Investment Research · 2026.08.06 · Ver.2.0 · 27/3期1Q決算(7/31)反映 · Ver.1.0比較版

菱友システムズ (4685)
1Q急落後の再検証レポート

8/3に−9.9%の急落・年初来安値2,467円をつけた後、2,644円まで戻し / 1Q営業益−16.3%・純利益−24.8%
結論:事業の堀は無傷。だが「保守的予想の上振れ」というVer.1.0の中核前提は崩れた。指値分割で買い増し可、ただし10/31の2Q決算が本当の判定日。

期待株価 3,566円 · +35%
配当込み期待リターン +47%(年率+13.6%)
Ver.1.0(+40%)より期待値は改善
─ 株価の下落幅が業績悪化幅を上回ったため
現在株価 (8/6)
2,644円
時価総額 約337億円(Ver.1.0時 2,896円)
PER(会社予想)
9.4倍
EPS 282.0円(27/3期会予)
PBR
1.52倍
BPS 1,742.54円(26/3期実績)
配当利回り
3.78%
DPS 100円(27/3期・増配予定)
1Q経常 進捗率
13.8%
5年平均15.3% / 前年16.1%を下回る
年初来高値からの下落
−34.5%
4,035円(26/2/2)→ 2,644円
01

Ver.1.0(26年6月)→ Ver.2.0(26年8月)の差分

投資テーゼの棚卸し
結論を先に:今回の急落は「防衛IT準独占という堀(moat)の毀損」ではなく、「利益モメンタムの反転」に対する反応です。ただし、Ver.1.0が抱えていた内部矛盾が1Qで白日の下に晒された点は軽視できません。Ver.1.0はリスク欄で「会社自身が27/3期を横ばい〜減益と見通す」と正しく書きながら、KPI欄と結論では「保守的な会社予想の上振れパターンが定着しており上方修正が期待される」という真逆の前提でシナリオを組んでいました。1Q進捗13.8%(5年平均15.3%)は、この上振れ前提を否定する方向で矛盾を解消しました。
決算前後の株価の軌跡(7/31 大引け後16:10に決算発表)
7/29
2,848
±0.0%
7/30
2,883
+1.2%
7/31 決算
2,881
−0.1%
8/3 急落
2,597
−9.9%
8/3 安値
2,467
年初来安値
8/4
2,543
−2.1%
8/5
2,632
+3.5%
8/6
2,644
+0.5%

8/3の出来高は203,400株と平常時(1.5〜4万株)の5〜10倍。安値2,467円は52週安値・年初来安値を同時更新。翌々日には+3.5%と反発しており、投げ売りの一巡(セリングクライマックス)の形を示唆。ただし出来高の少ない銘柄では戻り売りで再度崩れる展開も珍しくなく、断定は禁物。
参考:52週高値 4,415円(25/10/31)、年初来高値 4,035円(26/2/2)。ピークからは−40%/−34.5%。

主要指標のVer.1.0 → Ver.2.0 差分
指標Ver.1.0 (26/6)Ver.2.0 (26/8)コメント
株価2,896円2,644円−8.7%。ただし8/3安値2,467円まで見れば−14.8%
時価総額約370億円約337億円発行済 約1,275万株ベース
27/3期 会社予想EPS〜290円(推定)282.0円Ver.1.0は会社予想を約3%高く見積もっていた
PER(会予)10.0倍9.4倍割安度は拡大
PBR1.7倍1.52倍BPS実績1,742.54円で再計算(Ver.1.0は概算1,700円)
DPS(26/3期実績)92.5円97.5円Ver.1.0の誤り。実績は97.5円(5円増額)
DPS(27/3期予想)97.5円?100円減益予想下でも増配。経営の自信・株主還元姿勢を示す
配当利回り3.2%3.78%株価下落+増配のダブルで大幅改善
ROE(26/3期実績)「20%超」18.9%Ver.1.0は過大表記。27/3期会予ベースでは16.2%へ低下
下値サポート2,820円(26/5/28安値)失効8/3に2,467円まで下抜け。新サポートは2,467円
3年期待株価(加重)3,818円 / +32%3,566円 / +35%絶対値は下げたが、株価も下げたため期待リターンは改善
配当込み期待リターン+40%(年率12%)+47%(年率13.6%)利回り改善が効いている
総合判定◎ 買い検討○ 条件付き買い増し「◎」から一段格下げ。理由は次パネル以降
Ver.1.0で修正すべきだった数値:①26/3期DPSは92.5円ではなく97.5円、②ROEは「20%超」ではなく18.9%、③BPSは約1,700円ではなく1,742.54円、④27/3期の会社予想EPSは290円ではなく282.0円。いずれも投資判断を覆す規模ではありませんが、Ver.1.0が全体に0.5〜1段階ずつ楽観方向に丸められていたことは記録に残す価値があります。強気の資料を書くと、個々の丸め誤差が同じ方向に積み上がりやすい典型例です。
02

27/3期 第1四半期決算の解剖

減収 −3.0% / 営業益 −16.3%
売上高
98.5億円
前年同期比 −3.0%
営業利益
7.35億円
前年同期比 −16.3%
経常利益
7.81億円
前年同期比 −13.5%
純利益
4.67億円
前年同期比 −24.8%
四半期業績の推移(3ヵ月ベース・百万円)
四半期売上高営業益経常益純利益営業利益率
25.04-06(前年1Q)10,1558789036218.6%
25.07-09(2Q)9,8611,3271,35997013.5%
25.10-12(3Q)10,2831,5721,6111,11515.3%
26.01-03(4Q)12,9301,7111,7461,20413.2%
26.04-06(今回1Q)9,8547357814677.5%

季節性の確認:1Qは構造的に最も利益率が低い四半期です(24年1Q 8.0%、25年1Q 8.6%)。1Qの数字だけを年率換算するのは誤りです。ただし今回の7.5%は過去2年の1Qをさらに1.1〜0.5pt下回る水準で、季節性だけでは説明がつきません。

減益の3つの要因分解
① 商材販売案件の減少(減収要因):会社説明によれば売上減の主因は「商材販売案件の減少」。これはIBM特約店としてのハード・ソフト転売であり、低採算のフロービジネス。減ること自体は利益インパクトが小さいはずで、実際に減収は−3.0%にとどまる。
② 販管費の増加(減益の主因):会社は27/3期通期でAI投資・セキュリティ強化・人件費増を織り込み済みと説明。1Qではこのコストが先行し、売上総利益の伸びが追いつかず営業利益率が8.6%→7.5%へ1.1pt悪化
③ 税率の急上昇(純利益の落ち込み増幅):経常−13.5%に対し純利益−24.8%。実効税率が31.2% → 40.2%と約9pt上昇したことが差の正体。この1点は要検証(下記の警告参照)。
通期予想に対する進捗
今回1Q(経常781/通期5,650)13.8%
過去5年平均の1Q進捗15.3%
前年1Q(903/5,619)16.1%

「5年平均とほぼ同水準」とする報道もありますが、1.5ptの下振れは無視できません。1Q実績781百万円を過去5年平均の進捗率15.3%で割り戻すと通期経常は約5,105百万円となり、会社予想5,650百万円を約545百万円(−9.6%)下回る計算になります。それでも会社は通期予想を据え置いた── つまり2Q以降で例年以上の巻き返しを前提にしています。ここが達成されるかどうかが最大の論点です。

⚑ 検証が必要な論点 ─ 税率40.2%の異常値:日本の法定実効税率は約30〜31%。今回の40.2%は明らかに高い水準です。考えられる説明は、(a) 2026年4月開始事業年度から適用される防衛特別法人税(法人税額に4%上乗せ)の影響、(b) 四半期特有の「見積実効税率法」による期ズレ、(c) 一過性の税務調整項目。(a)だけでは1〜1.5pt程度しか説明できず、大部分は(b)または(c)である公算が高いと考えます。つまり純利益−24.8%という見出しの数字は実態より悪く見えている可能性が高く、経常−13.5%のほうが実力に近いと読むべきです。決算短信の「税金費用の計算」注記で確認する価値があります。ここは本レポートで確定できなかった唯一の重要論点です。
会社予想は据え置き(27/3期・26年4月28日発表から変更なし):売上450億円(+4.1%)/営業利益54.5億円(−0.7%)/経常利益56.5億円(+0.6%)/純利益36.0億円(−7.9%)/EPS 282.0円/DPS 100円(増配)減益予想でありながら増配を維持している点は、会社側が今期の減益を「投資フェーズの一時的なもの」と位置づけている強いシグナルと読めます。ただし経営者の自己申告であり、額面通りには受け取れません。
03

Ver.1.0の6カタリスト ─ 生死判定

生存4 / 要修正1 / 破綻1
Catalyst 01 · 判定:生存
🛡️
防衛・宇宙ITの
準独占的地位
無傷
1Qの減収要因は「商材販売」=周辺の転売事業
減収の主因がIBM商材の転売案件であり、三菱重工向けのシステム開発・設計支援そのものが減ったという開示はない。堀(moat)に毀損なし。
ただし副作用として「売上の一定割合が低採算の商材転売に依存している」という事業構成の脆さが可視化された。Ver.1.0はここを議論していなかった。
堀は健在売上構成の脆さ露呈
Catalyst 02 · 判定:要修正
📉
「保守的予想は
毎年上振れる」前提
破綻
1Q進捗13.8% < 5年平均15.3%
Ver.1.0の中核ロジックの一つが「会社予想は保守的で毎年上振れる(26/3期は会予34億→実績39.1億)」だった。しかし27/3期は期初から減益予想で、1Q進捗も平均以下。上方修正どころか下方修正リスク側に振れている。これが今回の最大の毀損点
上振れ前提の消滅下方修正リスク
Catalyst 03 · 判定:生存(進展なし)
🎯
流通株式比率問題と
TOB・非上場化圧力
30〜35%
3年内TOB確率(当社推定・Ver.1.0の35〜40%から微減)
6月に「支配株主等に関する事項について」を開示したものの、TOBを示唆する動きは確認できず。株価下落で三菱重工の取得コストは337億→買収想定440億程度に低下し、動く経済合理性はむしろ上がった。ただしVer.1.0時点から2ヵ月経っても何も起きておらず、時間軸は依然として不明。確率をやや引き下げる。
取得コスト低下時間軸不明のまま
Catalyst 04 · 判定:要注意
💴
「手元資金102億円」の
実態は33億円
33億円
CF計算書上の現金及び現金同等物残高(26/3期末)
Ver.1.0は「現金21.7億+預け金80.4億=102億円、時価総額の28%」と主張したが、キャッシュフロー計算書上の現金等残高は3,305百万円=33億円(現金比率10.25%)。差の約70億円は親会社等への預け金で、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)預け金であれば実質現金だが、保証金的性格なら自由に使えない。「株価の28%がキャッシュ」という下値論拠は根拠として弱い。
論拠を格下げ自己資本比率68.9%・無借金は事実
Catalyst 05 · 判定:生存(時間軸は長い)
⚔️
防衛費拡大の
直撃追い風
継続
構造的な需要環境に変化なし
防衛予算の拡大トレンド自体に変化はない。ただし1Qで実際に減益になっている以上、「防衛特需 → 即座に利益」というリニアなストーリーは1年単位ではワークしていない。受注→開発→計上のリードタイムは数年単位であり、この追い風は3〜5年スパンで効いてくるものと再定義すべき。Ver.1.0はここを短期カタリストのように扱っていた。
構造は健在短期材料ではない
Catalyst 06 · 判定:否定
🌡️
「賃上げは単価転嫁で
相殺できる」
反証
営業利益率 8.6% → 7.5%(−1.1pt)
Ver.1.0は「IT人月単価のインフレはそのまま売上増に直結」「賃上げコストも単価転嫁でほぼ相殺」と主張した。しかし1Qは販管費増で明確にマージンが圧縮されている。人月単価の引き上げには顧客(=実質的に三菱重工)との交渉が必要で、親子関係にある以上、転嫁力はむしろ制約されると考えるべき。Ver.1.0で最も検証が甘かった主張。
前提が崩れた親子関係=価格交渉力の制約
詳細

深掘り(クリックで展開)

A
Ver.1.0が抱えていた内部矛盾 ─ なぜ「◎」だったのか
リスク欄では正しく警告し、結論では逆の前提を使っていた
構造的な問題
強気バイアスの典型

Ver.1.0のリスクパネルには、こう書かれていました:

「利益成長鈍化 ─ 会社自身が2027/3期を『横ばい〜減益』と見通す。上方修正のパターン継続を過信するのは禁物

ところが同じレポートの業績パネルには、こう書かれていました:

「保守的な会社予想の上振れパターンが定着しており、2027/3期も上方修正が期待される

同一資料内で完全に矛盾しています。そしてシナリオ計算では後者(楽観)を採用し、Base CaseにEPS 310円(=会社予想282円を+10%上回る)を置いていました。1Qの結果は、この矛盾を悲観方向で解消しました。

教訓として:Ver.2.0のシナリオでは、Base CaseのEPSを会社予想から乖離させる場合、その根拠を明示するルールを課しています(後述のシナリオパネル参照)。

B
「商材販売」依存 ─ Ver.1.0が見落としていた事業構成リスク
IBM特約店機能は「堀」ではなく「振れ幅の源泉」だった
新規論点
売上の質を再評価
Ver.1.0の記述:「IBM特約店機能:三菱重工グループへのIBMハードウェア・ソフトウェア供給も担う。インフラ込みのワンストップ体制が乗り換えをさらに困難にしている」── つまり堀の一部としてポジティブに扱っていた
1Qで判明した実態:この商材販売は案件の有無で四半期売上が数億円単位で振れる。今回はこれが減って減収の主因となった。粗利率が低いため利益インパクトは限定的だが、売上高の見た目のボラティリティを大きくし、決算のたびにサプライズ要因になる
再評価:商材販売は「堀」ではなく「低採算・高ボラティリティの付随事業」と位置づけるのが正確。逆に言えば、これを除いたコア事業(SI・設計支援)のマージンと成長率こそが本当に見るべき数字。会社がセグメント別開示を出していれば確認したいところです。
投資判断への含意:商材要因の減収は本質的な悪材料ではない。本当の悪材料は販管費(人件費・AI投資)によるマージン圧縮のほう。市場が9.9%売ったのは、この2つを区別せずに「減収減益」というヘッドラインに反応した面がある。ここに歪みがある可能性はある。
C
「減益予想下での増配」をどう読むか
DPS 97.5円 → 100円。配当性向は31.8% → 35.5%へ上昇
ポジティブ寄り
ただし過信は禁物
EPSDPS配当性向利回り(2,644円)
2024/3期189.9円60円31.6%2.27%
2025/3期265.6円85円32.0%3.21%
2026/3期(実績)306.7円97.5円31.8%3.69%
2027/3期(会予)282.0円100円35.5%3.78%

読み方(ポジティブ):配当性向が約32%で安定していた会社が、減益期にあえて性向を35.5%まで上げてまで増配を継続している。これは「今期の減益は投資による一時的なもので、来期以降は戻る」という経営の内部見通しを反映している可能性が高い。連続増配記録を守る意思も明確。

読み方(慎重):一方で、性向を上げて増配を続けるのは利益成長が止まった会社の典型的な行動でもある。性向が40%、50%と切り上がっていくなら、それは成長の終わりのサイン。27/3期の35.5%は許容範囲だが、28/3期にさらに切り上がるなら警戒すべき。

実務的な意味:いずれにせよ、保有継続する投資家にとって年3.78%の配当を受け取りながらカタリストを待てる構造は維持されました。これがVer.1.0(3.2%)より改善している点は、買い増しの根拠として素直に評価できます。

04

バリュエーション再計算(2,644円ベース)

PER 9.4倍・PBR 1.52倍・利回り3.78%
PER(会社予想)
9.4倍
EPS 282.0円
PER(前期実績)
8.6倍
EPS 306.7円
PBR
1.52倍
BPS 1,742.54円
配当利回り
3.78%
DPS 100円
株式益回り
10.7%
PERの逆数
PER水準訂正シミュレーション(EPS 282円ベース)
現在(PER 9.4倍)2,644円
PER 11倍3,102円 (+17%)
PER 12倍3,384円 (+28%)
PER 15倍(業種平均)4,230円 (+60%)
PER 20倍(NRI並・過剰期待)5,640円 (+113%)

重要な留意:減益局面の企業にPER15倍を適用するのは無理があります。市場がPERを切り下げているのは「割安放置」ではなく「成長が止まった企業への正当な再評価」の可能性を常に考えるべきです。Ver.2.0のBase CaseではPER 11倍を採用しています。

下値めどの再計算(Ver.1.0のサポートは失効済み)
水準株価根拠
直近安値(新サポート)2,467円26/8/3 の年初来安値・大商い
現実的な悲観2,265円PBR 1.3倍/PER 8.0倍(2,256円)の交点
下方修正が出た場合2,000円前後EPS 250円 × PER 8倍
歴史的悲観1,743円PBR 1.0倍(純資産価値)

Ver.1.0は「2,820円が強力なサポート」としていましたが、8/3にあっさり2,467円まで下抜けました。出来高の薄い銘柄でテクニカルなサポートを下値論拠にするのは危険という実例です。Ver.2.0では下値をPBR・PERというファンダメンタルズ基準に一本化しています。

同業比較の再検証 ─ 「PER10倍は不当に安い」は今も成り立つか
比較対象PER直近の利益トレンド市場区分評価
菱友システムズ(4685)9.4倍減益転換(27/3期 −7.9%)スタンダード割安だが理由あり
野村総合研究所(NRI)25倍前後継続増益プライム成長プレミアム
TISインテックグループ18倍前後継続増益プライム成長プレミアム
SCSK20倍前後継続増益プライム成長プレミアム

Ver.1.0との違い:Ver.1.0は「収益性指標はNRIと同等以上なのにPERは2.5倍の開き = 異常状態」と結論づけました。しかし減益転換した企業と継続増益企業のPERを直接比べるのは不適切です。ディスカウントの要因は Ver.1.0が挙げた3つ(①スタンダード市場、②親子上場、③低流動性)に加え、④利益成長の停止という第4の要因が加わりました。①〜③は構造要因でTOB等でしか解消しませんが、④は業績次第で自力解消が可能です。逆に言えば、④が解消しない限り①〜③だけでは水準訂正は起きないと考えるべきです。※同業他社のPERは概算値であり、投資判断の際は最新値をご確認ください。

バリュエーション面の結論:Ver.1.0時点(PER 10.0倍・PBR 1.7倍・利回り3.2%)と比較して、すべての指標が投資家に有利な方向に動きました(PER 9.4倍・PBR 1.52倍・利回り3.78%)。一方で分母となる利益の質は劣化しています。「安くなった度合い(約−9%)」と「業績見通しの悪化度合い(会予EPS 290円想定→282円実績、約−3%)」を比べると、株価の下落幅のほうが大きい── これがVer.2.0で期待リターンが改善する理由です。ただしこの計算は「27/3期の会社予想が達成される」ことが前提であり、下方修正が出れば前提ごと崩れます。
05

3年保有シナリオ再構築(2029年3月末)

加重平均 3,566円(+35%)
Ver.2.0でのシナリオ設計ルール:①Base CaseのEPSは会社予想(282円)を起点とし、乖離させる場合は根拠を明記する。②適用PERは「減益局面の企業」として保守的に置く。③キャッシュ上乗せはVer.1.0より縮小(預け金の性格が確認できないため)。④Bear確率をVer.1.0の30%→35%へ引き上げ、Bull確率を25%→20%へ引き下げ。
Bear Case
35%
投資フェーズが長期化・マージン低迷が定着
EPS 275円(29/3期)
適用PER 8.5倍 → 2,340円
キャッシュ上乗せ +150円
目標株価 2,490円
3年累積配当 +315円
配当込み 2,805円(+6%)
Base Case
45%
27/3期で投資一巡、28/3期以降マージン回復
EPS 320円(29/3期)
適用PER 11倍 → 3,520円
キャッシュ上乗せ +200円
目標株価 3,720円
3年累積配当 +320円
配当込み 4,040円(+53%)
Bull Case
20%
防衛IT再評価 or 三菱重工によるTOB成立
EPS 360円 × PER 14倍
または TOB(プレミアム30〜45%)
目標株価 5,100円
3年累積配当 +300円
配当込み 5,400円(+104%)
確率加重平均期待値 ── Ver.2.0 再計算
加重平均株価
3,566円
+34.9%(株価のみ)
配当込み期待値
3,880円
+46.7%(年率 +13.6%)
Bear下値(配当込)
2,805円
元本+6% ─ 実質的に横ばい
Ver.1.0からの変化
+40% → +47%
期待値は改善(株価下落のため)
Ver.1.0 vs Ver.2.0 シナリオ比較
項目Ver.1.0Ver.2.0
起点株価2,896円2,644円
Bear 確率/株価30% / 2,690円35% / 2,490円
Base 確率/株価45% / 3,920円45% / 3,720円
Bull 確率/株価25% / 5,620円20% / 5,100円
Base の適用PER12倍11倍
Base の想定EPS310円320円
配当込み期待リターン+40%+47%

Base EPSを310→320円に引き上げているのは矛盾に見えますが、対象年度が1年後ろにずれているためです(Ver.1.0は28/3期、Ver.2.0は29/3期)。Ver.2.0のBase前提は27/3期会予282円 → 29/3期320円=2年で年率+6.5%。これは「27/3期で投資が一巡し、28/3期以降は従来の増益基調に戻る」という仮定を置いたものです。この仮定こそがBase Caseの生命線であり、2Q・3Qで検証していく必要があります。適用PERはVer.1.0の12倍から11倍へ引き下げました。

この期待値をどこまで信じるか ─ 3つの留保
留保①:Bull ケースの20%は主観的。TOB確率に客観的な根拠はありません。流通株式比率が基準未達である証拠を本レポートでは確認できておらず、Ver.1.0の「推定12〜34%」という幅の広さ自体が、この論点の不確実性を物語っています。TOB期待を除いた期待リターンは +30%程度まで低下します。
留保②:Base の「28/3期以降マージン回復」は仮定にすぎない。AI投資・セキュリティ強化が1年で終わる保証はなく、むしろ恒常的なコストになる可能性もあります。この場合Bearに近づきます。
留保③:シナリオ確率は「もっともらしく見える数字」にすぎない。加重平均が+47%だからといって、実際に+47%になる確率は極めて低い。意思決定に使うべきは平均値ではなく分布の形── すなわち「Bearでもほぼ元本維持、Bullで2倍」という非対称性のほうです。
06

買い増し判断と撤退基準

保有中・買い増し検討中の前提
ストーリーは崩れたか
部分的に
堀(防衛IT準独占)は無傷
「上振れ前提」と「転嫁力」が崩壊
買い増しの是非
条件付き可
一括ではなく分割
2Q決算(10/31)が判定日
総合判定の変化
◎ → ○
「明確な買い」から
「検証しながら積む」へ
まず、ナンピンの罠について一言:すでに保有している状況での買い増しは、「安くなったから」ではなく「当初の想定より期待リターンが高くなったから」という理由でのみ正当化されます。本レポートの計算では期待リターンは+40%→+47%へ改善しており、この条件は形式的には満たされます。ただしそれは「27/3期の会社予想が達成される」という前提の上に成り立っていることを忘れないでください。1Q進捗13.8%は、その前提に黄信号を灯しています。
また、平均取得単価が下がること自体には何の価値もありません。判断すべきは「今、新規に2,644円で買うか」であり、既存ポジションの含み損は無関係です。
分割買い増しプラン(一案)
タイミング価格めど配分実行条件
第1弾:現水準2,600〜2,700円追加予定額の 1/3PER 9.4倍・利回り3.78%は、堀が無傷である限り妥当な水準。8/3の投げ売りは一巡した形。
第2弾:2Q決算後10/31以降1/3上期経常が21.5億円以上(通期進捗38%以上)で着地し、通期予想が据え置かれた場合のみ実行。下回れば見送り。
第3弾:押し目2,400円以下1/3下方修正を伴わない需給要因の下落であれば実行。下方修正が原因なら実行せず、撤退基準の判定へ。

なぜ分割か:1四半期の数字だけでは「一時的な投資フェーズ」か「構造的なマージン低下」かを判別できないためです。判別材料が出てくるのは2026年10月31日の2Q決算。それまでは情報が足りない状態でポジションを大きく傾けるべきではありません。一方で「完全に確認できてから買う」と、確認できた時点で株価は戻っているのが常です。この不確実性を分割で引き受けるのが現実的な折衷案です。
なお、日次出来高が1.5〜7万株程度と薄いため、まとまった株数を買う場合は指値・複数日に分けての執行が必須です。成行での大口注文は自分で株価を押し上げます。

📅 2026年10月31日・2Q決算で確認すべき5項目
1
上期経常利益が21.5億円を超えたか通期会予56.5億円に対する進捗38%が最低ライン。前年上期は22.6億円(進捗40.3%)。これを大きく下回れば通期下方修正の公算が高い。
最重要
2
営業利益率が2Q単独で12%以上に戻ったか前年2Q単独は13.5%。1Qの7.5%が季節性なら2Qで大きく回復するはず。回復しなければ「構造的マージン低下」の証拠。
最重要
3
通期予想が据え置かれたか、下方修正されたか下方修正が出れば投資テーゼの前提が崩れる。撤退基準①に直結。
4
実効税率が正常化(30%前後)したか1Qの40.2%が期ズレなら2Qで正常化する。しなければ恒常的な税負担増としてEPS前提を下げる必要がある。
5
商材販売以外(SI・設計支援)の売上動向コア事業が伸びているなら1Qの減収は無視してよい。コアが減っているなら三菱重工の発注そのものが減っており、堀の毀損を疑うべき。
🚪 撤退基準 ─ 「何が起きたら売るか」を事前に定義する(Ver.1.0に欠けていた項目)
① 通期業績予想の下方修正 即時見直し 会社予想の達成が本レポートの全計算の前提。崩れたら期待値はゼロベースで再計算が必要。
② 通期営業利益率が10%を下回る 26/3期12.7% → 27/3期会予12.1%。10%割れは「高収益SIer」というプレミアムの根拠が消える水準。
③ 商材以外(コアSI)の売上減少 三菱重工の発注そのものの減少を意味する。これが起きたら堀の毀損であり、投資テーゼは完全に崩壊。
④ 減配または増配の停止 10年以上の連続増配が途切れることは、経営が自ら「回復の目処が立たない」と認めたに等しい。
⑤ 上場維持基準への「適合」表明 中(逆説的) 流通株式比率が基準を満たしたと会社が表明した場合、TOB圧力の論拠が消滅。Bull Caseの20%が剥落し、期待リターンは+30%程度へ低下する。
⑥ 三菱重工の防衛部門の失速 低(現状) 売上の大半を1社に依存する構造上の最大リスク。現時点で兆候はないが、三菱重工の決算は毎回チェックすべき。

なぜ事前に定義するのか:含み損を抱えた状態では、どんな悪材料も「もう織り込み済み」「一時的」と解釈したくなります。判断が歪む前に基準を紙に書いておくことが、唯一の対策です。Ver.1.0にはリスク要因の一覧はありましたが、「何が起きたら降りるか」という行動基準がありませんでした

最終判断 ── ○ 条件付き買い増し可(分割・段階実行)
投資妙味はあるか → ある。ただしVer.1.0より薄い
PER 9.4倍・PBR 1.52倍・配当利回り3.78%は、防衛機密ITで代替不可能な地位を持ち、無借金・自己資本比率68.9%の企業として依然として安い。株価の下落幅(−8.7%)が業績見通しの悪化幅(−3%)を上回ったため、期待リターンは+40%→+47%へむしろ改善しました。買う根拠は成立しています。
ストーリーは崩れたか → 一部が明確に崩れた
崩れたのは2つ。①「保守的な会社予想は毎年上振れる」という中核前提(1Q進捗13.8%が否定)、②「インフレ・賃上げは単価転嫁で相殺できる」というマージン防衛力の想定(営業利益率−1.1pt が反証)。一方で堀そのもの(防衛・宇宙ITの準独占)は無傷で、減収の主因は低採算の商材転売でした。
買い増すべきか → 3分割で、10/31を判定日に
現水準で1/3、2Q決算(10/31)で上期経常21.5億円以上を確認できたら1/3、2,400円以下の押し目で1/3。一括投入は避けてください。1四半期の数字だけでは「投資フェーズの一時的コスト」か「構造的なマージン低下」かを判別できず、判別材料が出るのは10月末だからです。
最も注意すべきこと
本レポートの期待値計算はすべて「27/3期の会社予想が達成される」前提の上にあります。1Q進捗13.8%(5年平均15.3%)は、その前提に黄信号を灯しています。下方修正が出た瞬間、この資料の数字はすべて無効になります。そのときは平均取得単価や含み損を忘れて、ゼロから計算し直してください。
加重平均期待株価
3,566円
+34.9%(配当除く)
配当込み期待
3,880円
+46.7%(年率+13.6%)
次の判定日
10/31
2Q決算・上期経常21.5億円が閾値
撤退トリガー
下方修正
出たら全計算を再構築