続報|菱友システムズ(4685)1Q決算で▲9.9%急落、その後2,620円で下げ止まり——堀は無傷、でも『会社予想は毎年上振れる』という自分の前提が崩れた。それでもランクはA−で据え置く。損出しで税金を取り戻しながら保有を続ける方法まで【自己検証・Ver.2.0】
🦞 「リスク番の守田だ。今日は、うちが紹介した銘柄が決算で急落した話をする。菱友システムズ(4685)——2026年6月に『銘柄紹介⑩』として、A−で取り上げた一枚だ。8月3日、前日比マイナス9.9%で年初来安値をつけた」
🧑💼沼田「こういう回こそ、きちんと書く。今日やるのは値動きの解説ではない。あのとき自分が置いた前提が、いま生きているか死んでいるかを、一つずつ確認する作業だ。結論を先に言えば、堀は無傷。だが我々の前提のうち2つは、はっきり崩れた」
何が起きたか|7月31日の1Q決算、8月3日に▲9.9%
🦉夜見「財務分析担当の夜見です。まず経緯を、値動きで押さえます」
| 日付 | 終値 | 前日比 |
|---|---|---|
| 7/30 | 2,883円 | +1.2% |
| 7/31(大引け後に1Q発表) | 2,881円 | ▲0.1% |
| 8/3 | 2,597円 | ▲9.9% |
| 8/3 安値 | 2,467円 | 年初来安値 |
| 8/4 | 2,543円 | ▲2.1% |
| 8/5 | 2,632円 | +3.5% |
| 8/7 | 2,623円 | ▲0.9% |
| 8/10 | 2,620円 | ▲0.1% |
🦉夜見「8月3日の出来高は203,400株。平常時の1.5〜4万株に対して5〜10倍です。年初来高値4,035円からはマイナス35%、52週高値4,415円からはマイナス41%。その後は8月5日から10日まで4営業日連続で2,620〜2,646円のレンジに収まっており、値動きとしては落ち着きました。ただし出来高は4.4万〜5.5万株と平常時(1.5〜4万株)を上回ったままで、需給の整理が終わったとは言い切れません」
🦞守田「決算の中身はこうだ」
| 2026年4〜6月(1Q) | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 98.5億円 | ▲3.0% |
| 営業利益 | 7.35億円 | ▲16.3% |
| 経常利益 | 7.81億円 | ▲13.5% |
| 純利益 | 4.67億円 | ▲24.8% |
| 営業利益率 | 7.5% | 前年同期 8.6% |
🦞 崩れた前提①|「会社予想は毎年上振れる」——これが中核だった
🦞守田「ここが今日いちばん重い話だ。紹介記事で我々が置いた前提の中核は、『この会社の予想は保守的で、毎年上振れる』というものだった。実際、2026年3月期は会社予想34億に対し実績39.1億で着地している」
🦉夜見「その前提を、1Qの進捗率が否定しました」
📊 通期経常に対する1Q進捗 ・今回(781百万/通期計画5,650百万)= 13.8% ・過去5年平均 = 15.3% ・前年1Q(903百万/5,619百万)= 16.1%
🦉夜見「『5年平均とほぼ同水準』と評する向きもありますが、1.5ポイントの下振れは小さくありません。1Q実績781百万円を過去5年平均の進捗率15.3%で割り戻すと、通期経常は約5,105百万円。会社予想5,650百万円を、約545百万円(マイナス9.6%)下回る計算になります」
🦞守田「そして会社は、それでも通期予想を据え置いた。つまり2Q以降で例年以上の巻き返しを前提にしている。上方修正どころか、下方修正リスク側に振れた——これが今回の最大の毀損だ」
🧑💼沼田「ここは自分たちの落ち度も書いておく。紹介記事のリスク欄には『会社自身が今期を横ばい〜減益と見通している。上方修正のパターン継続を過信するのは禁物』と、正しく書いてあった。それなのに同じ記事の結論では『上方修正が期待される』という真逆の前提でシナリオを組んでいた。同一記事の中で矛盾していたわけだ。1Qは、その矛盾を悲観の方向で解消した」
🦞 崩れた前提②|「賃上げは単価転嫁で相殺できる」——反証された
🦞守田「もう一つ崩れた。紹介記事では『IT人月単価のインフレは売上増に直結し、賃上げコストも転嫁でほぼ相殺できる』と書いた。1Qの営業利益率は8.6%から7.5%へ、1.1ポイント悪化している」
🦫堀田「モート担当として、ここは自己批判が要る。人月単価の引き上げには顧客との交渉が必要だが、この会社の顧客は実質的に親会社の三菱重工グループだ。親子関係にある以上、転嫁力はむしろ制約されると考えるべきだった。紹介記事で最も検証が甘かった主張だ」
🦫 だが、堀は無傷だった|減収の主因は「商材転売」
🦫堀田「悪い話ばかりではない。いちばん大事な部分——防衛・宇宙ITの準独占という堀は、毀損していない」
🦫堀田「1Qの減収の主因は、会社の説明によれば『商材販売案件の減少』。これはIBM特約店としてのハード・ソフトの転売であって、三菱重工向けのシステム開発・設計支援が減ったという開示はない。F-15改修、P-1哨戒機、H3ロケットの基幹システムを担う地位そのものは動いていない」
🦦河内「ただし、副作用として一つ見えてしまったものがあります。紹介記事では、このIBM特約店機能を『ワンストップ体制が乗り換えを困難にしている』として堀の一部にカウントしていました。1Qで分かったのは、これが堀ではなく『低採算で振れ幅の大きい付随事業』だということです」
🔍 商材転売の再評価 ・案件の有無で四半期売上が数億円単位で振れる。今回はこれが減収の主因 ・粗利率が低いため利益インパクトは限定的。実際、減収はマイナス3.0%にとどまる ・つまり本当の悪材料は減収ではなく、販管費(人件費・AI投資)によるマージン圧縮のほう ・市場が9.9%売ったのは、この2つを区別せず「減収減益」という見出しに反応した面がある
🦞守田「そこに歪みがある可能性は認める。だが『市場が間違えた』と即断するな。マージン圧縮のほうは本物だ」
🦉 訂正します|紹介記事の数値に、楽観方向の誤りがありました
🦉夜見「記録として残すべき訂正が4つあります。いずれも投資判断を覆す規模ではありませんが、方向がすべて同じでした」
| 項目 | 紹介記事の記載 | 正しい数値 |
|---|---|---|
| 26/3期 DPS | 92.5円 | 97.5円 |
| ROE(26/3期) | 「20%超」 | 18.9% |
| BPS | 約1,700円 | 1,742.54円 |
| 27/3期 会社予想EPS | 約290円(推定) | 282.0円 |
🦉夜見「個々の丸め誤差は小さいのですが、4つとも楽観方向に振れていました。強気の資料を書くと、丸め誤差が同じ方向に積み上がりやすい——これは今後の自戒として書き残します」
🦞守田「もう一つ、下値論拠に使っていた数字を格下げする」
⚠️ 「手元資金102億円=時価総額の28%」の訂正 ・紹介記事は「現金21.7億+預け金80.4億=102億円」を下値の論拠にした ・だがキャッシュフロー計算書上の現金及び現金同等物の残高は33億円(現金比率10.25%) ・差の約70億円は親会社等への預け金。CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)預け金なら実質現金だが、保証金的な性格なら自由に使えない ・「株価の28%がキャッシュ」という下値論拠は、根拠として弱い——格下げする ・ただし自己資本比率68.9%・実質無借金という財務の健全性そのものは事実
🧑💼沼田「間違えたときに、間違えた場所を具体的に書く。それをやらない記録は、後で自分の役に立たない」
🦉 それでも数字は|期待リターンは、むしろ改善している
🦉夜見「ここが今回の逆説です。前提は悪化したのに、期待リターンは改善しました」
| 指標 | 紹介時(26年6月) | 現在(8/10終値) |
|---|---|---|
| 株価 | 2,896円 | 2,620円 |
| PER(会社予想) | 10.0倍 | 9.3倍 |
| PBR | 1.7倍 | 1.50倍 |
| 配当利回り | 3.2% | 3.82% |
| 27/3期DPS | — | 100円(減益予想下でも増配) |
🦉夜見「理屈は単純です。株価の下落幅(マイナス9.5%)が、業績見通しの悪化幅(会社予想EPS 290円想定→282円、マイナス3%)を上回った。だから割安度は拡大しています。加えて減益予想下での増配(97.5円→100円)で、利回りは3.2%から3.82%へ改善しました」
🐝花岡「高配当担当から一言。配当性向は31.8%から35.5%へ上がっています。これは二通りに読めます。前向きに読めば『今期の減益は投資による一時的なもの』という経営の内部見通しの表れ。慎重に読めば、利益成長が止まった会社が性向を上げて増配を続けるという典型的な行動。28/3期にさらに性向が切り上がるなら、そのときは警戒すべきです」
🧑💼 それでもランクはA−で据え置く|「前提の毀損」と「価格の下落」を秤にかける
🧑💼沼田「ここで判定を出す。前提は2つ崩れた。それでも、評価ランクはA−で据え置く」
🦎日向「え、下げないんですか? さっきまで散々『崩れた』『訂正する』と言っていたのに……」
🧑💼沼田「いい質問だ。ここを混同する人が多い。うちのランクは『会社の良し悪し』ではなく、『いまの価格で買ったときの期待値』に付けている。だから判定には、事業の評価と価格の両方が入る」
⚖️ 秤の両側に乗っているもの ・左の皿(マイナス):「会社予想は毎年上振れる」という上振れ期待の消滅、マージン防衛力の想定が反証されたこと、下値論拠だった手元資金102億円の格下げ ・右の皿(プラス):株価が9.5%下がり、PERは10.0倍→9.3倍、PBRは1.7倍→1.50倍、利回りは3.2%→3.82%へ。配当込み期待リターンはプラス40%→プラス48%へ改善 ・そして秤の土台:防衛・宇宙ITの準独占という堀は無傷
🧑💼沼田「崩れたのは『上振れへの期待』であって、『安いこと』ではない。むしろ安さは拡大した。価格が価値より速く下がったのだから、期待値で測るランクが下がる理屈がない」
🦞守田「リスク番として、そこには条件を付ける。この据え置きは『会社予想が達成される』という前提の上に立っている。1Q進捗13.8%は、その前提に黄信号を灯した。10月31日の2Qで下方修正が出れば、期待値の計算そのものが無効になる——そのときは迷わず下げる」
🧑💼沼田「その通りだ。つまり今回のA−は『安泰だから据え置き』ではなく、『価格が前提の毀損を吸収したから据え置き』。意味がまるで違う。だから買い方は一括ではなく三分割にするし、撤退基準を先に紙へ書いておく」
🦫堀田「モート担当からも一言。ランクの土台になっているのは、F-15改修・P-1哨戒機・H3ロケットの基幹システムという地位そのものだ。1Qで減ったのはIBM商材の転売で、ここは動いていない。土台が無事なら、四半期の数字で格付けをいじる必要はない」
🐒 乱入|「下がったから買い増すって、それナンピンでしょ」
🐒レバナス小猿「ちょっと待った。紹介した銘柄が下がって、それで『期待リターンは改善しました』って……それただのナンピンの言い訳じゃん。下がったから買い増すって、いちばんやっちゃいけないやつでしょ」
🦞守田「小猿、今日もお前が正しい。だから先に線を引いておく」
🚧 ナンピンの罠を避ける唯一の線引き ・買い増しが正当化されるのは「安くなったから」ではなく「当初の想定より期待リターンが高くなったから」だけ ・平均取得単価が下がること自体には、何の価値もない ・判断すべきは「今、新規に2,620円で買うか」。既存ポジションの含み損は判断に無関係
🦦河内「そのうえで正直に言うと、この計算はすべて『27/3期の会社予想が達成される』という前提の上に乗っています。1Q進捗13.8%は、その前提に黄信号を灯しました。下方修正が出た瞬間、この記事の数字は全部無効になります」
🦎日向「あっ、小猿さんのツッコミ、いちばん大事な確認事項ですね。整理するとこうです」
✅ 小猿の茶々→買い増し前のチェックリスト ・なぜ買い増すのか? → 安くなったからではなく、期待リターンが改善したから。理由が言えないなら見送る ・含み損は考慮する? → しない。「今この値段で新規に買うか」だけで判断する ・前提は生きているか? → 会社予想の達成が全計算の前提。1Q進捗13.8%は黄信号 ・いつ判定するのか? → 10月31日の2Q決算。上期経常21.5億円が閾値
🐒小猿「……“含み損は判断に無関係”ね。それだけは、ちょっとカッコいいと思っちゃった(悔しい)」
🦞 掘り下げ|「損出し」をしながら、保有は続けられるか
🦞守田「ここから、含み損を抱えている人向けの実務の話をする。売りたくはない。でも含み損は出ている。このとき使えるのが損出しだ」
💡 損出しの仕組み ・含み損の銘柄を売却して損失を確定させる ・同じ年の譲渡益・配当金(申告分離課税)と損益通算できる ・すでに源泉徴収された税金(20.315%)が戻ってくる ・買い戻せば、保有は続けられる ・相殺しきれない損失は、確定申告すれば3年間繰り越せる
🦞守田「つまり『含み損を、その年の税金を減らす道具に変える』作業だ。ポジションを手放したくないなら、買い戻せばいい。——ただし、ここに初心者が必ず踏む地雷がある」
🚨 最大の落とし穴|同じ日に「現物で」買い戻すと、損が消える
🦉夜見「特定口座の取得単価は『総平均法に準ずる方法』で計算されます。同じ日に売却と買付があると、その日の買付を含めた平均単価で譲渡原価が計算し直されます」
⚠️ 同日に現物を売って、現物で買い戻した場合(1,000株・取得3,000円・現値2,620円の例) ・期待:売却で38万円の損失を確定 → 約7.7万円の還付 ・実際:同日買付が取得単価の計算に混ざり、確定する損失が大きく圧縮される ・手数料だけ払って、狙った損失が出ないという結果になりうる
🦞守田「対策は単純だ。売却の翌営業日以降に買い戻す。ただし、その1日が空くことで別のリスクを抱える——翌日に上がってしまえば、節税額より買い直しのコストのほうが大きくなる」
🧓 野村の本命|信用を使えば、その1日を消せる
🧓野村「レバレッジ担当の野村じゃ。いま守田が言った『翌営業日まで待つ』——実は、待たずに済む方法がある。信用取引を使えばよい」
🦎日向「え、信用でも同じ日に買い戻したら平均単価に混ざるんじゃ……」
🧓野村「そこが肝じゃ。混ざらん。総平均法で平均されるのは『現物どうし』だけで、信用の買建玉は現物の取得価額の計算に入らん。だから同じ日に現物を売って、同じ日に信用で買い建てても、確定した損失は圧縮されん」
🔁 信用クロスの手順 ・① 同日:現物を売却——損失が満額で確定する ・② 同日:同株数を信用で買い建てる——ポジションは維持され、価格変動リスクを負わない ・③ 翌営業日以降:現引きする——建値がそのまま新しい取得価額になる
🦞守田「ただし、ここに一つだけ絶対の禁止事項がある。③の現引きを、売却と同じ日にやってはいけない。現引きで取得した株式は『現引きした日に取得したもの』として扱われるため、同日にやれば結局その日の平均単価に混ざる。翌営業日以降——ここだけは動かせない」
🧓野村「そういうことじゃ。『信用で買い建てるのは同日でよい。現引きだけは翌日以降』——覚えるのはこの一行だけでよい」
🦉 コストを計算し直す|信用クロスなら、滑り分が消える
🦉夜見「この違いは、損得計算をかなり変えます。取得単価3,000円で1,000株を保有し、2,620円で損出しする場合で並べます」
| ① 翌営業日に買い戻す | ② 信用クロス(現引きは翌日) | |
|---|---|---|
| 確定する損失 | 38万円 | 38万円 |
| 節税額(20.315%) | 約7.7万円 | 約7.7万円 |
| 1日分の価格変動リスク | 負う | 負わない |
| 想定コスト | 滑り1〜2%=2.6〜5.2万円 | 買方金利1〜2日分+手数料 |
| 手残り | 2.5〜5万円 | 7万円前後 |
🦉夜見「②の買方金利を具体的に置くと、建玉262万円に年3%を仮定して1泊2日なら約430円。ネット証券では信用の売買手数料も現引き手数料も無料のところが多く、実務上のコストは1,000円に届きません。節税額7.7万円に対して、ほぼ丸ごと残る計算になります」
🦞守田「ここは私の見立てを訂正しておく。『節税額の3〜7割が執行コストで消える』というのは、①翌日買い戻し方式の話だ。②の信用クロスを使えば、その最大のコストである『1日の価格変動リスク』そのものが消える」
🦞 それでも残る、菱友固有の壁
🦞守田「ただし、信用クロスにしても消えないコストがある。板の薄さだ」
📉 薄商いが生む「見えないコスト」 ・平常時の出来高は1.5〜4万株。急落後の8月10日でも51,800株で、売買代金は1.4億円程度 ・8月10日の値幅は始値2,606円・高値2,623円・安値2,588円の35円(約1.3%) ・同時執行でも、まとまった株数なら自分の売りで下げたところを自分で買うことになる——往復のスプレッドとマーケットインパクトは避けられない ・ただしこれは「往復で1回」のコスト。翌日に持ち越す2%の値動きリスクとは、質も大きさも違う ・菱友は制度信用の対象なので買建自体は可能。ただし一般信用の取扱いは証券会社ごとに異なる
🧓野村「もう一つ選択肢を置いておこう。現引きせず、信用の買建玉のまま持ち続ける手もある。この場合は現物の平均単価問題とは完全に無縁じゃ。ただし制度信用は6か月の期限があり、買方金利は持つ限りかかり続ける。議決権もない。配当は配当落調整金として受け取る形になり、税務上は譲渡損益の扱いになる——これはこれで損益通算に使える性質じゃがな」
🦞 損出しが「やる価値あり」になる条件
🦞守田「条件を明確にしておく。この4つが全部そろって初めて、実行に値する」
✅ 損出しの実行条件 ・① 今年、相殺できる利益が実際にある——譲渡益も配当もゼロなら、その年の還付はない(繰越目的なら別) ・② 節税額が執行コストを明確に上回る——信用クロスなら金利数百円で済むが、薄商い銘柄では往復のスプレッドが残る ・③ 特定口座(源泉徴収あり)で保有している——NISA口座の損失は損益通算できない。損出しは無意味 ・④ 買い戻せなくても困らない量に限る——全量でやらず、一部だけにする
🦩優田「もう一つ、カレンダーの注意を。菱友は3月期決算で、中間配当の権利確定は9月末です。損出しでこの日を跨いで手放すと、中間配当を取り逃します」
🦞守田「年末の期限も間違えるな。年内の損益に算入するには受渡日ベースで考える必要があり、実務上の締切は12月最終営業日の2営業日前だ。そして12月に入ると、同じことを考える投資家の『損出し売り』が需給を悪化させる。薄商いの銘柄ほど、11月〜12月上旬に前倒しするほうが有利になりやすい」
🧑💼 実例|損出しは「守り」ではなく、攻めの道具になる
🧑💼沼田「ここからが、今年のうちの実感だ。損出しは、利益が厚い年ほど効く。そして今年は、まさにその年だ」
🦉夜見「整理しますと、損出しの相殺先は2つあります。①その年に実現した譲渡益 ②配当金(申告分離課税)。特定口座(源泉徴収あり)で配当を受け入れる設定にしていれば、損失を確定した時点で、すでに徴収済みの税金が自動的に口座へ戻ってきます。確定申告は不要です」
🧑💼沼田「そこで発想を逆にする。『損が出たから仕方なく損出しする』のではない。『損出しで枠を作ったから、利益のほうを動かせる』——こちらが本題だ」
🎯 損出しで作った枠の、3つの使い道 ・① 目標株価に近づいた銘柄のスライス利確——本来なら20.315%引かれる利益を、損失と相殺して実質無税で確定できる ・② 上がりすぎて比率が膨らんだ銘柄の縮小——「税金がもったいない」という理由でリバランスを先送りしていたポジションを、コストなしで整理できる ・③ 信用で安く仕込めた銘柄の現引き——建玉を現物へ移して長期保有に切り替える。金利負担が消え、配当も配当所得として受け取れるようになる
🐝花岡「高配当担当から②を補足します。上がりすぎた銘柄を持ち続けるのは、実は『税金を払いたくないから』という理由であることが多い。損出しの枠があれば、その心理的な足かせが外れます。含み益が厚い年ほど、この効果は大きくなる」
🧓野村「③についてはわしから。現引きそのものは譲渡ではないから、課税は発生せん。だが信用のまま持っていると配当は『配当落調整金』として入り、これは税務上の譲渡損益扱いになる——つまり損出しの損失と、そのまま相殺できる。信用を使って長く持つ人にとって、損出しは毎年の恒例行事になりうるということじゃ」
🐝 そして菱友のような一枚こそ、取得単価を下げる好機
🐝花岡「今回の菱友のように、長く持つつもりの銘柄が一時的な決算で下げたとき——ここが取得単価を付け替える絶好の場面です」
📈 取得単価を下げると、簿価利回りが上がる(1,000株・配当100円の例) ・損出し前:取得3,000円 → 簿価ベースの配当利回りは 3.33% ・損出し後:取得2,620円へ付け替え → 簿価ベースの配当利回りは 3.82% ・受け取る配当は同じ100円。それでも「自分の簿価に対する利回り」は0.49ポイント上がる ・将来この会社が増配すれば、下がった簿価に対して効きはさらに大きくなる
🦞守田「ここは正確に言っておく。取得単価を下げても、受け取る現金は1円も増えない。増えるのは『今年戻ってくる税金』であって、代わりに将来売却したときの譲渡益は取得単価が下がったぶんだけ増える。厳密には節税というより、税の繰り延べに近い」
🧑💼沼田「その通りだ。だが『長く持つ銘柄』でやる場合、その繰り延べは実質的にかなり有利になる」
⚖️ 繰り延べが「実質的な得」になる理由 ・還付された税金は、今すぐ再投資できる——その分だけ複利が早く回る ・売らなければ、繰り延べた税は永久に払わずに済む——「長く持てる銘柄」でやる意味はここにある ・損失の繰越控除は3年で切れる。利益が厚い年に使い切るほうが、確実に価値になる ・逆に「いずれ売る予定の銘柄」でやると、繰り延べ効果は小さい
🦞守田「最後にもう一度、順序の話に戻す。①のスライス利確は、『目標株価に近づいた』という投資判断が先にあって初めて成立する。『損出しの枠が余っているから、まだ上がる株を売る』——これは本末転倒だ。枠は理由にならない。理由はいつも、価格と価値の関係のほうにある」
🧑💼 最後に、順序を間違えないこと
🧑💼沼田「ここは強調しておく。損出しと買い増しは、まったく別の軸の話だ」
🧭 混ぜてはいけない2つの判断 ・損出し=税務上のテクニック。「この銘柄を持ち続けるか」とは無関係に、今年の税金の話 ・買い増し=投資判断。「今、新規にこの値段で買うか」だけで決める ・『損出しのついでに買い増そう』は、税務の都合で投資判断を歪めている ・正しい順序は「持ち続ける価値があると判断した。ならば損出しで税金を取り戻しておく」
🧑💼沼田「今日の結論に照らせば、菱友は『堀は無傷、前提は2つ崩れたが価格がそれを吸収した、ランクはA−据え置き、売却はしない』だ。その判断が先にあるから、損出しという手段が意味を持つ。順序が逆になった瞬間、税金のために不本意なポジションを持たされることになる」
買い方|三分割、判定日は10月31日
🧑💼沼田「以上を踏まえて、行動を決める」
🧱 三分割の設計 ・第1弾:現水準 2,600〜2,700円で1/3(8月10日終値2,620円はこのレンジ内。PER9.3倍・利回り3.82%) ・第2弾:10月31日の2Q決算後に1/3——ただし上期経常が21.5億円以上(通期進捗38%以上)で着地し、通期予想が据え置かれた場合のみ。下回れば見送り ・第3弾:2,400円以下の押し目で1/3——下方修正を伴わない需給要因の下落であれば実行。下方修正が原因なら実行せず、撤退基準の判定へ ・日次出来高1.5〜7万株の薄商い。指値・複数日に分けた執行が必須
🦞守田「なぜ分割か。1四半期の数字だけでは『投資フェーズの一時的コスト』か『構造的なマージン低下』かを判別できないからだ。判別材料が出るのは10月31日。一方で『完全に確認してから買う』と、確認できた頃には株価は戻っている。この不確実性を分割で引き受ける」
📅 10月31日の2Q決算で確認する5項目
- 上期経常が21.5億円を超えたか(最重要。前年上期は22.6億/進捗40.3%)
- 2Q単独の営業利益率が12%以上に戻ったか(最重要。前年2Q単独は13.5%。戻らなければ構造的マージン低下の証拠)
- 通期予想が据え置かれたか、下方修正されたか
- 実効税率が正常化したか(1Qは40.2%。法定実効税率は約30〜31%で、大部分は期ズレか一過性の可能性が高い)
- 商材販売以外(SI・設計支援)の売上動向——コアが減っていれば堀の毀損を疑う
🚪 撤退基準|紹介記事に欠けていたもの
🦞守田「紹介記事には、リスクの一覧はあったが『何が起きたら降りるか』という行動基準がなかった。今日、それを埋める」
| 撤退トリガー | 重み | 理由 |
|---|---|---|
| ① 通期業績予想の下方修正 | 即時見直し | 会社予想の達成が全計算の前提。崩れたらゼロベースで再計算 |
| ② 通期営業利益率が10%を下回る | 高 | 26/3期12.7%→27/3期会予12.1%。10%割れは「高収益SIer」の根拠が消える |
| ③ 商材以外(コアSI)の売上減少 | 高 | 三菱重工の発注そのものの減少=堀の毀損。テーゼが完全に崩壊する |
| ④ 減配または増配の停止 | 中 | 連続増配が途切れる=経営が自ら「回復の目処が立たない」と認めたに等しい |
| ⑤ 上場維持基準への「適合」表明 | 中(逆説的) | 流通株式比率が基準を満たせばTOB期待の論拠が消滅する |
| ⑥ 三菱重工の防衛部門の失速 | 低(現状) | 売上の大半を1社に依存する構造上の最大リスク |
🦞守田「含み損を抱えた状態では、どんな悪材料も『もう織り込み済み』『一時的』と解釈したくなる。判断が歪む前に、基準を書いておく。それが唯一の対策だ」
まとめ|ランクはA−据え置き。堀は無傷、前提は要修正、価格がそれを吸収した
🧑💼沼田「今日の再検証を、一枚に畳む」
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 堀(防衛・宇宙IT準独占) | 無傷。減収の主因はIBM商材の転売で、三菱重工向けの開発・設計支援が減ったという開示はない |
| 崩れた前提① | 「会社予想は毎年上振れる」——1Q進捗13.8%(5年平均15.3%)が否定。紹介記事の中核ロジックだった |
| 崩れた前提② | 「賃上げは単価転嫁で相殺できる」——営業利益率8.6%→7.5%が反証。親子関係ゆえ転嫁力はむしろ制約される |
| 訂正 | DPS 92.5→97.5円、ROE「20%超」→18.9%、BPS約1,700→1,742.54円、会予EPS 290→282円。すべて楽観方向の誤りだった |
| 下値論拠の格下げ | 「手元資金102億=時価総額の28%」はCF計算書上33億。預け金の性格が不明で、下値論拠としては弱い |
| バリュエーション | PER9.3倍・PBR1.50倍・利回り3.82%。株価の下落幅が業績悪化幅を上回り、期待リターンはプラス40%→プラス48%へ改善 |
| ランク判定 | A− 据え置き——前提の毀損を、株価9.5%の下落が吸収したため。ただし10/31で下方修正が出れば引き下げる |
| 行動 | 三分割。第2弾は10/31の2Qで上期経常21.5億円を確認できたら。撤退基準を6項目、事前に定義済み |
| 損出し | 保有継続と両立できる。信用の買建玉は現物の平均単価に混ざらないため、同日に現物売り+信用買建でクロスすれば1日分の価格変動リスクを負わずに損失を確定できる。ただし現引きは必ず翌営業日以降。NISAでは無意味 |
| 損出しの使い道 | 利益が厚い年ほど効く。作った枠でスライス利確・比率縮小・信用建玉の現引きを実質無税で進められる。長く持つ銘柄なら取得単価の付け替えで簿価利回りが3.33%→3.82%へ。ただし枠は売る理由にならない |
💬 守田より 「紹介した銘柄が下がったとき、書き手には二つの誘惑がある。一つは黙ってやり過ごすこと。もう一つは『市場が間違えている』と言い切ってしまうことだ。——今日はどちらもやらなかった。堀は無傷だと確認できた。同時に、我々が置いた6つの前提のうち2つが明確に崩れたことも認めた。数値の丸め方が楽観に偏っていたことも、下値論拠の一つが弱かったことも書いた。そのうえで、ランクはA−で据え置いた。前提が崩れたのに格下げしないのは矛盾に見えるかもしれないが、これは矛盾ではない。我々のランクは会社の良し悪しではなく、いまの価格で買ったときの期待値に付いている。価格が価値より速く下がれば、悪いニュースの後でも妙味は増す。ただし——それは会社予想が達成されるという前提の上にある。だから一括では買わず、10月31日を判定日に置いた。そして『何が起きたら降りるか』を、含み損で目が曇る前に書いておいた。投資記録というのは、当たった話より、こういう回のほうが後で効いてくる」
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※本稿は投資助言ではありません。株価および株価から導いた指標は2026年8月10日終値2,620円を基準に算出しています。損出しに関する記述は一般的な制度の説明であり、税務上の取扱いは口座区分や個別事情によって異なります。実行にあたっては必ずご自身で証券会社・税務署等にご確認ください。業績数値は2026年7月31日開示の第1四半期決算短信および2026年4月28日開示の決算短信によります。1Qの実効税率40.2%の要因、および親会社等への預け金の性格については本稿で確定できておらず、推定を含みます。シナリオ確率および期待値は一定の仮定に基づく主観的な推定であり、実現を保証するものではありません。投資はご自身の判断と責任でお願いします。