Investment Research · 1965 東証スタンダード · 2026.10.07 · 株価 2,374円(10/7終値)

テクノ菱和 (1965)
統合投資分析レポート

工場のクリーンルームと空調の設計・施工。3年で営業利益は5倍、手持工事は売上の1年分を超える
2026年10月に1株を3株へ分割。値札・受注・還元・TOPIXの買い需要を一次資料で数えた

B++幅・小/確度11点
PBR2.16倍・PER12.4倍・利回り2.50%
上値1,780円(▲25.0%)/下値395円(▲83%)。
PBRは同業の中央値より上。
TOPIXの買い需要は売買代金の26〜36日分。
株価(10/7終値)
2,374円
8月末から+2.6%
時価総額
1,512億円
売買代金は1日4.8億円
PBR
2.16倍
5年レンジ0.36〜2.88倍
PER/利回り
12.4倍/2.50%
配当59.33円(予想)
ネットキャッシュ
262億円
時価総額の18%
TOPIXの買い需要
126〜172億円
売買代金の26〜36日分(概算)
01

結論 ── 利益は3年で5倍。値札はもう同業より上

B++
結論 01 · 事業
🏭
産業用空調の設計・施工。営業利益は3年で5倍
売上は610億円→987億円、営業利益は31.8億円→157.6億円(利益率5.2%→16.0%)。半導体・医薬・食品工場のクリーンルームや空調が中心で、6月末の手持工事高は1,132億円(前年同期比+26.8%)と、年間売上を上回る。今期の会社予想は売上1,000億円・営業利益160億円で、ほぼ横ばい。
結論 02 · 値札
🏷️
PER12.4倍は低いが、PBR2.16倍は同業より上
2025年4月の安値ではPBR0.6倍台だった。直近5年のレンジは0.36〜2.88倍で、2026年2月に高値を付けたあと25%ほど下げた位置にいる。規則どおりの上値は1,780円(▲25.0%)で、いまの株価より下になる。下値は395円(▲83%)。
結論 03 · 還元と触媒
📈
減配しない方針と株式分割。ただし目標は達成済み
配当は「前年度を下回らない」方針で、分割後の1株あたり33.33円(2025年3月期)から59.33円(今期予想)へ増えた。10月1日に1株を3株に分割した。中期計画の目標だったROE15%以上・PBR2倍以上はすでに届いていて、その先の還元策はまだ示されていない。
📌 当商会の採点はB++(幅・小/確度11点)。業績は非常に良く、財務も無借金に近い。ただ値札は2025年4月の安値667円(分割後)から3.6倍になり、PBRは同業の中央値を上回っている。規則で数える上値がないので、ランクは伸びない。同じ確度のまま幅が「中」になるのは949円、「大」になるのは741円。
株価は2026年10月7日の終値2,374円(株探の確定値)。TOPIXへの新規採用は10月7日の取引終了後に公表された。2026年10月1日に1株を3株に分割しており、1株あたりの数字は分割後。貸借対照表は2026年6月末。
02

値札と貸借対照表

PBR2.16倍
項目数字中身
株価(2026年10月7日終値)2,374円52週の高値3,113円・安値1,646円
時価総額1,512億円自己株式を除くと1,461億円(6,152万株)
PBR2.16倍1株純資産1,099円。直近5年のレンジは0.36〜2.88倍
PER(会社予想)12.4倍1株利益191.8円
配当利回り2.50%年59.33円の予想。配当性向は約31%
現預金・有価証券 − 借入金262億円時価総額(自己株式を除く)の18%。現預金等270億円、借入金8億円
投資有価証券171億円取引先を中心とする上場株式。3月末の145億円から6月末に171億円へ増えた(評価差額の増加)。時価で計上済み
清原式ネットキャッシュ比率0.30倍(流動資産610億円+投資有価証券×70%−負債296億円)÷時価総額
📌 現預金と有価証券が270億円、借入金は8.5億円で、ネットキャッシュは262億円(時価総額の18%)。工事会社なので、未成工事受入金(前受け)75億円を含む運転資金の出入りで現預金は四半期ごとに大きく動く。PBRが2倍を超えているので、資産の厚みで買う株ではない。
03

稼ぐ力 ── 営業利益率5%→16%

ROE19.8%
決算期売上高営業利益純利益EPSROE
2022年3月期569億円—22.4億円34.3円5.3%
2023年3月期610億円31.8億円23.4億円35.8円5.4%
2024年3月期737億円57.9億円45.1億円69.8円9.7%
2025年3月期842億円96.3億円72.6億円115.0円14.2%
2026年3月期987億円157.6億円118.0億円190.3円19.8%
2027年3月期(予)1,000億円160.0億円118.0億円191.8円—
1株利益は2026年10月の株式分割(1→3)後に直した数字。2026年3月期は期中に2度上方修正し、純利益は期初予想を大きく上回った。2027年3月期第1四半期(4〜6月)は売上224億円(+9.1%)、営業利益28.3億円(+21.1%)、受注高511億円(+53.3%)。
受注と手持工事
工事の種類受注高(2026年3月期)手持工事高(2026年6月末)中身
産業設備工事738億円671億円工場のクリーンルームや空調。半導体・医薬・食品など。手持ちは前年同期比+28.9%
一般ビル設備工事288億円441億円病院・庁舎・商業施設などの空調衛生。手持ちは+24.2%
電気設備工事27億円21億円—
合計1,053億円1,132億円手持工事高は+26.8%。年間売上高(今期予想1,000億円)を上回る
📌 手持工事高が1,132億円あり、今期の売上予想1,000億円を上回る。第1四半期の受注は半導体・食品関連の大型物件とリゾート関連で前年の1.5倍だった。問題は量ではなく採算で、営業利益率16%は過去(5%前後)の3倍にあたる。会社の今期予想は利益率16.0%で横ばい。
04

事業の強み ── 産業用の空調とクリーンルーム

手持工事1,132億円
項目中身
事業空調衛生設備の設計・施工。産業設備(工場のクリーンルーム・空調)が工事受注の約7割、一般ビル(病院・庁舎・商業施設)が約3割。官公庁工事は手持ちの2割
成り立ち1949年、三菱重工業の冷凍機を使った冷凍工事の会社として名古屋で設立。三菱重工サーマルシステムズが6.88%を持つ大株主で、冷熱機器の販売も行う
最近の完成工事Rapidusのクリーンルーム実装・分析解析室、ロームの筑後工場、NGKの新研究開発棟、兵庫県立西宮総合医療センターなど(有価証券報告書)
繰越工事レゾナックの半導体用フィルム増産、東京応化工業の阿蘇工場、北九州ニッスイの本社工場、三沢の米軍格納庫、兵庫県立がんセンターなど
顧客売上の10%を超える相手先はない
会社の目標2027年3月期に売上1,000億円・経常利益165億円・ROE15%以上・PBR2.0倍以上。2033年3月期に売上1,100億円・経常利益174億円・ROE15%以上
📌 半導体や医薬の工場に欠かせない空調とクリーンルームを手がけ、顧客は分散している。ただし、利益率が3倍になったのは空調設備の業界全体で起きていることで、同業の高砂熱学工業・三機工業・ダイダンもPBR3倍前後まで買われている。この会社だけの堀かどうかは、受注環境が変わったときに初めて分かる。
クリーンルームや産業用空調のシェアの数値は、今回読んだ開示資料には書かれておらず、当商会では確認できていない。2033年3月期の経常利益目標174億円は、今期予想165億円から7年で5%増という控えめな数字である。
05

還元と資本政策 ── 減配しない方針、分割と優待

利回り2.50%
項目中身
配当方針2024年度〜2032年度は「1株当たりの年間配当金について前年度を下回らない」こととし、利益の成長に応じて増額する。配当性向は約30%
配当の推移(分割後の1株あたり)2025年3月期33.33円 → 2026年3月期56.67円 → 2027年3月期59.33円(予想。中間88円は分割前の株数、期末30円は分割後)
株式分割2026年10月1日に1株→3株。投資単位は約71万円から約24万円へ。目的は「投資家層の拡大と流動性の向上」
株主優待静岡の新茶。分割後は100株から1パック、2,000株から2パックに条件を緩和
自社株買い2025年5月に取得を決議し、同年8月に終了。それ以降の決議はない
政策保有株式「基本的に政策保有株式として株式を保有する方針」(ガバナンス報告書)。縮減の数値目標は示されていない。買収への対応方針は導入していない
大株主取引先持株会10.27%、三菱重工サーマルシステムズ6.88%、三菱UFJ銀行4.69%、みずほ銀行4.69%、名古屋銀行3.56%、明治安田生命3.54%、京葉銀行3.49%
📌 減配しない方針と分割で、個人が持ちやすい形は整った。一方で、配当性向は約30%にとどまり、投資有価証券171億円の扱いも「保有する方針」のまま。2026年5月には、長期ビジョンの目標からPBRを外している(「当初の目標設定時と現在の水準を勘案」)。ROE15%を保つには、たまっていく純資産をどう使うかが次の論点になる。
06

TOPIX採用と買い需要 ── 売買代金の何日分か

当商会の概算
2026年10月7日、JPX総研がTOPIXの初回定期入替の結果を公表した。新規に追加されたのは35銘柄(スタンダード23、グロース12)で、実施は10月30日。テクノ菱和はその一つである。
項目数字出所・前提
TOPIXに連動する資産 ÷ 構成銘柄の浮動株時価総額20.6%約160兆円÷775兆円(JPX総研の別紙)。割り算は当商会
追加基準の下限(浮動株時価総額)約610億円累積比率の上位96%以内
浮動株時価総額(当商会の置き)約832億円自己株式を除く時価総額×57%。大株主のうち固定的とみた株主(取引先持株会 10.27%、三菱重工サーマルシステムズ 6.88%、三菱UFJ銀行 4.69%、みずほ銀行 4.69%、名古屋銀行 3.56%、明治安田生命保険 3.54%、京葉銀行 3.49%、ブルドックソース 3.09%、東京海上日動火災保険 2.80%)を引いただけの粗い置き
買い需要の概算126〜172億円下限は基準の610億円、上側は当商会の置きに20.6%を掛けた
1日の売買代金に対して26〜36日分直近40営業日の平均は1日4.8億円
基準日(8月31日)からの値動き+2.6%2,313円 → 2,374円
📌 需要は売買代金に対して大きいが、この数字をそのまま値上がりの幅と読むことはできない。①連動資産のすべてが10月30日の引けで指数どおりに買うわけではない。②選定ルールは2024年9月に公表済みで、先回りの買いがある。③実施日を過ぎると買いは止まる。この会社は基準日から+2.6%。10月1日の株式分割で1日の売買は増えやすくなっている。
07

3年後の3ケース ── ベア・ベース・ブル

2029年
3年後(2029年秋)の株価を1株純資産×PBRで3通りに置く。1株純資産は、いまの1,099円に3年分の内部留保(1株利益−配当)を足す。確率は当商会の置きである。
ケース前提3年後の1株純資産PBR株価騰落配当込み
ベア(25%)設備投資が一巡し、営業利益率が9%前後に戻って純利益68億円/年。配当は方針どおり据え置き。PBRは1.0倍1,251円1.00倍1,251円▲47%▲40%
ベース(50%)手持工事を消化して今期予想並みの純利益117億円/年が続く。PBRは同業の中央値1.62倍1,483円1.62倍2,402円+1%+9%
ブル(25%)受注の増加が続き純利益141億円/年。PBRは現状の2.16倍を維持1,564円2.16倍3,377円+42%+52%
📌 3ケースを確率で均すと2,358円(▲0.7%)、3年分の配当を足して+7.5%。ベースで株価はほぼ横ばい、配当込みで1割弱。利益が今の水準で続いても、PBRが同業の中央値に寄れば株価は上がらない計算になる。下は、設備投資が一巡して利益率が以前の水準へ戻る場合で、建設株としては珍しくない形である。
08

検証済みレンジとランク

B++
軸点根拠
🦦安さ1点PERは12.4倍で同業(11〜15倍)の中では低いほう。PBRは2.16倍で、同業9社の中央値1.62倍より高い。ネットキャッシュは時価総額の18%
🦉財務3点自己資本比率69.5%。現預金等270億円に対し借入金は8.5億円で、実質無借金
🦫モート2点産業用の空調・クリーンルームが主力で、工事受注の7割を占める。営業利益率は3年で5.2%→16.0%、ROEは19.8%。ただし利益率の上昇は業界全体の受注環境によるところが大きく、この会社だけの強みとは言い切れない
🐊触媒2点2026年10月に1株を3株に分割し、優待の条件も緩和。配当は「前年度を下回らない」方針で、分割後の1株あたり33.33円(2025年3月期)から59.33円(今期予想)へ。2025年に自社株買いの実績。中計の目標(ROE15%以上・PBR2倍以上)はすでに達成していて、次の還元策は示されていない
🐝インカム1点利回り2.50%、配当性向は約31%。減配しない方針と増配の実績はあるが、水準は高くない
🦞リスク2点売上の1割を超える顧客はなく、無借金。一方で利益率は過去の3倍の水準にあり、今期の会社予想は増益率0〜1.5%。建設資材の高騰と人手不足、設備投資の一巡がリスク
確度11点18点満点。13点以上が「高」、8点以上が「中」
上値と下値
上値の置き方PBR株価いまから
同業の中央値1.62倍(規則で採用)1.62倍1,780円▲25.0%
直近5年の高値2.88倍2.88倍3,164円+33.3%
下値の置き方株価下値非対称比幅ランク
52週安値1,646円▲31%-0.82小B++
PER下限3.36倍×予想EPS645円▲73%-0.34小B++
床(1株あたり金融資産)634円▲73%-0.34小B++
PBR下限0.36倍×BPS(規則で採用)395円▲83%-0.30小B++
上値は「1株純資産×min(直近5年のPBRの高値、同業の中央値)」。同業は三機工業 3.38倍、高砂熱学工業 2.93倍、ダイダン 3.03倍、新日本空調 1.75倍、クラフティア 1.62倍、大氣社 1.37倍、ヤマト 1.12倍、ユアテック 1.10倍、日本電設工業 1.06倍(株探・10月7日)。下値は、株価より下にある候補のうち最も深いもの。
📌 規則どおりの上値は1,780円で、いまの株価より▲25.0%。直近5年のPBRの高値(2.88倍)は2026年2月のもので、同業9社の中央値1.62倍のほうが低いため、規則では同業の水準を採る。同業は1.06倍から3.38倍まで幅が広く、空調の専業3社(三機工業・高砂熱学工業・ダイダン)だけなら3倍前後になる。どの会社を同業と見るかで上値は大きく変わる。幅は「小」、確度11点でB++。
株価幅ランク備考
2,374円(いま)小B++—
949円中B++2025年3月期の高値1,160円(分割後)より下
741円大A-1株あたり金融資産634円の少し上
09

リスクと検算メモ

6つのリスク
リスク中身
利益率の反動営業利益率16.0%は3年前の3倍。会社の今期予想は増収率1.3%・営業増益率1.5%で、伸びは止まる前提になっている
受注環境半導体・医薬・食品工場の設備投資に左右される。会社自身が「企業の設備投資計画が見直される可能性がある」と書いている
コストと人手建設資材の供給制約と価格高騰、技術者の不足。従業員は981人で、手持工事1,132億円をこなす体制の余力が利益率を左右する
資本効率純資産は1年で529億円→664億円に増えた。配当性向30%のままだとROEは自然に下がっていく
IRBANKの指標分割の調整がずれており、同サイトのPBR・PERは実際の3分の1で表示されている。本資料では期末株価と1株純資産で検算して3倍に直した
TOPIXの需給10月30日を過ぎると指数連動の買いは止まる
検算メモ(沼底バリュー商会・2026年10月)
  • 株価2,374円は2026年10月7日の終値(株探の確定値・分割後)。発行済63,685,812株、自己株式は6月末の720,527株(信託口を含む)を3倍した
  • 6月末の現金及び預金260.34億円・有価証券9.99億円、借入金8.5億円、投資有価証券171.32億円、自己資本675.87億円、手持工事高1,132.31億円は2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月5日)
  • 会社予想(売上1,000億円・営業利益160億円・純利益118億円・1株利益191.84円)と配当(中間88円は分割前、期末30円は分割後)は同短信と「株式分割…に関するお知らせ」(8月5日)。年間59.33円は88÷3+30で当商会が計算
  • 部門別の受注高(産業設備738.22億円・一般ビル288.01億円・電気27.22億円)は2026年3月期決算短信。完成工事・繰越工事の例、大株主、配当方針は有価証券報告書(2026年3月期)
  • 中期計画の目標の見直しは5月14日の開示、業績と配当の上方修正は3月31日の開示、政策保有の方針と買収への対応方針はコーポレート・ガバナンス報告書(6月26日)
  • IRBANKのPBR・PERは分割調整のずれで3分の1になっている。2026年3月期の高値9,340円(分割前)÷1株純資産3,233.88円=2.89倍で、表示の0.96倍の3倍と一致することを確かめた。直近5年のレンジ0.36〜2.88倍、PERの安値3.36倍はこの補正後
  • 同業9社は当商会が選んだ空調・設備工事(住友電設は株探に指標の表示がなく除いた)
  • 当商会の置き:浮動株比率57%(重田康光氏3.09%は固定株主に入れていない)、連動資産の比率20.6%、3ケースの1株利益・PBR・確率
  • 未確認:クリーンルーム・産業用空調のシェア、JPXが使う浮動株比率、工事ごとの採算、10月8日以降の値動き
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