解析・防災コンサル・路面下空洞調査・インフラ維持管理。国土強靱化予算と災害復旧needsに直結し、堅調に成長。主要顧客は国土交通省。

環境・エネルギー事業(国内・成長枠)

再エネ(風力・地熱)の適地調査、環境アセス、脱炭素関連。洋上風力の海底地盤調査など新エネルギー投資の上流工程を担う。堅調。

国際事業(利益の足かせ)

米国を中心とした計測機器・探査サービス。FY2025は不振で全体利益を押し下げ。資源市況・為替に振られやすく、ここの黒字安定化が利益率改善の鍵。

参入障壁の実態(ご指摘の論点):地質調査業は技術士・地質調査技士等の有資格者の頭数と官公庁入札実績・信用がモノを言う積み上げ型の業界で、新規参入は事実上困難。応用地質は売上で2位(基礎地盤コンサルタンツ・川崎地質等)に約2倍の差をつける断トツ首位であり、大型・広域・高度案件(全国一斉点検、海洋調査、災害緊急対応)ほど首位企業に集中しやすい。ただし業界全体は中小事業者も多く、「独占」ではなく「首位寡占」である点は割り引いて評価すべき。
OYO中期経営計画2026(2024-2026)の達成状況
目標項目中計目標FY2025実績判定
売上高780億円762.9億円ほぼ到達
営業利益率8%以上5.4%未達
ROE6%以上約5.6〜6.0%際どい
株主還元配当性向50%+・DOE2%+性向58%・DOE3.2%超過達成
還元方針は「連結配当性向50%以上かつDOE2%以上+機動的自社株買い」。M&A投資は手元資金でなく有利子負債を活用する方針に転換済みで、手元資金は成長投資と株主還元に重点配分すると明言している。
株主構成 ── 圧力と安定の同居

日本マスタートラスト11.2%、深田地質研究所(公益財団)11.1%SFP Value Realization Fund(Symphony系バリューアクティビスト)9.6%、創業家系ほか。財団・創業家の安定株主と、還元・資本効率を要求するファンドが同居し、総還元性向90〜110%という異例の還元水準はこの圧力の産物と読める。

次期中計(2027年2月頃想定)が最大の定期カタリスト

営業利益率8%目標が未達のまま現中計が今期で終了。次期中計での①利益率改善策の具体性、②政策保有・遊休資産の整理、③総還元性向の明文化──がPBR0.8倍→1倍の再評価トリガーになり得る。東証の資本コスト対応要請も追い風。

02

ネットキャッシュ・割安性の徹底分析

VALUATION
ネットキャッシュの分解(FY2025/12末・連結)
項目金額備考
現金及び預金233.6億前期比+24.6%
投資有価証券40.2億政策保有等・縮減中(前期54.5億)
有利子負債▲37.3億M&A用借入。実質無借金
ネットキャッシュ236.5億時価総額664億の35.6%(自己株控除後629億比37.6%)
キャッシュ調整後PER(=事業だけをいくらで買うか)
ベース事業価値利益調整後PER
FY2025実績純利益629億−236億=392億43.3億9.1倍
FY2026予想純利益392億約39億10.0倍
見かけの予想PER16.0倍は「金庫に眠る現金にもPERを払っている」状態。現金を差し引くと、公共ストック型の安定事業を9〜10倍で買える計算になる。
時価総額 vs 資産価値の階段(億円・株価2,746円時点)
Q1で短期借入が70億に増えているが:12月決算ゆえ1-3月に売掛(完成業務未収入金 約390億)が膨らむ季節的な運転資金であり、ネットキャッシュの実態は不変。年末には解消されるのが例年のパターン。
流動資産
799.6億
うち現預金233.6億・売掛債権等
総負債
297.1億
流動208.6億+固定88.5億
NCAV
502.5億
=2,195円/株(自己株控除後)
株価/NCAV
1.25倍
ネットネット(0.66倍)ではないが近接

清算価値の観点:流動資産だけで全負債を返して502億円(2,195円/株)が残る。株価2,746円との差551円が、固定資産(土地63.5億・建物純額59.4億ほか)と営業利益41億円を生む事業全体への値付けということになる。全国拠点網・約2,700名の技術者組織・計測機器事業込みでこの評価は、資産バリューとして依然厚い安全域。

バランスシートの質:資産の73.7%が流動資産で、売掛の相手は官公庁中心=貸倒リスク極小。のれん11.3億は純資産の1.4%で無視できる水準。土地は再評価差額金▲30億計上済み(保守的)。
BPS(1株純資産)の16年推移と現在株価(円)
PBR
0.81倍
2009年以降レンジ 0.36〜0.97倍
PER(実績/予想)
14.5 / 16.0倍
調整後は9.1 / 10.0倍
配当利回り
4.01%
110円予想
EV/営業利益
約9.6倍
(629−236)÷41.1億
同業・類似(建設コンサル系)との比較
企業株価/予想PER配当利回り特徴
応用地質(9755)2,746円 / 16.0倍
調整後9〜10倍
4.01%+優待地質調査首位。BS超重厚・還元90%超・PBR0.81
建設技術研究所(9621)2,734円 / 10.7倍約2.9%(78円)総合建設コンサル大手。増収増益・利益率高い
川崎地質・基礎地盤 等小型・低流動性地質専業2番手グループ。規模は応用地質の1/2以下
正直な比較:見かけPERでは建設コンサル大手(10倍前後)より割高に見える。応用地質の優位は①バランスシート(ネットキャッシュ36%)②還元(総還元性向90%超 vs 業界30〜40%)③利回り4%+優待にあり、「利益成長を買う」なら建技研、「資産と還元を買う」なら応用地質という住み分け。※比較値は2026年5〜7月時点の概算。売買前に最新開示で要確認。
なぜ万年割安か(原因の分解)
低ROE(5〜6%)の固定化
主因
現金を溜め込むBS構造
公共単価ゆえの低利益率
国際事業の赤字体質
地味業種・低認知
中小
是正のトリガー(起きれば0.81→1.0倍)
トリガー状況
総還元性向90%超の継続既に実行中 2024年109%・2025年93%
SFP(9.6%)等の株主圧力進行中 優待新設・DOE導入はその成果と読める
次期中計での資本政策強化2027年2月頃 最大の定期イベント
国際事業の黒字安定化要監視 利益率8%目標の成否を握る
東証のPBR1倍割れ是正要請構造的追い風 プライム上場ゆえ逃げられない
要点:この銘柄の割安是正は「テーマで買われる」より「還元と資本政策で強制的に締まっていく」タイプ。還元原資(ネットキャッシュ236億+年間営業CF)は十分すぎるほどあり、時間を味方につけられる。
03

配当・優待 ──「気長に待てるか」の検証

INCOME
1株配当と配当性向の推移(円・%)
配当の歩み
年間配当配当性向備考
2018/1228円91%ここが起点
2021/1246円41%期末に2度増額修正
2023/1258円35%DOE導入前夜
2024/1286円51%性向50%+ルール適用
2025/12110円58%期中に2度増額(90→100→110円)
2026/12(予)110円約64%利回り4.01%@2,746円
7年で配当は約4倍(28→110円)。2025年は1月の上方修正と同時に期末配当を+10円積み増すなど、「利益が出たら即還元」の行動が定着している。
還元ルール
性向50%+
DOE2%+
実績はDOE3.2%と大幅超過
総還元性向(配当+自社株買い)
92.7%
2024年109.5%・2025年92.7%
直近の自社株買い
15〜24億/年
2024年23.7億・2025年15.0億
DOE2%の意味=配当の「床」:BPS3,404円×2%=約68円が理論上の配当下限。仮に純利益が3割減っても、ルール上110円→68円までしか下げようがなく、68円でも利回り2.5%は確保される設計。減益局面の下値を配当が支える構造で、「気長に待つ」戦略と相性が良い。
資金の裏付け:ネットキャッシュ236億に対し年間配当総額は約25億。仮に無利益でも9年払い続けられる残高であり、配当の持続性は財務面からはほぼ盤石。リスクは資金でなく「方針変更」のみ。
2026年5月12日新設:毎年6月末・12月末(年2回)、200株以上の株主に「プレミアム優待倶楽部」ポイントを進呈。同一株主番号で3回連続(約1年)以上の継続保有で1.1倍。ポイントは約5,000種の商品やAmazonギフトカード等に交換可。
優待込み総合利回り(株価2,746円・配当110円で試算)
保有株数投資額年間配当優待pt/年(額面)総合利回り長期(1.1倍)
200株549,200円22,000円4,000pt4.73%4.81%
300株823,800円33,000円6,000pt4.73%4.81%
400株1,098,400円44,000円10,000pt4.92%5.01%
600株1,647,600円66,000円18,000pt5.10%5.21%
優待の割引評価も忘れずに:プレミアム優待倶楽部のポイントは商品交換レートの関係で実質価値が額面の5〜7割程度になりがちで、かつポイント型優待は改悪・廃止の前例が多いタイプ。総合利回りは「額面4.7〜5.2%・実質4.3〜4.8%」と幅を持って見ておくのが安全。優待を主目的にせず「配当4%のおまけ」と位置付けるのが正しい距離感。
最効率は400株か600株:200→300株はポイントが比例増のため利回り不変。400株(1万pt)と600株(1.8万pt)で段差が付く設計。単元100株では優待対象外な点に注意。
「待っている間」に積み上がるリターンの構造
源泉年率根拠
配当4.0%110円予想・DOE2%の床つき
優待(実質)0.4〜0.7%200株以上・割引評価後
BPS成長(内部留保)2〜3%還元後残余の積み上げ。過去16年CAGRは5.1%だが、還元強化後は逓減見込み
合計(株価不変でも)年6.5〜7.5%PBR切り上がりがあれば上乗せ
過去16年でBPSは1,530円→3,404円(年5.1%)へ一度も大きく毀損せず成長。リーマン・震災・コロナを跨いで純資産が減らなかった実績が「気長に待てる」ことの最大の証拠。
この銘柄の「待ち方」

①買い方:株価はPBRレンジ(0.36〜0.97倍)の上限寄り。一括ではなく2,746円・2,550円(PBR0.75)・2,380円(PBR0.70)の3段構えなど押し目分割が合理的。

②売り時の目安:PBR0.95〜1.0倍(3,230〜3,400円+BPS成長分)は過去レンジ上限=利益確定検討ゾーン。

③撤退条件:DOE・配当性向ルールの撤回、優待廃止と同時の減配、次期中計で資本政策が後退──のいずれかが出たらバリュートラップ化のシグナル。

04

テーマ・追い風の地図 ── 公的資金×法規制×巨大テーマ

TAILWIND MAP
2025年6月閣議決定・2026年度から始動:第1次国土強靱化実施中期計画(2026〜2030年度)は事業規模20兆円強。5年間の予算が法定計画として確保され、地質調査・地盤リスク評価は全事業の上流工程で必須となる。
実施中期計画の柱別事業規模(兆円・5年間)
2025/6
実施中期計画 閣議決定

326施策・うち重点114施策。資材・人件費高騰への価格転嫁も明記され、実質事業量が守られる設計。

2026年度〜
予算執行開始(今ここ)

防災インフラ整備5.8兆・ライフライン強靱化10.6兆の発注が本格化。調査・設計は工事に先行するため、調査会社への発注は初年度〜2年目に前倒しで来る

2030年度
計画期間終了→第2次へ

南海トラフ・首都直下への備えは終わらないテーマであり、第2次計画への継続が既定路線。防災は「一過性テーマ」ではなく恒久予算枠。

売上への効き方:国土強靱化5カ年加速化対策(前計画・15兆円)の期間中、同社売上は540億→763億へ拡大した実績がある。20兆円計画はその1.3倍規模であり、防災・インフラセグメントの年率3〜5%成長の蓋然性は高い。ただし利益率が公共単価に縛られる点は不変で、「売上の追い風>利益率の追い風」である点は冷静に。
2025/1
八潮市 道路陥没事故

下水道管(内径4.75m)の腐食破損で大規模陥没。上下水道の老朽化が全国的な社会問題に浮上。

2025/3〜
国交省・全国特別重点調査

大口径下水道管路の全国点検を要請。各自治体で路面下空洞調査(地中レーダー探査)の発注が相次ぐ。

2026〜30
ライフライン強靱化 10.6兆円

実施中期計画で最大の予算枠が上下水道等ライフラインに配分。点検→診断→更新設計の全工程で調査需要が発生する。

応用地質の当て嵌まり

路面下空洞調査・地中レーダー探査・管路診断は同社の主力技術ドメインそのもの。物理探査機器を内製する国内随一のプレーヤーであり、全国一斉・広域案件ほど「全国拠点網×機器×解析」を一気通貫で持つ首位企業に集中しやすい。

温度感:空洞調査市場自体は数百億円規模で、専業のジオ・サーチ等と分け合う市場。単体で業績を激変させる規模ではなく、「防災・インフラセグメントの成長率を底上げする確度の高い一因」として織り込むのが適切。
ご指摘の論点=盛土規制法(宅地造成及び特定盛土等規制法):熱海土石流(2021年)を受けて2023年5月施行。都道府県による規制区域の指定が2024年以降 全国で本格化(東京都は2024年7月末に運用開始)し、規制区域内では一定の面積・高さ・体積を超える盛土・切土・土石の堆積を伴う土地開発に許可=地盤・地質調査が事実上必須となった。
規制の中身(許可が必要となる主な規模基準)
行為規模基準(宅造区域の例)
盛土高さ1m超の崖を生じる盛土、または面積500㎡超 等
切土高さ2m超の崖を生じる切土 等
土石の堆積高さ2m超かつ面積300㎡超、または面積500㎡超 等
罰則無許可は懲役3年以下・罰金1,000万円以下、法人は最大3億円
許可申請には地形・地質等に応じた災害防止基準への適合証明(地盤調査・安定計算)が求められ、中間検査・完了検査も課される。土地の用途を問わず(宅地・農地・森林すべて)適用される点が旧宅造法との決定的な違い。
投資仮説としての評価 ── 概ね支持できる

①民間開発にも調査義務がかかるため、公共予算に依存しない恒常的な調査需要の「床」が法律で作られた。②罰則が重く「調査を省く」インセンティブが消滅。③発注者は訴訟リスク回避のため実績・信用のある大手に出しやすく、資格者数・全国網で首位の応用地質に構造的有利。ご指摘の「新規参入困難×シェアトップへの追い風」は妥当な読み。

ただし割引も:1件あたりの調査単価は数十万〜数百万円と小粒で、需要は全地連加盟の中小調査会社にも広く分散する。「業界全体の裾野を底上げする規制」であり、応用地質の売上を年+数%押し上げる程度の効き方と見るのが現実的。テーマの本丸はあくまで国土強靱化+上下水道。
レアアース・海洋資源(オプション価値)

南鳥島沖レアアース泥は2026年1〜2月に水深6,000mからの引き揚げに内閣府・JAMSTECが成功し、国策化が加速。深海の資源探査には音響探査・海底地質調査・物理探査が必須で、同社は海洋地質調査と探査機器を持つ数少ない民間プレーヤー。ただし現時点の調査予算規模は小さく、売上763億円を動かす段階にはない。「株価テーマとしての着火材料・無料のコールオプション」と位置付けるのが適切。

洋上風力・地熱・CCS(環境・エネルギー枠)

洋上風力の海底地盤調査、地熱の資源量評価、CCSの貯留層調査はいずれも地質調査の塊。脱炭素投資が続く限り環境・エネルギーセグメントの中期成長ドライバー。

テーマ総括 ── 期待値の重み付け
テーマ確度業績インパクト性質
国土強靱化20兆円法定5カ年予算・本丸
上下水道・空洞調査事故起点の政治的必然
盛土規制法(法定需要)小〜中恒常的な床・参入障壁強化
洋上風力・地熱・CCS政策次第で振れる
レアアース・海洋資源現状は極小無料オプション扱い
「リーディングカンパニーをこの水準で拾えるのはプレミアムでは」への回答:方向は正しい。ただし市場が0.81倍しか付けないのは「テーマが来ても公共単価ゆえ利益率が上がらない」ことを織り込んでいるから。テーマ×首位の価値が顕在化する経路は受注増→増配→DOE床の切り上がりであり、株価再評価はテーマ直撃型でなく還元経由でじわり効くと想定しておくと期待値を過大評価しない。
05

リスク分析 & バリュートラップ検証

RISK CHECK
リスクの棚卸し(影響度×蓋然性)
低ROE・低利益率の固定化
国際事業の赤字継続
人件費高騰・技術者不足
優待改悪・廃止
流動性の低さ(出来高小)
公共予算の縮小
低(5カ年法定)
財務毀損・減配(資金面)
極低
最大リスクの中身

①利益率:賃上げ・外注費上昇を公共単価に転嫁しきれないと、売上増でも利益横ばいの「忙しいだけ」シナリオに沈む。労務単価の改定(国交省設計業務委託等技術者単価は毎年上昇中)が転嫁の命綱。②株価位置:2,746円はPBRレンジ上限寄りで、過去平均(0.6倍前後)への回帰なら2,000円近辺まで▲25%の調整余地は理論上ある。だからこそ分割買い。

優待リスクの見方

プレミアム優待倶楽部型は導入企業の廃止事例が比較的多い。ただし本件は個人株主を増やしたい会社側の動機(アクティビスト対策・PBR対策)が明確で、導入初年度(2026年6月末が初回基準日)の短期廃止は考えにくい。廃止時の需給悪化は覚悟しつつ、投資判断の主柱には置かないこと。

バリュートラップ6条件チェック ── 「安いまま放置」で終わらないか
チェック項目判定根拠
① 還元する意思があるか合格総還元性向2024年109%・2025年93%。性向50%+・DOE2%+を明文化
② 還元する資金があるか合格ネットキャッシュ236億+年間営業CF。配当総額25億の9年分超
③ 外部から圧力があるか合格SFP 9.6%保有・東証PBR要請・プライム上場
④ 業績が構造的に伸びるか条件付き売上は国土強靱化で伸びる。利益率は転嫁次第で△
⑤ 定期カタリストがあるかあり(要確認)次期中計(2027年2月頃)・毎1月の業績/配当修正の常連
⑥ 待つ間の対価があるか合格配当4.0%+優待+BPS成長で年6.5〜7.5%
結論:6条件中4合格・2条件付き。典型的バリュートラップ(還元せず・圧力なし・カタリストなし)とは明確に異なる。トラップ化の警戒シグナルは「DOEルール撤回」「次期中計での還元後退」「国際事業の赤字放置」の3点で、いずれも観測可能なので撤退判断がしやすい。
06

3年シナリオ分析・最終評決

CONCLUSION
3年後(2029年央)想定株価とトータルリターン(配当3年分330円込み)
シナリオ前提(取得単価2,746円・BPSは還元後成長を年2〜3%で置く)
シナリオ確率想定株価トータル前提
ベア25%2,400円▲1%減益・優待廃止・PBR0.65倍へ回帰。配当がDOE床(70円前後)へ減配
ベース50%3,200円+29%利益横ばい・還元継続・PBR0.85倍。強靱化予算で売上は微増
ブル25%3,700円+48%利益率6.5%へ改善・次期中計で還元強化・PBR0.95倍(レンジ上限)
加重平均約3,125円+26%(年率約8%)ダウンサイドが浅くアップサイドが残る非対称形
B+
最終評決:やや強気(押し目分割で買い)── 大勝ちを狙う株ではなく、負けにくさに複利を乗せる株
ネットキャッシュ36%・NCAV2,195円・DOE床つき配当4%という三重の下値保証の上で、国土強靱化20兆円+上下水道全国点検+盛土規制法による調査の法定需要化という制度的追い風を受ける地質調査首位企業。バリュー面が手堅いという見立ては数字で裏付けられる。期待値の源泉はテーマの爆発力ではなく「還元90%超の継続×資産の厚み×時間」。年率8%前後の期待リターンに対しダウンサイドは配当込みでほぼ横ばいという非対称性が魅力。
買い方

2,746円から3段分割(〜2,550円・〜2,380円)。優待狙いなら200株、効率なら400株単位。1Q高進捗→1月の上方修正・増配が例年のリズム。

監視リスト

①次期中計(2027年2月頃)の資本政策 ②国際事業の四半期損益 ③労務単価の転嫁状況 ④優待制度の継続 ⑤SFPの保有動向。

撤退条件

DOE・配当性向ルールの撤回/中計での還元後退/PBR0.95倍超での利益確定。いずれも観測可能なイベントドリブンで判断できる。

免責事項:本レポートは公開情報(決算短信・有価証券報告書・IRBANK・政府資料・報道等、2026年7月8日時点)に基づく分析・参考資料であり、特定銘柄の売買を推奨する投資助言・投資勧誘ではありません。FY2024数値の一部は前期比からの逆算概算、同業比較は時点の異なる概算値を含みます。投資判断はご自身の責任で、最新の開示資料をご確認の上で行ってください。