「借金は悪」は半分間違い|信用取引×インフレ時代に「賢く借りる」ための思考法【バリュー投資コラム】
「借金は怖い」——そう思っている人ほど、インフレに静かに食われていく。
朝のミーティング室。いつもより空気が張り詰めていた。
🦦河内「課長!信用枠、もっと使えませんか。今が仕込み時です。PBR0.3倍の案件が3つ同時に来てます」
🧑💼沼田「落ち着け河内。借金は道具だ。正しく使えば武器、間違えれば凶器になる」
🦞守田「そうです課長。河内さんは毎回こうやって──」
🦦「守田さん、まずは話を聞いてください!」
🧑💼「二人とも座れ。今日はちょうどいい機会だ。借金について、ちゃんと整理しよう」
借金に「善悪」はない
🧑💼「まず聞く。借金は悪か?」
🦎日向(見習い)「え…悪いんじゃないですか?借りたら返さなきゃいけないし」
🦞「私も同意します。リスクを取る必要はない」
🧑💼「では住宅ローンで家を買うのは悪か。会社が社債を発行して工場を建てるのは悪か」
🦎「……それは違う気がします」
🧑💼「そうだ。借金自体に善悪はない。条件次第でどちらにもなり得る。判断するのに必要な軸は2つだけだ」
借金を判断する「2つの軸」
沼田課長がホワイトボードに書いた。
① 調達コスト(金利)は高すぎないか?
② 使い道は価値を生み続けるものか?
🧑💼「この2つに合理的な答えが出るなら、借金は強力な道具になる。答えが出ないなら、やめておけ。シンプルだ」
🦦「それで言ったら今の信用口座は①はクリアしてますよね。野村の金利1.43%ですよ?」
🧑💼「そうだ。だから①の話から始めよう」
① 日本の金利は「世界最安水準」
🦎「金利って最近上がってるんじゃないですか?」
🧑💼「比較してみろ。アメリカの30年固定住宅ローンは平均7%だ。日本は?」
🦎「2.5%くらいですか」
🧑💼「そう。日本の30年固定金利は今も世界最低水準。しかもインフレが3%で進行すれば、実質的な調達コストはゼロを下回る計算になる」
🦦「つまり借りてる間に借金が目減りしていく!」
🧑💼「理屈の上ではそうなる。インフレで借金が薄まる——これが発想の核心だ。バフェットが日本で円建て社債を発行したのも、世界中のお金持ちが日本で借りているのも同じ理由だ」
🦞「…確かに金利は低い。認めます。でも低金利だからといって際限なく借りる理由にはなりません」
🧑💼「守田の言う通りだ。①がクリアできても②が崩れたら終わりだ」
💡 信用取引の金利(参考)
証券会社 金利 野村證券 1.43%(業界最安水準) SBI・楽天等 2.85%前後 消費者金融 15〜20%(論外)
② 使い道が「価値を生み続けるもの」かどうか
🧑💼「安い金利で借りられたとして、それを何に使うかが②の話だ」
🦎「旅行とかブランド品とかに使ったら…」
🦞「消えたら終わりです。後に残るのは返済義務だけ。最悪のケースです」
🧑💼「守田の言う通りだ。最も合理的なのは──」
🦦「借りた金利以上の価値を生み続けるものを買う!収益不動産や株式がそれですよね」
🧑💼「そうだ。インフレ以上に成長する、または配当を出す資産なら言うことはない」
核心の問い:「今すぐ買う」インセンティブはあるか?
🧑💼「ここが本当の核心だ。常にこの問いを立てろ」
「借金という調達コスト(利払い+手数料)を払ってまで、今それを買うインセンティブがあるか?」
🦎「後で買えばいいものをわざわざ借金して買う必要はない、ってことですね」
🧑💼「逆もある。インフレ進行中は、本当に必要なものは早く買った方が得だ。現金(預金)はインフレで実質的に薄まっていく」
🦦「じっとしていることにもコストがある!」
🦞「…でも焦って価値のないものをつかんだら台無しです。それが一番怖い」
🧑💼「守田、それも正しい。だから①低金利 × ②価値を生む使い道の両方が揃った時だけ動く。これが鉄則だ」
沼田課長の実践:野村信用×バリュー株
🦦「課長自身はどうやってるんですか?」
🧑💼「俺は野村の信用口座(1.43%)で底堅いバリュー株を買っている。価値が毀損しないと判断した銘柄だけだ」
🦎「怖くないんですか?」
🧑💼「怖いというより、リスクの中身を理解している。ギャンブルとの違いはそこだ。期待値を計算した上で、合理的にリスクを取っている」
🦞「信用維持率は常に確認しているんですか?」
🧑💼「当然だ。そこを管理しないとインフレで資産を増やす前に追証でやられる」
🦦「結果はどうですか?」
🧑💼「NISAのインデックスだけでは出せない結果が出ている。もちろん未来は保証されないが、今リスクを取る価値があると判断しているし、実際にご褒美ももらえてきた」
③ 忘れてはいけない「資金管理力」
🦞「…課長、大事なことを一つ言ってもいいですか」
🧑💼「守田、どうぞ」
🦞「①金利が低い、②使い道が良い——この2つが揃っていても、扱う規模を誤ったら全部終わりです」
🦎「規模、ですか?」
🦞「そうです。借りる額が大きすぎると、毎月の利払いだけで家計が圧迫される。しかも相場が一時的に下げた時に追証(マージンコール)が来て、底値で強制売却——最悪のシナリオです」
🦦「…それは怖いですね」
🧑💼「守田の言う通りだ。だから俺が常に意識しているのはこれだ」
「万が一相場が▲30〜40%暴落しても、利払いを続けながら耐えられるサイズにとどめる」
🦞「具体的には——追証ラインまでの余裕を常に確保しておくこと。そして全資産に対する信用買い残の比率を、生活に影響が出ない水準にとどめることです」
🦎「利払いが続けられないと、良い案件を持っていても負けちゃうんですね」
🧑💼「そうだ。借金は時間を買う道具でもある。長く持ち続けられなければ、割安株投資の本質である”待つ”ができなくなる。扱えるサイズを守ることが、最終的に最も大きなリターンにつながる」
🦞「河内さん、PBR0.3倍案件が3つ来てるとのことでしたが——1つずつです。一度に3つは資金管理上、私は反対します」
🦦「…わかりました。1つに絞ります」
🧑💼「それが正解だ」
💡 資金管理の3原則(バリュー商会ルール)
ルール 内容 ① 追証ラインまでの余裕を確保 常にバッファを持ったポジション管理 ② 利払いは現金フローで賄える規模 配当収入+給与で利払いが自己完結すること ③ 万が一の暴落(▲40%)でも耐えられる規模 最悪シナリオでも強制売却されない設計
その時、創業者から電話が入った
📱 (着信:野村 沼之助)
🧓野村(電話越し)「堅一か。朝からうるさいな。何の話をしとるんじゃ」
🧑💼「借金の話です。師匠が昔から言ってた”低金利で借りて割安で買う”の原則を説明してました」
🧓「……なぜ誰もやらんのか、儂には今でも謎じゃ。バフェット爺さんは海外からでもやっとるのに」
🦞「(小声)あの方も賛成なんですね…」
🧓「守田くんか。反対するのも仕事じゃが、たまには背中を押してやれ。では切るぞ」
📱 (通話終了)
まとめ:借金は「道具」であり、使い方で武器にも凶器にもなる
| 悪い借金 | 良い借金 | |
|---|---|---|
| 金利 | 高い(消費者金融15〜20%) | 低い(信用取引1.43%、住宅ローン2.5%) |
| 使い道 | 消費(消えるだけ) | 資産(価値を生み続ける) |
| インフレとの関係 | 物価上昇で生活が苦しくなる | インフレで債務が実質的に薄まる |
| 資金管理 | 利払い・追証で自滅 | 暴落でも耐えられるサイズ設計 |
| 結果 | 強制売却・損失確定 | 資産が借入コストを上回る |
🦎「整理すると——①金利が低い × ②価値を生む使い道 × ③扱えるサイズの3つが揃えばOK、と」
🦦「PBR0.3倍案件、通してもらえますか課長?」
🧑💼「守田のOKが出たら考えよう」
🦞「…1件だけなら。条件を聞かせてください」
🦦「よっしゃ!!」
💬 野村 沼之助(創業者)より
「低金利で借りて、割安で買う。無理しない範囲でな。それだけじゃ。なぜ誰もやらんのか儂には謎じゃ」
本記事はバリュー商会の投資方針・実践経験をもとにした情報提供です。投資判断はご自身の責任でお願いします。