銘柄紹介|五洋建設(1893)— 高値から▲39%、でもEPSは1円も下がっていない。セクター全面安で支持帯の下端1,367円へ【安い×シェア首位×将来性が揃うなら、ある程度は抱えられる/PER10.6倍・総還元5.3〜6.4%】
🦦 「割安発掘担当の河内です。今日は先に、お断りから入らせてください。この一枚は、うちがいつも紹介している型から外れています」
🦦河内「五洋建設(1893)のPBRは1.93倍です。当商会が紹介した33社の平均修正PBRは0.96倍、うち22社が1倍割れ。その並びに、解散価値の2倍の株を置くことになります」
🧑💼沼田「それでも取り上げるのは、安さの在り処がまったく別のところにあるからだ。この会社は『資産で安い』のではない。『稼ぐ力に対して、市場が払う倍率が下がった』だけだ」
📉 公開日の追記|2026年8月19日 ・この記事は8月14日終値1,438.5円で書いた。公開日の8月19日、株価は1,367円(▲71.5円・▲4.97%)まで下げている ・ただし五洋固有の材料ではない——同日、東亜建設工業▲5.15%、大成建設▲3.94%、鹿島建設▲3.86%、大林組▲3.65%と建設セクターが全面安 ・結果として、三点で形成された支持帯1,363〜1,410円の下端まで下げた ・数字はすべて8月19日の1,367円に置き直してある
🦉 先に潰しておく|資産バリューとしては、割安ではない
🦉夜見「財務分析担当の夜見です。期待と現実を、最初に合わせておきます」
⚠️ 資産の切り口では成立しない ・土地簿価は335億円しかない——含み益で株価を説明できる規模ではない ・投資有価証券285億円の含み益(約136億円)は、既に純資産へ計上済み ・現金718億円に対し有利子負債2,449億円(26/6末)=ネット有利子負債1,953億円の「純負債企業」 ・自己資本比率24.5%、PBR1.93倍(BPS709.09円)
🦞守田「リスク番から先に言っておく。この銘柄には『解散価値が支える』という論法が使えない。理論上、BPS709円まで48%の下落余地がある。『資産があるから大丈夫』という安心感でポジションを大きくするな——今日いちばん重要な注意点だ」
🦦河内「この銘柄の割安性は、資産ではなく収益力・キャッシュ創出力・還元利回りに宿っています」
🧑💼 なぜ、うちがこの一枚を触るのか
🧑💼沼田「先に、読者が抱くはずの違和感に答えておく。時価総額3,910億円のプライム大型株を、しかもPBR1.93倍で紹介する——これはうちの型から明確に外れている」
🦎日向「正直、いつも扱っている小型株と並べると眩暈がします」
| 前日に扱った東証スタンダードの小型株 | 五洋建設(1893) | |
|---|---|---|
| 時価総額 | 30億円 | 3,910億円(130倍) |
| PBR | 0.36倍 | 1.93倍 |
| 1日の売買代金 | 100万円 | 43.9億円(約4,400倍) |
| 1日の約定回数 | 5回 | 5,597回 |
🧑💼沼田「だが、うちが探しているのは『安い株』ではない。『価値に対して安い株』だ。そして安さには、少なくとも2種類ある」
⚖️ 2種類の安さは、由来がまったく違う ・資産の安さ(PBR)——誰も見ていないから安い。見られるまで待つ投資。東海染工がこちら ・収益の安さ(PER)——みんなが見ていて、期待が剥げたから安い。期待が正常化するのを待つ投資。五洋建設はこちら
🧑💼沼田「前者は『発見されるか』に賭ける。後者は『戻るか』に賭ける。どちらも当商会の守備範囲だが、うちは前者ばかり書いてきたので、後者を1枚も置かないのは片手落ちだと考えた」
🦞守田「大型を触る利点も、正直に言っておけ」
🪙 大型だからこその、2つの実利 ・降りられる——売買代金43.9億円なら、個人のサイズは板に影響しない。東海染工では逆立ちしてもできないことだ ・期待が剥げたときの落差が大きい——2,257円→1,367円で▲39%。小型株では、そもそもここまでの期待が乗らない
🧑💼沼田「誤解のないように書いておくが、これは『大型株もやります』という宣言ではない。うちの中心は今後も資産バリューだ。ただ、収益の安さが極まった一枚が出てきたときに、型を理由に見送るのは違うと判断した——それだけの話だ」
🦉 では何が安いのか|下落の100%が「倍率」だった
🦉夜見「ここがこの銘柄で最も重要な事実です」
| 2026年2月12日 年初来高値 | 2026年8月10日 年初来安値 | 2026年8月19日 | |
|---|---|---|---|
| 株価 | 2,257円 | 1,390.5円 | 1,367円 |
| 予想PER | 約17.5倍 | 10.8倍 | 10.6倍 |
| 会社予想EPS | 128.65円 | 128.65円 | 128.65円 |
🦉夜見「株価は高値から38.4%下がりましたが、分母である利益は一切傷んでいません。期中に一度も下方修正されていない。つまり下落のほぼ全額が、投資家が払ってよいと考える倍率の変化で説明できます」
🧑💼沼田「これは業績悪化型の下落とは、本質的に別物だ。センチメントが戻れば再評価も速い。逆に言えば、倍率がさらに下がる余地(PER9〜10倍)も理論上は残っている」
🦉夜見「では、なぜ倍率が剥げ落ちたのか。きっかけは8月7日の1Q決算です」
| 27/3期 1Q | 実績 | 前年同期比 | 通期進捗 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,822億円 | +4.6% | 22.3% |
| 営業利益 | 111億円 | +8.1% | 18.8% |
| 経常利益 | 105億円 | +5.0% | 19.4% |
| 純利益 | 71億円 | +3.1% | 20.3% |
🦉夜見「損益は増益です。売られたのは損益ではなく、受注でした」
| 1Q受注(単体) | 実績 | 前年同期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 国内土木 | 846億円 | 559億円 | +51.5% |
| 国内建築 | 959億円 | 1,330億円 | ▲27.9% |
| 海外 | 224億円 | 1,246億円 | ▲82.0% |
| 合計 | 2,029億円 | 3,135億円 | ▲35.3% |
🦦河内「ただし、この▲82%には裏があります。前年同期の海外受注1,246億円は、26/3期通期の海外受注2,053億円の60.7%が1四半期に集中した異常値でした。比較の分母が異常に高かったということです」
🦞守田「『平常への回帰』と読むほうが統計的には自然だ。ただし2Qも2割超の減少なら、タイミング差という説明は成立しなくなる。11月の2Qが最初の答え合わせだ」
🦫 モート|参入障壁が「金額」で測れる、稀な業種
🦫堀田「モート担当だ。この会社の堀は、業種として珍しい性質を持っている」
🦫堀田「国内マリコン(海洋土木)最大手。浚渫・埋立・港湾・護岸という、陸のゼネコンが入れない領域だ。競合は東亜建設工業・東洋建設・若築建設など数社に限られる」
⚓ 参入障壁の中身 ・作業船団が実質的な免許——SEP船CP-8001(800t吊)、大型起重機船CP-5001/CP-4501、カッター浚渫船CASSIOPEIA V などを保有 ・新規参入コストが具体額で判明している:重量物運搬船(HLV)約1,200億円、ケーブル敷設船約310億円、SEP船は数百億円 ・この金額を出せる建設会社は、国内に数社しかない ・船を動かす人がいない——運航・施工には熟練の船員・潜水士・施工管理が必要で、資本だけでは複製できない
🦫堀田「ただし正確を期すと、1,600t吊のCP-16001は鹿島建設・寄神建設との3社共同プロジェクトで、単独保有ではない。参入障壁の主張はその分だけ弱まるが、同時に遅延時の損失も薄まる」
🦉夜見「収益構造も、この堀を裏づけています」
| 26/3期セグメント | 売上高 | 利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 国内土木(=海洋土木の本業) | 3,259億円 | 402億円 | 12.3% |
| 国内建築 | 2,734億円 | 168億円 | 6.1% |
| 海外建設 | 1,818億円 | ▲32億円 | ▲1.8% |
| 合計 | 7,943億円 | 553億円 | 7.0% |
🦫堀田「利益の73%を国内土木が稼いでいる。極端な構造だが、その極端さこそが『マリコン首位』の実体だ」
🦉 ストック性|受注残1.55年分と、20兆円の制度予算
🦉夜見「ゼネコンは本来フロー型産業ですが、この会社は三層の擬似ストックを持っています」
🔁 フローに見えて、ストックに近い ・受注残:繰越工事高1兆2,701億円(26/6末)=27/3期売上計画8,180億円の1.55年分。国内は前年同期比+9.3%と増加中 ・制度予算:第1次国土強靱化実施中期計画が2026〜2030年度で20兆円強。26年度の関係予算は概算要求6.66兆円 ・防衛需要:社長が「防衛関連の需要は非常に強い」と明言。鹿児島・沖縄の港湾移設、基地強化
🦞守田「ただし真のストック(賃料・サブスク型)ではない。景気と政策の変化には、最終的に晒される」
🦉夜見「中期経営計画(2026-2028)も置いておきます」
| 指標 | 25年度実績 | 28年度計画 |
|---|---|---|
| 売上高 | 7,943億円 | 8,800億円(年率3.5%) |
| 営業利益 | 553億円 | 635億円 |
| 純利益 | 347億円 | 380億円(EPS147.4円) |
| ROE | 18.7% | 16.7% |
| 有利子負債 | 1,961億円 | 1,660億円へ削減 |
🦉夜見「28年度EPS147.4円がそのまま実現すると仮定すると、現在株価1,367円は28年度予想PER9.3倍。売上年率3.5%成長という前提は、ゼネコンとしてはむしろ保守的な部類です」
🌊 この1枚が、いくつのテーマに跨っているか
🦫堀田「ここは強調しておきたい。この会社が乗っているテーマの数は、1銘柄としては異常だ」
| テーマ | 規模・時間軸 | 五洋の関わり方 |
|---|---|---|
| 国土強靱化 | 2026〜2030年度で20兆円強 26年度概算要求6.66兆円 | 港湾・海岸・河川の防災。毎年一定額が降ってくる擬似ストック |
| 防衛 | 〜2030年 | 鹿児島・沖縄の港湾移設、基地強化。社長が「需要は非常に強い」と明言 |
| データセンター | 進行中 | 造成・基礎。内需の一角として受注に反映済み |
| 洋上風力 | 本格化は2029年度以降 | 5,000t吊HLV 1,200億円+ケーブル敷設船310億円を建造中(五洋負担約790億円) |
| 港湾・空港の維持更新 | 定常 | 浚渫・埋立という本業そのもの |
🦫堀田「普通、1社でこれだけのテーマには乗れない。乗れているのは、テーマを追いかけて事業を広げたからではない」
🦫堀田「逆だ。テーマのほうが、海に集まってきた。防災も、防衛も、洋上風力も、データセンターの用地も、行き着く先が『海と水際の土木』だった。そこを寡占していたから、勝手に複数のテーマが重なった」
🧑💼沼田「ここが、いわゆるテーマ株との決定的な違いだ。テーマ株は、テーマに合わせて会社が動く。この会社は、動かないまま複数のテーマが乗ってきた」
🦞守田「ただし、数の多さを強みと数え上げるのは危険だ。確定しているのは国土強靱化・防衛・データセンターまでで、洋上風力は未確定のオプションにすぎない」
🏗️ 二階建てとして分けて読む ・1階(確定した内需)——国土強靱化20兆円+防衛+データセンター。受注残1兆2,701億円=1.55年分がその証拠 ・2階(未確定のオプション)——洋上風力。船は2028年2〜3月竣工だが、着床式の本格化は2029年度以降。それまでは償却と金利だけが出ていく ・そして現在の株価は、1階だけでほぼ説明がつく水準にある——2階はほとんど値段に入っていない
🐝 還元|総還元利回り5.3〜6.4%が、下値を支える
🐝花岡「高配当担当の花岡です。ここは素直に評価できます」
💰 中計で明示された還元方針 ・配当利回り 3.80%(年52円) ・配当性向 35% → 40%以上 ・総還元性向 60%以上 ・自己株式取得 3年で300億円(年約100億円) ・総還元利回り 5.3〜6.4%
🐝花岡「自己株式取得は、株価が下がるほど1株あたりの効きが強くなります。下落局面で前倒し実行されれば、それ自体が下支えになる」
🦞守田「ただし還元方針の後退は、降りる理由になる。自己株取得の中止や配当性向40%の引き下げが出たら、この論拠は消える」
🧓 【本題】過熱感は落ち着いたのか|需給とテクニカル
🧓野村「レバレッジ担当の野村じゃ。今日は需給の話を任された。この銘柄は資産の床がないぶん、需給と位置を見る意味が大きい」
🧓野村「まず、押しの深さを測っておく」
| フィボナッチ水準 | 価格 | 状況 |
|---|---|---|
| 起点(25/8安値) | 961.9円 | 上昇の出発点 |
| 天井(26/2/12) | 2,257.0円 | 上昇幅1,295.1円 |
| 38.2%押し | 1,762円 | 26年6月に割り込み済み |
| 50.0%押し | 1,609円 | 26年7月に割り込み済み |
| 61.8%押し | 1,457円 | 現在値はここをわずかに下 |
| 66.7%(2/3)押し | 1,393円 | 8/10安値1,390.5円がほぼ一致 |
| 76.4%押し | 1,267円 | 下に抜けた場合の次の目安 |
🧓野村「8月10日の安値1,390.5円は、2/3押しの1,393円と誤差3円じゃ。教科書的な深押し完了ポイントで反発しておる。ただしフィボナッチは自己成就的な性格が強い。根拠としては補助的に扱え」
🧓野村「次に、熱が抜けたかどうかじゃ」
🌡️ 過熱感が落ち着いた根拠 ・出来高の枯れ:2月6,970万株 → 8月2,307万株(14日まで)。日次換算で387万株→256万株の▲34% ・直近20営業日の平均は約216万株。8/10の投げ(575万株)を除けば200万株前後に沈静化 ・信用の重しがない:信用買残1,770,200株=発行済の0.6%、平均出来高の1日分未満 ・下落の主体は信用ではなく現物・機関投資家の売り——「期日の投げ売りが続く」タイプの需給悪ではない ・1,363〜1,410円に三点(25/11安値・26/7安値・26/8安値)で形成された厚い支持帯 ・8/12以降3日続伸
🦞守田「だが弱気材料も同じ重さで置け」
| 移動平均線 | 水準 | 乖離 | 状態 |
|---|---|---|---|
| 20日線 | 約1,516円 | ▲5.1% | 下方・下向き |
| 75日線 | 約1,600円 | ▲10.1% | 下方・下向き |
| 12か月線 | 約1,589円 | ▲9.5% | 下方・頭打ち |
| 200日線 | 約1,650〜1,680円 | ▲13〜14% | 下向き転換中 |
🦞守田「すべての移動平均線の下にあり、並びも下降配列だ。トレンドは明確に下向き。『安いから買う』を実行するなら、トレンド転換を待たずに拾うことになる——ここは自覚しろ」
🧓野村「最初のトレンド転換シグナルは、75日線1,600円の回復じゃな」
🦍 乱入|「バリュー商会がPBR2倍の株を紹介してんの?」
🦍テック番長「おい待てや。お前ら、PBR1倍割れがどうとか毎回言ってなかったか? いま堂々とPBR1.93倍の株を紹介してるよな。しかも洋上風力とデータセンターと防衛って、それ完全にテーマ株じゃん」
🦍テック番長「テーマ相場で2.3倍になって、剥げ落ちて▲39%。それを『割安になりました』って拾うの、ただの落ちるナイフでは?」
🧑💼沼田「番長、今日はお前の指摘が全部正しい。だから記事の冒頭で、うちの型から外れると断った」
🦍番長「認めるのかよ」
🧑💼沼田「認めたうえで、違いを1つだけ言う。テーマ株が剥げるとき、たいていは利益も一緒に剥げる。この会社は剥げていない」
⚔️ テーマ株の崩壊と、この下落の違い ・典型的なテーマ株:期待が消える → 業績予想も下方修正 → 倍率と利益の両方が縮む ・五洋建設:期待が消えた → 会社予想EPS128.65円は一度も動いていない → 縮んだのは倍率だけ ・1階(PER11倍・利回り3.6%・受注残1.55年分)だけで、現在の株価は説明できる ・2階(2,000億円の作業船が稼ぐ2029年度以降)は、ほとんど織り込まれていない
🦍番長「……ぐぬ。でも2階が来なかったら、ただの地味な建設株だろ」
🧑💼沼田「そのとおりだ。だから今日の評価はB+にしてある。2階に賭ける記事ではない」
🦎日向「あっ、番長さんの茶々、そのままエントリー前チェックリストですね」
✅ 番長の茶々→買う前の5つの確認 ・資産の床はあるか? → ない。PBR1.93倍。BPS709円まで理論上48%の下落余地 ・利益は傷んでいるか? → 傷んでいない。EPS128.65円は据え置きのまま ・堀は本物か? → 本物。HLV1,200億・CLV310億という参入コストが金額で判明している ・2階(洋上風力)に賭けているか? → 賭けていない。1階だけで説明できる価格で拾う ・抱えられるサイズか? → 資産の床がない以上、価格で切らないなら枚数で制御するしかない
🦍番長「……最後のやつ、俺が言いたかったことだわ(ぐぬぬ)」
🦞 リスク|床がない、という一点に尽きる
🦞守田「主要なリスクを並べる」
| リスク | 内容 |
|---|---|
| ①洋上風力の遅延 | 約1,500億円(五洋負担790億円)の船が2028年2〜3月竣工だが、着床式の本格化は2029年度以降。制度見直しが長引けば償却と金利だけが先行する期間が伸びる |
| ②26/3期は利益率のピークだった可能性 | 営業利益+154.9%、国内土木利益率12.3%は歴史的高水準。1Qは既に10.4%へ低下。平均回帰が起きればPER11倍の前提が崩れる |
| ③財務レバレッジ | 有利子負債2,449億円(3月末比+488億円)、自己資本比率24.5%。営業590億→経常540億の差は主に金利。中計の削減目標とは逆方向に進行中 |
| ④海外セグメントの赤字 | 26/3期▲32億円、1Qも赤字。中計は28年度に営業60億円への転換を前提 |
| ⑤FCFがほぼゼロ | 26/3期は営業CF684億に対し投資CF▲663億。フリーCFは実質+21億円 |
| ⑥下値の理論的な床がない | BPS709円まで48%の下落余地。実際の下値を支えるのはPER倍率と配当利回りだけで、いずれもセンチメント次第 |
| ⑦建設業共通 | 資材・労務費インフレ、2024年問題、単一工事の失敗が四半期利益を吹き飛ばす業種構造 |
買い方|少量・分割、そして「降りる条件は価格ではなく中身」
🧑💼沼田「以上を踏まえて、握り方を決める」
🦉夜見「シナリオ別の水準です」
| シナリオ | 確率 | 株価 | 現値比 | 前提 |
|---|---|---|---|---|
| ベア | 20% | 1,100〜1,270円 | ▲20〜▲8% | 洋上風力の遅延+下方修正。PER8.5〜10倍 |
| ベース | 40% | 1,550〜1,750円 | +13〜+27% | 会社計画達成・受注は戻る。PER12〜13.6倍 |
| ブル | 28% | 1,950〜2,250円 | +42〜+64% | 中計進捗+洋上風力再始動。28年度EPS147.4円×13〜15倍 |
| マックス | 12% | 2,500〜2,800円 | +82〜+104% | 洋上風力の本格立上げ確認(前提にはできない) |
🦉夜見「確率加重の期待株価は1,803円、現値比プラス31.9%です」
🦞守田「リスク・リワードは、5営業日前より素直に良くなった」
🎯 下げたぶん、比率は改善した ・(1,803−1,367)÷(1,367−1,185)=約1 : 2.4(8月14日の1,438.5円時点では1 : 1.4) ・期待株価1,803円まで+31.9%、配当を含めると+35.7% ・ベア1,100〜1,270円まで▲20〜▲8%
🧑💼沼田「ここで、うちの立場をはっきりさせておく。この銘柄に資産の床はない。それは記事の冒頭で書いたとおりだ」
🧑💼沼田「だが、床は資産だけではない」
🧱 この銘柄を支える3つの床 ・安い——予想PER10.6倍、28年度予想では9.3倍。総還元利回り5.3〜6.4% ・シェアが大きい——マリコン首位。繰越工事高1兆2,701億円=売上計画の1.55年分 ・将来性がある——洋上風力・データセンター・防衛・国土強靱化と、需要側のテーマが複数走っている
🧑💼沼田「この3つが揃っているなら、多少の含み損はある程度まで抱えていられる。だから機械的な損切りは置かない」
🦞守田「代わりに、降りる条件は価格ではなく中身に置け」
⚠️ 降りるのは「価格が下がったとき」ではなく「テーゼが壊れたとき」 ・会社予想EPS128.65円が下方修正されたとき——下落が「倍率の話」から「利益の話」に変わる ・繰越工事高1兆2,701億円が継続的に減り始めたとき——1.55年分という土台が薄くなる ・還元方針の後退——自己株取得の中止や配当性向40%の引き下げ ・逆に言えば、株価がいくら下がっても、この3つが無事なら降りる理由はない
🧑💼沼田「だから握り方は、資産バリュー株とはまったく別の設計になる」
🧱 握り方の設計(現値1,367円) ・少量から。主力にしない——資産の床がない銘柄でサイズを上げてはいけない ・1回目(1,390〜1,440円)の水準は、今日の下落で通過した——終値1,367円は支持帯1,363〜1,410円の下端にあたる ・つまり今日入るなら、3分割のうち1回目と2回目が同時に来ている ・残りは間隔を空けて分割する——下げるほど安全域が厚くなる銘柄ではないので、機械的なナンピンにはしない ・最後の1/3は2Qの受注確認後(11月)。ここが最初の答え合わせ ・75日線1,600円の回復が、最初のトレンド転換シグナル ・1,950円超(ブル圏)では一部利確を検討
🦞守田「買い下がりという言葉を、資産バリュー株と同じ意味で使うな。あちらは下がるほど安全域が厚くなるから、いくらでも買い下がれる。この銘柄は下がっても安全域は厚くならない。だから枚数で制御する——価格で切らないと決めた以上、最初から抱えられるサイズしか持たないということだ」
まとめ|「テーマ株としての人気は死んだが、事業は死んでいない」
🧑💼沼田「今日の五洋建設を、一枚に畳む」
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 資産バリューか | 違う。PBR1.93倍、ネット有利子負債1,953億円の純負債企業。解散価値が支えるという論法は使えない |
| では何が安いのか | 収益力と還元。高値から▲39%だが会社予想EPS128.65円は不変で、PERが17.5倍→10.6倍へ収縮しただけ |
| 堀 | 国内マリコン首位。HLV1,200億・CLV310億・SEP船数百億という参入コストが金額で判明。船を動かす人材も複製できない |
| ストック性 | 繰越工事高1兆2,701億円=売上の1.55年分。加えて国土強靭化20兆円/5年と防衛需要 |
| 還元 | 配当3.80%+自己株取得で総還元利回り5.3〜6.4%。総還元性向60%以上を中計で明示 |
| 過熱感 | 落ち着いた。8/10安値1,390.5円は2/3押し1,393円と誤差3円、出来高は日次▲34%、信用買残は発行済0.6%かつ出来高1日分未満 |
| ただし | 全移動平均線の下・下降配列は継続中。トレンド転換を待たずに拾うことになる |
| 最大のリスク | 床がないこと。BPS709円まで理論上48%の下落余地。加えて洋上風力の遅延で償却と金利だけが先行する期間が伸びうる |
| 握り方 | 少量・分割。価格では切らない。降りるのはEPS・受注残・還元のいずれかが壊れたとき |
💬 沼田より 「うちは普段、資産で守られた株しか扱わない。下がっても資産が減らないから、安心して買い下がれるからだ。五洋建設には、それがない。PBR1.93倍で、理論上の床はBPS709円——ここまで48%ある。それでも書いたのは、この下落が『業績が壊れた下落』ではなく『払ってよい倍率が変わっただけの下落』だと、数字がはっきり示しているからだ。会社予想EPS128.65円は、株価が36%下がる間、一度も動いていない。そして2月の熱は、もう抜けている。出来高は日次で34%減り、投げの主体だった575万株の日から、200万株前後まで沈んだ。2/3押しでぴたりと止まった。だから今日は、うちには珍しく『位置』の話をした。ただし床がない以上、この一枚だけは買い方が違う。価格で切る代わりに、枚数で制御する。抱えられるサイズしか持たない。そのうえで、安いこと・マリコン首位というシェア・受注残1.55年分という土台。この3つが揃っているなら、多少の含み損は抱えていられると考えている。降りるのは株価が下がったときではない。EPSが下方修正されたとき、受注残が減り続けたとき、還元が後退したときだ。——テーマ株としての人気は死んだが、事業は死んでいない。そう思って拾う」
関連:建設セクターの投げ売りに何が混ざっているか/インフラ更新と防災の需要を上流で拾う/TANAKEN(1450)解体インフラ/「良い会社」と「良い株」は違う
※本稿は投資助言ではありません。評価ランク・目標株価・下値めどは一定の前提を置いた暫定値です。株価および株価から導いた指標は2026年8月19日の株価1,367円を基準にしており、時点によって異なります。シナリオ確率は当方の主観的判断であり、統計的に推定されたものではありません。移動平均線のうち75日線・200日線は月足データからの概算です。フィボナッチ水準は自己成就的な性格を持つため、根拠としては補助的なものです。本銘柄はPBR1.93倍で資産による下値の裏づけがなく、当商会が通常紹介する資産バリュー株とはリスクの性質が異なります。投資はご自身の判断と責任でお願いします。