Investment Research · 6960 東証スタンダード · 2026.10.07 · 株価 11,820円(10/7終値)

フクダ電子 (6960)
統合投資分析レポート

心電計と在宅医療のレンタルの会社。5期続けて営業利益率18〜19%、自己資本比率84%
元会長の経費不適切利用と辞任、第三者委員会、ガバナンス改革。値札と需給を一次資料で数えた

B++幅・小/確度11点
PBR1.66倍・PER18.0倍・利回り1.95%
上値10,651円(▲9.9%)/下値3,184円(▲73%)。
PBRは直近5年の高値を上回る。
TOPIXの買い需要は売買代金の17〜43日分。
株価(10/7終値)
11,820円
8月末から▲3.3%
時価総額
4,462億円
売買代金は1日7.5億円
PBR
1.66倍
5年レンジ0.64〜1.50倍
PER/利回り
18.0倍/1.95%
配当230円(予想)
ネットキャッシュ
657億円
時価総額の21%
TOPIXの買い需要
126〜324億円
売買代金の17〜43日分(概算)
01

結論 ── 安定して稼ぐ会社。値札は過去のレンジの外

B++
結論 01 · 事業
🫀
売上の7割超がレンタル・消耗品・保守
売上1,397億円のうち、治療装置(在宅医療向けレンタルを含む)が637億円、消耗品・保守が398億円。営業利益は5期続けて240〜266億円、利益率は18〜19%で、純利益も162〜188億円の間にある。今期の会社予想は営業利益255億円(▲4.2%)。
結論 02 · 値札
🏷️
PBR1.66倍は直近5年の高値1.50倍より上
1年前の株価は6,560円(52週安値)で、そこから1.8倍になった。医療機器10社の中央値1.92倍よりは低いが、自社の過去のレンジ(0.64〜1.50倍)は超えている。規則どおりの上値は10,651円(▲9.9%)で、いまの株価より下になる。
結論 03 · ガバナンス
⚖️
元会長が辞任。第三者委員会の報告はまだ
2026年5月、代表取締役会長による経費の不適切利用(総額約1.54億円)が開示され、6月16日に辞任した。6月25日に第三者委員会を設置、26日にガバナンス改革プロジェクトを発足。調査の結論は本資料の時点で公表されていない。元会長は20.60%を持つ筆頭株主である。
📌 当商会の採点はB++(幅・小/確度11点)。稼ぐ力と財務は5社の中でいちばん安定している。ただ株価は1年で1.8倍になり、PBRは自社の過去5年の上限を超えた。規則で数える上値がないので、ランクは伸びない。同じ確度のまま幅が「中」になるのは6,170円、「大」になるのは5,050円。
株価は2026年10月7日の終値11,820円(株探の確定値)。TOPIXへの新規採用は10月7日の取引終了後に公表された。貸借対照表は2026年6月末。株数は自己株式10,729,506株(発行済みの28.4%)を除いた27,017,794株。
02

値札と貸借対照表

PBR1.66倍
項目数字中身
株価(2026年10月7日終値)11,820円52週の高値12,490円・安値6,560円
時価総額4,462億円自己株式を除くと3,194億円(2,702万株)
PBR1.66倍1株純資産7,101円。直近5年のレンジは0.64〜1.50倍
PER(会社予想)18.0倍1株利益655.1円
配当利回り1.95%年230円の予想。配当性向は約35%
現預金・有価証券 − 借入金657億円時価総額(自己株式を除く)の21%。現預金等675億円、借入金18億円
投資有価証券271億円取引先・金融機関を中心とする株式。3月末の220億円から6月末に271億円へ増えた。時価で計上済み
清原式ネットキャッシュ比率0.31倍(流動資産1,173億円+投資有価証券×70%−負債374億円)÷時価総額
📌 現預金675億円、借入金17.5億円で、ネットキャッシュは657億円(自己株式を除く時価総額の21%)。株探などに出る時価総額4,462億円は、会社が持つ自己株式(発行済みの28%)を含んだ数字で、それを除くと3,194億円になる。この自己株式を消却するかどうかは、開示されていない。
03

稼ぐ力 ── 5期続けて利益率18〜19%

ROE10〜11%
決算期売上高営業利益純利益EPSROE
2022年3月期1,321億円—162.2億円536.2円11.3%
2023年3月期1,346億円240.9億円172.8億円571.3円11.0%
2024年3月期1,403億円265.1億円186.9億円622.4円11.3%
2025年3月期1,390億円258.7億円186.1億円645.4円10.6%
2026年3月期1,397億円266.1億円187.9億円683.4円10.1%
2027年3月期(予)1,420億円255.0億円177.0億円655.1円—
販売の最盛期が第4四半期にあたるため、会社は中間期の業績予想を出していない。2027年3月期第1四半期(4〜6月)は売上310億円(+2.0%)、営業利益45.9億円(+9.9%)。
部門別の売上
部門(2026年3月期)売上高構成比前期比中身
治療装置637億円45.6%+2.8%デフィブリレータ、人工呼吸器、ペースメーカ、カテーテル、在宅医療向けのレンタル事業。レンタルが伸びた
消耗品等398億円28.5%+2.7%各部門の機器に使う消耗品と、修理・保守のサービス
生体検査装置269億円19.3%▲5.6%心電計、超音波画像診断装置、自動血球計数装置。心電関連と血球計数装置が減少
生体情報モニター93億円6.7%▲4.8%生体情報モニタ
📌 伸びているのは在宅医療のレンタルと消耗品・保守で、機器の販売(生体検査装置・モニター)は減っている。売上は5期で1,321億円→1,397億円とほぼ横ばいだが、利益率は崩れていない。成長の会社ではなく、安定して現金を生む会社である。
04

事業の強み ── 在宅医療のレンタルと消耗品

売上の7割超が継続型
項目中身
製品心電計、超音波画像診断装置、生体情報モニタ、デフィブリレータ、人工呼吸器、ペースメーカ、カテーテル。循環器と呼吸器が中心
在宅医療在宅の患者に機器を貸し出し、医療機関を通じて料金を受け取るレンタル事業。治療装置部門に含まれ、会社は「在宅医療向けレンタル事業が伸張」と書いている。金額の内訳は開示されていない
継続型の売上治療装置(レンタルを含む)637億円と消耗品・保守398億円で、売上の74%
利益の安定営業利益率:2023年3月期17.9%、2024年3月期18.9%、2025年3月期18.6%、2026年3月期19.0%。ROEは5期とも10〜11%
従業員3,497人(ほかに臨時749人)。全国の営業・サービス網を自前で持つ
📌 機器を売ったあとに消耗品と保守が続き、在宅のレンタルは患者がいる限り続く。景気ではなく、診療報酬と患者数で決まる商売である。逆に言えば、診療報酬の改定や医療機関の経営悪化が、そのまま売上の天井になる。
株探の会社概要には「心電計で首位」とあるが、シェアの数値と調査元は、今回読んだ開示資料(決算短信・有価証券報告書)には書かれておらず、当商会では確認できていない。
05

還元と資本政策 ── 特別配当つきの230円、自己株式は発行済みの28%

利回り1.95%
項目中身
配当2026年3月期は年230円(普通配当145円+特別配当85円)、2027年3月期の予想も230円(普通160円+特別70円)。2024年3月期185円、2025年3月期195円から増えている
自社株買い2025年5月にToSTNeT-3で取得。2026年1〜2月に公開買付けで288,280株・19.4億円(1株6,721円)。東京海上日動とあいおいニッセイ同和が政策保有株を売る受け皿として実施
自己株式10,729,506株(発行済みの28.4%)を保有。消却の方針は開示されていない
元会長の件私用車(最大28台)の駐車に会社の駐車場を58か月使用、社用車の運転手の私的利用、交際費・観戦チケットの不適切な利用。総額154,497,155円で、全額を弁済する契約を締結。役員報酬の自主返納、6月16日に辞任
ガバナンス改革2027年3月期の定時株主総会を目途に取締役会の過半数を社外取締役へ。役員定年制と上席執行役員制度を導入(7月31日)。経営と執行の分離、会議体の刷新を掲げる
買収への対応方針2006年に導入した買収防衛策を、毎年の取締役会で継続を決議している
大株主福田孝太郎氏20.60%(資産管理会社を合算)、日本生命5.50%、きらぼし銀行(退職給付信託)4.99%、三菱UFJ銀行4.95%、みずほ銀行3.81%、北陸銀行3.65%
📌 還元は配当と、売りたい株主から買い取る形の自社株買いが中心で、額は大きくない。注目点は資本政策よりも統治のほうにある。元会長が退き、社外取締役を過半数にすると決めた。自己資本比率84%・自己株式28%・買収防衛策という組み合わせが、この先どう扱われるかは、まだ何も決まっていない。
06

TOPIX採用と買い需要 ── 売買代金の何日分か

当商会の概算
2026年10月7日、JPX総研がTOPIXの初回定期入替の結果を公表した。新規に追加されたのは35銘柄(スタンダード23、グロース12)で、実施は10月30日。フクダ電子はその一つである。
項目数字出所・前提
TOPIXに連動する資産 ÷ 構成銘柄の浮動株時価総額20.6%約160兆円÷775兆円(JPX総研の別紙)。割り算は当商会
追加基準の下限(浮動株時価総額)約610億円累積比率の上位96%以内
浮動株時価総額(当商会の置き)約1,568億円自己株式を除く時価総額×49%。大株主のうち固定的とみた株主(福田孝太郎氏 20.60%、日本生命保険 5.50%、きらぼし銀行(退職給付信託) 4.99%、三菱UFJ銀行 4.95%、みずほ銀行 3.81%、北陸銀行 3.65%、福田百合子氏 2.68%、従業員持株会 2.52%、福田記念医療技術振興財団 2.19%)を引いただけの粗い置き
買い需要の概算126〜324億円下限は基準の610億円、上側は当商会の置きに20.6%を掛けた
1日の売買代金に対して17〜43日分直近40営業日の平均は1日7.5億円
基準日(8月31日)からの値動き▲3.3%12,220円 → 11,820円
📌 需要は売買代金に対して大きいが、この数字をそのまま値上がりの幅と読むことはできない。①連動資産のすべてが10月30日の引けで指数どおりに買うわけではない。②選定ルールは2024年9月に公表済みで、先回りの買いがある。③実施日を過ぎると買いは止まる。この会社は基準日から▲3.3%。固定的な株主が約半分を占めるので、市場で動く株は多くない。
07

3年後の3ケース ── ベア・ベース・ブル

2029年
3年後(2029年秋)の株価を1株純資産×PBRで3通りに置く。1株純資産は、いまの7,101円に3年分の内部留保(1株利益−配当)を足す。確率は当商会の置きである。
ケース前提3年後の1株純資産PBR株価騰落配当込み
ベア(25%)医療機関の投資抑制で純利益149億円/年へ。配当は230円を維持。PBRは2025年3月期の安値0.92倍8,061円0.92倍7,416円▲37%▲31%
ベース(50%)今期予想並みの純利益178億円/年が続く。PBRは直近5年の高値1.50倍8,361円1.50倍12,541円+6%+12%
ブル(25%)ガバナンス改革と資本政策が進み、純利益195億円/年。PBRは医療機器10社の中央値1.92倍8,361円1.92倍16,053円+36%+43%
📌 3ケースを確率で均すと12,138円(+2.7%)、3年分の配当を足して+9.1%。ベースで+6%、配当込みで1割強。利益が安定しているので下の幅は5社の中で小さいほうだが、上に行くには、医療機器の同業並みの評価(PBR1.9倍)が付く必要がある。それには統治と資本政策の変化が数字で示されることが前提になる。
08

検証済みレンジとランク

B++
軸点根拠
🦦安さ1点PBR1.66倍は直近5年の高値1.50倍を上回る。PERは18.0倍。ネットキャッシュは時価総額(自己株式を除く)の21%あるが、値札は過去のレンジの外にいる
🦉財務3点自己資本比率83.7%。現預金675億円に対し借入金は17.5億円。5期続けて純利益160〜190億円
🦫モート3点在宅医療のレンタルと消耗品・保守で売上の7割超。営業利益率は5期続けて18〜19%、ROEは10〜11%で安定。景気に左右されにくい
🐊触媒2点元会長の辞任を機にガバナンス改革プロジェクトが発足(2027年の総会を目途に社外取締役を過半数へ)。政策保有株の受け皿として自社株買いを継続。一方で買収への対応方針は継続、第三者委員会の報告はまだ出ていない
🐝インカム1点利回り1.95%。年230円のうち70円は特別配当。配当性向は約35%
🦞リスク1点第三者委員会の調査が続いており、範囲と結論は未公表。辞任した元会長は20.60%を持つ筆頭株主のまま。診療報酬の改定と医療機関の収益悪化、個人情報の漏えい(2026年2月)
確度11点18点満点。13点以上が「高」、8点以上が「中」
上値と下値
上値の置き方PBR株価いまから
同業の中央値1.92倍1.92倍13,633円+15.3%
直近5年の高値1.50倍(規則で採用)1.50倍10,651円▲9.9%
下値の置き方株価下値非対称比幅ランク
52週安値6,560円▲45%-0.22小B++
PBR下限0.64倍×BPS4,544円▲62%-0.16小B++
PER下限6.07倍×予想EPS3,977円▲66%-0.15小B++
床(1株あたり金融資産)(規則で採用)3,184円▲73%-0.14小B++
上値は「1株純資産×min(直近5年のPBRの高値、同業の中央値)」。同業はテルモ 2.04倍、栄研化学 1.80倍、リオン 1.21倍、日本光電工業 1.46倍、シスメックス 2.34倍、JMS 0.26倍、マニー 2.53倍、オリンパス 2.83倍、朝日インテック 5.16倍、松風 1.55倍(株探・10月7日)。下値は、株価より下にある候補のうち最も深いもの。
📌 規則どおりの上値は10,651円で、いまの株価より▲9.9%。同業の中央値1.92倍よりも自社の直近5年の高値1.50倍のほうが低いので、規則では後者を採る。つまり「同業と比べれば安いが、この会社の過去と比べれば一番高い」位置にいる。幅は「小」、確度11点でB++。
株価幅ランク備考
11,820円(いま)小B++—
6,170円中B++2026年2月の自己株式公開買付けの価格6,721円より下
5,050円大A-2025年3月期の安値5,770円より下
09

リスクと検算メモ

6つのリスク
リスク中身
第三者委員会6月25日に設置。8月31日に委員1名が交代した。調査の範囲・期限・結論は公表されていない。追加の事実が出る可能性がある
筆頭株主辞任した元会長が20.60%を持つ。議決権の行使や持ち株の扱いについての開示はない
今期の減益予想営業利益255億円(▲4.2%)、純利益177億円(▲5.8%)
制度診療報酬の改定、医療機関の収益悪化と地域医療構想による再編。売上は5期ほぼ横ばい
情報管理2026年2月に個人情報の漏えいを開示
TOPIXの需給10月30日を過ぎると指数連動の買いは止まる。1日の売買は約6万株と少なく、買いが引いたあとの値動きも大きくなりやすい
検算メモ(沼底バリュー商会・2026年10月)
  • 株価11,820円は2026年10月7日の終値(株探の確定値)。10月8日の前場は11,180円前後まで下げている(場中の参考値)
  • 発行済37,747,300株、自己株式10,729,506株、自己資本1,918.45億円、現金及び預金674.69億円、短期借入金17.50億円、投資有価証券270.65億円は2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月31日)
  • 部門別の売上高と構成比は2026年3月期決算短信、5期の業績・ROE・大株主は有価証券報告書(2026年3月期)。営業利益は株探の業績表
  • 元会長の経費の不適切利用(総額154,497,155円と内訳)は5月14日の開示、再発防止策は6月3日、辞任は6月16日、第三者委員会は6月25日、ガバナンス改革プロジェクトは6月26日、役員定年制は7月31日の開示
  • 自己株式の公開買付け(288,280株・1,937,529,880円・1株6,721円)は2月26日の開示。買収への対応方針はコーポレート・ガバナンス報告書(6月26日)
  • 直近5年のPBRの高値1.50倍・安値0.64倍、PERの安値6.07倍はIRBANK(2022年3月期〜2026年3月期)。同業10社は当商会が選んだ医療機器
  • 当商会の置き:浮動株比率49%、連動資産の比率20.6%、継続型の売上を治療装置と消耗品等の合計としたこと、3ケースの1株利益・PBR・確率
  • 未確認:第三者委員会の調査の進み具合、心電計のシェア、在宅レンタルだけの売上高、自己株式の消却の方針、JPXが使う浮動株比率、10月8日の終値以降の値動き
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