銘柄紹介|昭和化学工業(4990)— 上方修正でも売られた。配当性向14.5%という『渋さ』は、なぜ長期保有者にとってプラスなのか。BPSは2年3か月で+31.8%、株価は横ばい。金融資産だけで1株615円、株価496円の国産珪藻土ニッチトップ【資産バリュー×社内複利】
🦦 「割安発掘担当の河内です。今日の一枚は昭和化学工業(4990)。昨日、8月14日に決算が出たばかりの、いちばん鮮度の高い一枚です。中身は良かった。それなのに株価は、マイナスで終わりました」
🧑💼沼田「今日はそのねじれから入る。上方修正が出た日に、高値から6.6%も押し戻されて終わった。なぜ売られたのか——そして、その売られた理由こそが、長く持つ人間にとっては買う理由になりうる。今日はその話をする」
🦉 昨日の決算|上方修正、しかも「非開示」が開いた
🦉夜見「財務分析担当の夜見です。まず事実から並べます」
| 27/3期 通期予想 | 期初(5/15) | 修正後(8/14) |
|---|---|---|
| 売上高 | 94.0億円 | 95.0億円 |
| 営業利益 | 2.00億円 | 3.20億円(+60%) |
| 経常利益 | 非開示 | 5.90億円 |
| 純利益 | 非開示 | 4.40億円(EPS41.3円) |
| 配当 | 6円 | 6円(据え置き) |
🦉夜見「ポイントは2つあります。ひとつは営業利益の60%上方修正で、前期比の減益率がマイナス55.2%からマイナス28.3%へ半減したこと。もうひとつは、持分法適用のオーベクスが読めないことを理由に非開示だった経常利益と純利益が、3か月で開示に切り替わったことです」
🦦河内「後者は地味ですが、私は評価しています。中期経営計画で『透明性の高い経営』を掲げた直後に、実際に開示範囲を広げてきた。小さな一歩ですが、方向は合っています」
🦉夜見「1Qそのものも、悪くありません」
| 1Q(2026年4〜6月) | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 25.37億円 | +1.6%(四半期の過去最高) |
| 営業利益 | 1.60億円 | +8.8% |
| 経常利益 | 2.35億円 | ▲1.3% |
| 純利益 | 1.49億円 | ▲10.2% |
| 営業利益率 | 6.31% | 前年同期 5.89% |
🦫堀田「モート担当だが、ここは私が拾っておく。売上プラス1.6%に対して営業利益プラス8.8%だ。増収率を大きく上回る増益=マージンが改善している。この会社が『価格決定力を行使していない』というのが従来の批判だったが、1Qはその批判に対する反証になっている」
🦉 会社計画は、まだかなり保守的
🦉夜見「そして、上方修正後の計画にも、まだ余裕が残っています」
📊 上期・下期の分解 ・上期予想 営業2.50億円に対し、1Q実績は1.60億円=進捗64.0%(前年同期は53.3%) ・つまり2Qは0.90億円あれば上期計画に届く。前年2Q単独は1.29億円だった ・前年比マイナス30%でも計画達成という、かなり低いハードル ・さらに通期3.20億円マイナス上期2.50億円=下期はわずか0.70億円しか見込んでいない ・前年下期は1.70億円。その41%しか置いていない
🦉夜見「1Qのペースが続けば、上方修正した3.20億円すら、再び上振れる可能性があります。会社は上方修正してもなお、守りの数字を置いている」
🦞守田「リスク番から釘を刺す。下期を薄く置いているのは、単に保守的だからとは限らない。下期にコスト要因を見込んでいる可能性も同じだけある。『保守的だから上振れる』は、我々が過去に菱友システムズで一度殴られた前提だ——期待はしても、前提には置かない」
🦉 それでも異常値|金融資産だけで1株615円、株価は496円
🦉夜見「バランスシートに移ります。ここは決算を受けて、さらに極端になりました」
💰 株価496円に対して、会社が持っているもの(2026年6月末) ・1株純資産(BPS)940.65円(3月末881.42円 → 3か月で+59.23円) ・自己資本 100.18億円/自己資本比率 64.0%/有利子負債倍率 0.21倍 ・投資有価証券は推定56.8億円——時価総額52.8億円の107.5% ・現預金29.7億円を加え有利子負債21.0億円を引いた純金融資産は推定65.5億円=1株615円 ・PBRは0.53倍(3月末時点の0.56倍から、さらに低下)
🦦河内「資産アプローチを4段階で並べます」
| 評価手法 | 1株価値 | 株価/価値 | 意味 |
|---|---|---|---|
| ① 純資産(BPS・開示値) | 940.65円 | 53% | 会計上の解散価値 |
| ② 修正NCAV(流動資産+投有−総負債・推定) | 約630円 | 79% | 固定資産をゼロ評価しても株価を大きく上回る |
| ③ 純金融資産(現預金+投有−有利子負債・推定) | 約615円 | 81% | 換金性資産だけで株価の1.24倍 |
| ④ ③から含み益への課税を控除(推定) | 約521円 | 95% | 税金を払ってもなお株価を上回る |
🦉夜見「ここが今回いちばん大きな変化です。完全版レポートを書いた8月上旬時点では、株価492円が④の税引後純金融資産485円を、わずかに上回っていました。いまは逆転しています。株価496円に対し、税金を払った後の金融資産だけで521円。差の25円ぶん、安全域が広がりました」
🦞守田「ただし正確に言え。②③④は推定値だ。1Q時点の現預金と投資有価証券の実額は開示されていないため、3月末の現預金29.7億円を据え置き、自己資本の増加分から有価証券の時価上昇を逆算している。①のBPS940.65円だけが開示値だ」
🦞守田「もう一点。『ネットネット株』と呼ぶのは正確ではない。投資有価証券を除いた純粋なNCAVは1株119円しかない。この銘柄の安さは、事業資産ではなく“株のポートフォリオ”に支えられている——後で効いてくる」
🦫 モート|1933年からの国産鉱床と、ビール工場の「変えられない」レシピ
🦫堀田「この会社の堀は、正直かなり深い」
🦫堀田「主力の濾過助剤(売上の61.7%)は、珪藻土とパーライトを焼成した粉末だ。用途はビール、清涼飲料、甘味料、調味料、抗生物質、油脂——製造工程で液体から不純物を濾し取るための消耗品。1933年創業で、秋田・栃木・岡山・大分・山形に自社鉱床と5工場を持つ」
⛏️ 堀の内訳 ・国産鉱床の独占的保有:珪藻土・黒曜石は採掘権と鉱床の質が参入障壁そのもの。新規参入者が同等の国産原料を確保する現実的な手段がない ・切替コストとレシピ固定:ビールや製薬の濾過工程は製品品質に直結するため、助剤の変更は工程の再バリデーションを伴う。単価に対して切替リスクが不釣り合いに大きい ・供給安定性:世界の珪藻土はImerysなど海外勢が主導。国内ユーザーにとって「国産・国内5工場」はBCP上の価値を持つ
🦫堀田「消耗品で、工程に組み込まれていて、代替が難しい。そして、単価が製品原価に占める比率は小さい。この3つが揃っている会社は、値上げが通りやすい——1Qのマージン改善は、偶然ではないと見ている」
🦞 だが、堀の中の城は小さい|モートが利益に変換されてこなかった
🦞守田「そこで止めるな。これだけの参入障壁がありながら、この会社の売上は5期連続で92億円前後の横ばいだ」
| 期 | 売上高 | 経常利益 | 純利益 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|---|
| 2022/3 | 77.8億 | 4.79億 | 3.45億 | 48.5% |
| 2023/3 | 92.3億 | 8.35億 | 6.16億 | 51.8% |
| 2024/3 | 92.0億 | 7.19億 | 5.84億 | 56.2% |
| 2025/3 | 92.4億 | 5.71億 | 4.11億 | 59.5% |
| 2026/3 | 92.7億 | 8.01億 | 6.25億 | 64.4% |
| 27/3期 予想 | 95.0億 | 5.90億 | 4.40億 | 64.0%(6月末) |
🦉夜見「利益の質にも触れておきます。26/3期の経常利益8.01億円のうち、本業の営業利益は4.46億円で55.7%にすぎません。残りは持分法投資利益1.63億円、受取手数料0.89億円、受取配当金0.70億円、固定資産賃貸料0.57億円——経常利益の44%が営業外項目です」
🦦河内「そして上の表でいちばん重要なのは、いちばん右の列です。自己資本比率が48.5%から64.4%へ、一貫して上がり続けている。これは『稼いだ利益が株主に還らず、社内に積まれ続けている』ということです」
🦦河内「従来、これはPBR0.53倍の“原因”として批判されてきました。今日は、そこにもう一つ別の光を当てます」
🧑💼 本題|「還元が渋い」は、本当にマイナスなのか
🧑💼沼田「昨日の値動きが、この論点そのものだった」
| 8/14の値動き | |
|---|---|
| 始値 | 507円 |
| 高値 | 531円(+6.4%) |
| 安値 | 493円 |
| 終値 | 496円(▲0.60%) |
| 出来高 | 87,100株(平常時は300〜5,600株) |
🧑💼沼田「平常の15倍から290倍の出来高が入り、高値から6.6%押し戻されて終わった。上方修正は評価された。だが買いが続かなかった」
🐝花岡「高配当担当として、理由ははっきり言えます。上方修正したのに、配当を6円で据え置いたからです」
💢 配当据え置きが意味すること ・EPSが41.3円と開示された結果、配当性向は14.5%と判明 ・中期経営計画が掲げる「当面15%以上」を、自ら下回っている ・利益見通しが上がったのに配当を動かさなかったため、性向はむしろ下がった ・配当利回りは1.21%。前期の10円から6円への減配も、そのまま
🐝花岡「正直に言えば、私はこの会社の還元姿勢を評価していません。私の担当領域から見れば、利回り1.21%で減配、性向は自社目標割れ。買う理由がない」
🧑💼沼田「花岡の言うことは、短期の買い手の立場では完全に正しい。だが、ここから先は時間軸の話になる」
🧑💼沼田「配当を出さない会社に長く乗るということは、『会社に代わりに運用してもらう』ということだ。そして日本の税制では、その代理運用には、決定的な利点がある」
🧮 同じEPS41.3円を、どう受け取るか
全額配当(性向100%) 実際(性向14.5%) 1株利益 41.3円 41.3円 株主が受け取る現金 41.3円 6.0円 課税(20.315%) ▲8.39円 ▲1.22円 手取り現金 32.91円 4.78円 社内に残る(課税されない) 0円 35.30円 1株あたり価値の合計 32.91円 40.08円
🧑💼沼田「差は1株あたり年7.17円、率にして21.8%。会社が優秀だから生まれた差ではない。単に、国税庁への支払いを繰り延べているから生まれる差だ」
🦦河内「この論点は、この銘柄だけの話ではありません。当商会が紹介した銘柄を配当性向で並べ直すと、同じ構造がいくつも出てきます——配当性向が低い会社は、いま静かに得をしているで6社を実測比較しました。日本ギア工業は配当性向8.1%で、1株純資産を年率14.1%で伸ばしています」
🦉夜見「補足すると、これは厳密には『非課税』ではなく『繰り延べ』です。最終的に売却するとき、譲渡益として20.315%が課税されます。ただし——繰り延べている間、本来なら税として抜かれていたはずの金額も、会社の中で働き続けます。これが複利の正体です」
🦉 実測|BPSは2年3か月で+31.8%、株価は横ばい
🦉夜見「理屈だけでは足りないので、実測値を出します」
| 時点 | 1株純資産(BPS) | 起点比 |
|---|---|---|
| 2024年3月末 | 713.48円 | — |
| 2025年3月末 | 762.37円 | +6.9% |
| 2026年3月末 | 881.42円 | +23.5% |
| 2026年6月末 | 940.65円 | +31.8% |
🦉夜見「2年3か月で31.8%、年率換算で13.1%です。同じ期間、株価はほぼ横ばいでした。配当利回り1.21%しか受け取っていないのに、1株あたりの純資産は年率13%で増えている——受け取っていないぶんが、消えずに残っているということです」
🦦河内「これが意味することは、はっきりしています。株価が1円も動かなくても、PBRは自動的に下がり続ける。496円÷940.65円=0.53倍。BPSが年13%伸びれば、1年後に同じ株価ならPBRは0.47倍です」
🦦河内「つまり、この銘柄で『待つコスト』はマイナスです。待てば待つほど、同じ株価が相対的に安くなっていく」
🦞 ただし条件がある|「複利のエンジンは何か」を間違えるな
🦞守田「ここで気持ちよくなる前に、必ず潰しておくべき論点がある」
🦞守田「内部留保が複利になるのは、留保した資本が高いリターンで再投資される場合だけだ。コモディティ企業が利益を貯め込んでも、それは複利ではなく単なる価値の停滞になる」
🦉夜見「そこで、1QのBPS増加59.23円を分解します。剰余金と自己資本の開示値から、正確に割り出せます」
🔬 BPS +59.23円の内訳(2026年4〜6月) ・内部留保由来:純利益14.0円 − 期末配当7.0円 = +7.04円 ・有価証券評価差額金由来:+52.2円(税引後556百万円、税前では約8.0億円の含み益増) ・検算:剰余金は6,550→6,625百万円で+75百万円。純利益149百万マイナス配当74.6百万=74.4百万と一致
🦞守田「見ての通りだ。BPSを伸ばした主力は、本業ではなく保有株の値上がりだった。いまこの会社の複利のエンジンは、珪藻土ではなく銀行株だ」
🦞守田「これは笑い話ではない。この銘柄を持つことは、間接的に日本株インデックスを持つことに近い。分散したつもりで、していない。投資有価証券は推定56.8億円で、時価総額の107.5%に達している」
🧑💼沼田「守田の指摘は正しい。そのうえで、私の見立てを言う」
🧑💼沼田「『渋い還元は長期保有者に効く』という理屈は、それ自体は正しい。ただし効き方は、留保資本の行き先で決まる」
| 留保資本の行き先 | 長期保有者への効き方 |
|---|---|
| 高ROICの本業に再投資 | 最も強い。無税の複利がそのまま企業価値になる |
| 自社株買い(PBR0.53倍で) | 極めて強い。1円の留保が1.9円のBPSを買える |
| 政策保有株の積み上げ | 中立。日本株ベータを買っているだけで、αではない |
| 現預金の死蔵 | 弱い。インフレぶん実質目減りする |
🧑💼沼田「昭和化学工業は、いま3番目にいる。そして中期経営計画は、そこから1番目と2番目へ移ると宣言した。政策保有株の縮減、自己資本比率64.4%から50%以上へ——ここが分岐点だ」
🦫 「ニッチトップ×価格転嫁」だからこそ、渋さが効く
🦫堀田「沼田の表の1行目について、モート担当として補強しておく」
🦫堀田「留保した資本を本業に投じたときのリターンは、その事業の競争構造で決まる。価格競争にさらされている会社が設備を増やせば、増えた供給が自分の値段を壊す。留保すればするほど価値が減る、という会社は実際に存在する」
🏔️ 昭和化学工業で、留保資本の再投資が効く理由 ・国産鉱床は増やせない——供給を増やしても、参入者が追随できない ・顧客の切替コストが高い——ビール・製薬の工程は再バリデーションを伴う ・製品原価に占める比率が小さい——値上げが顧客の意思決定を変えにくい ・その結果、1Qは売上+1.6%に対し営業+8.8%。営業利益率5.89%→6.31%
🦫堀田「この4行目が、今回の決算でいちばん静かに重要な数字だ。『価格決定力を行使していない』という長年の批判に対して、初めて数字で反証が出た」
🦫堀田「言い換えると、この会社が留保した資本は、価値を壊さない場所に置かれている。だから『渋い還元+ニッチトップ+価格転嫁力』という組み合わせは、長期保有者にとって理屈のうえで有利だ」
🦞守田「『理屈のうえで』な。実際に本業へ投じた実績は、まだ乏しい。EBITDA7.2億→9.0億という中計目標が、その最初の検証になる」
🦩 待つ間、何をもらえるのか|配当1.21%の裏に、その倍の優待がある
🦩優田「優待担当の優田です。ここまで配当の話ばかりでしたが、この銘柄には見落とされやすい柱がもう一本あります」
🎁 昭和化学工業の株主優待(すべて1,000株以上) ・3月権利:グループ事業所 所在地域の特産品 2,500〜3,000円相当(発送は6月下旬) ・9月権利:あきたこまち(新米)——1年未満2kg/1年以上4kg/2年以上6kg ・年2回もらえる。そして2年持つと、米が3倍になる ・権利付最終日(9月分)は2026年9月28日
🦩優田「先に注意を一つ。株探などに出ている『優待利回り0.50%』は、この米を除外した数字です。長期保有優遇の付いた優待は換算対象外、というサイト側のルールによるものです。実際の姿は、もっと厚い」
🦉夜見「計算します。1,000株=496,000円、特産品を2,750円、米を800円/kgと置いた場合です」
| 保有期間 | 配当 | 優待 | 総合利回り |
|---|---|---|---|
| 1年未満(米2kg) | 6,000円 | 4,350円 | 2.09% |
| 1年以上(米4kg) | 6,000円 | 5,950円 | 2.41% |
| 2年以上(米6kg) | 6,000円 | 7,550円 | 2.73% |
🦉夜見「米価を600〜1,000円/kgで振っても、2年以上なら2.49〜2.97%のレンジに収まります。配当利回り1.21%という表示とは、まったく別の景色です」
🦩優田「そして、ここが今日いちばん面白い事実です。1,000株の保有者にとって、還元の主役は配当(6,000円)ではなく優待(7,550円)のほう」
🐝花岡「……高配当担当として、そこは認めざるを得ませんね。私はさっき『インカムで持つ株ではない』と言いましたが、正確には『配当で持つ株ではない』でした」
🦩 ただし、買い下がりとは素直に両立しない
🦞守田「リスク番から、ここに構造的な問題を置く。この優待には、区分が『1,000株以上』の一段しかない。上位区分が存在しない」
🦉夜見「つまり株数を増やしても、優待は1円も増えません。買い下がりで取得単価が下がる効果を、優待の希薄化が上回ります」
| 保有株数 | 平均取得単価 | 投資額 | 配当 | 優待 | 総合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1,000株 | 496円 | 49.6万円 | 1.21% | 1.52% | 2.73% |
| 1,500株 | 480円 | 72.0万円 | 1.25% | 1.05% | 2.30% |
| 2,000株 | 468円 | 93.6万円 | 1.28% | 0.81% | 2.09% |
| 3,000株 | 460円 | 138.0万円 | 1.30% | 0.55% | 1.85% |
🦩優田「なので、設計はこうなります。単元は100株なので、買い下がりの終着点を1,000株に置く」
🧩 買い下がりで1,000株を作る(3分割の例) ・400株 @496円(現値でまず入場券の4割) ・300株 @465円(押し目) ・300株 @435円(PBR0.46倍圏) ・合計 1,000株/投資額468,400円/平均取得単価468.4円 ・総合利回りは1年未満2.21% → 1年以上2.55% → 2年以上2.89%
🦞守田「1,000株を超える分は、優待の付かない純粋な資産バリュー枠だ。混ぜて考えるな。別勘定にしろ」
🦩優田「実務上の注意も2つ置きます」
⚠️ 優待で失敗しないための2点 ・継続保有の判定基準は要確認。3月と9月の年2回確定のため、「連続何回の記載で1年とみなすか」は会社ごとに定義が違う ・一般的な設計では、一度でも1,000株を割ると継続保有がリセットされる。買い下がりの途中で売却を挟まないほうが安全
🧑💼 優待は、この記事のテーゼと同じ形をしている
🧑💼沼田「優田の話は、今日の主題と綺麗に繋がる。二つの意味でだ」
🧑💼沼田「ひとつは、税だ。優待は配当と違って源泉徴収されない(雑所得。給与所得者なら他の所得と合わせて年20万円以下は申告不要となるケースが多い)」
| 1,000株・2年以上保有の場合 | 手取り | 対投資額 |
|---|---|---|
| 現状(配当6,000+優待7,550) | 12,331円 | 2.49% |
| 仮に同額13,550円を全額配当で受け取ると | 10,797円 | 2.18% |
🧑💼沼田「手取りで0.31ポイント、優待のほうが有利になる。これは先ほど見た『配らないほうが税効率が良い』という構造と、まったく同じ形だ。この会社は還元が渋いのではなく、税で抜かれにくい形に寄っている——意図してそうしているかは分からないが、結果としてそうなっている」
🧑💼沼田「もうひとつは、時間だ。この銘柄の最大のリスクは『安いまま5〜10年』という時間の浪費だった。ところが、その時間に対して報酬が2つ用意されている」
⏳ 待つほど有利になる二重構造 ・BPSが年率13.1%で伸びる → 株価が動かなくてもPBRが下がっていく ・米が2kg→4kg→6kgへ育つ → 保有期間そのものが利回りを押し上げる ・つまりこの銘柄では、時間はコストではなく、二方向から効く味方になる
🦞守田「ただし勘違いするな。時間が味方になるのと、リターンが出るのは別の話だ。総合利回り2.7%は『待てる理由』ではあっても『買う理由』ではない。買う理由は、あくまで資産と価格の差のほうだ」
🐊 なぜ安いのか|石橋家43.9%+自己株11.1%=外圧が構造的に効かない
🐊待伏「イベント担当の待伏です。私の出番なのに、今日は残念な報告をします」
🔒 触媒がほぼ効かない支配構造 ・シグマ 18.2% + 石橋健藏社長 13.3% + 石橋奨学会 9.4% + 石橋敬子 3.0% = 石橋家系 43.9% ・加えて自己株式 11.1% ・アクティビストの介入も、同意なきTOBも、構造上ほぼ不可能 ・真の浮動株はおそらく300万株前後(時価15億円程度)
🐊待伏「私がいつも探しているのは『安い資産に外圧が近づいている銘柄』です。昭和化学工業は、前半分は完璧に満たしているのに、後ろ半分が構造的に成立しない」
🐊待伏「そして昨日の決算は、その点について何のシグナルも出しませんでした。上方修正しても配当を動かさなかったということは、『還元余地が大きい』ことの証明であると同時に、『解放される兆しはない』ことの証明でもあります」
🦞守田「補足する。この銘柄の主要リスクは株価の暴落ではない。時間の浪費だ。10年間PBR0.5倍で放置される可能性を、真剣に見積もる必要がある」
🧑💼沼田「そこが今日の主題と正面からぶつかる。『渋い還元は社内複利になる』という理屈は、会社が最終的にその複利を株主に渡す意思を持っている場合にだけ成立する。永遠に渡さないなら、それは複利ではなく、他人の金庫の中で増える数字だ」
🧑💼沼田「だから私は、中計の政策保有株縮減を『唯一の触媒』として見ている。渡す意思があるかどうかの、最初のテストだからだ」
🦉 唯一動いたもの|創立93年で初の中計
🦉夜見「2026年5月15日に、一つだけ変化がありました。創立93年で初めて、中期経営計画が社外公表されたのです」
📋 中期経営計画 2026–2030 の要点 ・政策保有株式の縮減を明記(投資有価証券は推定56.8億円=時価総額の107.5%) ・配当性向 17.0% → 当面15%以上、将来20%以上(今期予想は14.5%で、既に目標割れ) ・個人株主比率 25% → 30% ・自己資本比率 64.4% → 50%以上(=還元・投資の余地14ポイント分=約22億円の示唆) ・売上 92億 → 110億(年率3.6%)/EBITDA 7.2億 → 9.0億
🦉夜見「投資有価証券は『隠れ含み益』ではなく『すでに時価評価されてBSに載っている見えている資産』です。その他有価証券評価差額金は税引後で推定22.7億円、税前の含み益は推定32.7億円。それでも株価が反応しないのは、市場が『この会社は売らないし還元しない』と織り込んでいるから」
🦞守田「評価は辛くしておく。目標水準は明確に『守り』だ。資本コストを意識したROE目標もなければ、PBR1倍回復への言及もない。削減率も期限も非開示。そして今期の配当性向14.5%は、その中計の最低ラインすら守っていない」
🐊待伏「私からも一つ。MBOの経済合理性は、実は極めて高い。少数株主の持分をプレミアム80%で買っても約53億円で、会社が持つ現預金+有価証券86.5億円で完済できてしまう。ただし会社は上場を前提とした5年中計を公表したばかりで、個人株主比率30%という目標は非公開化と真逆です。これは『オプション』であって『シナリオ』ではありません」
🐒 乱入|「配らない会社を褒めるとか、都合よすぎない?」
🐒レバナス小猿「ちょっと待って。いま『配当が渋いのは実はいいことです』って言った? それ、都合よすぎない? 配らない会社が売られたら『長期にはプラス』、配る会社が買われたら『インカムが握力』——結局どっちでも肯定するんじゃん。それ分析じゃなくて信仰じゃね?」
🧑💼沼田「小猿、それは今日いちばん鋭い。その通りだ。条件を付けずに『渋いほうがいい』と言えば、それはただの言い訳になる」
🧑💼沼田「だから条件を明示する。渋い還元が長期保有者にプラスになるのは、次の3つが全部揃うときだけだ」
✅ 「配らない」が味方になる3条件 ・①留保した資本が、価値を壊さない場所に投じられること——昭和化学は◯(国産鉱床・切替コスト・1Qのマージン改善) ・②いずれ株主に渡す意思があること——昭和化学は△(中計で縮減を明記したが、今期の性向は目標割れ) ・③その間、株価が資産価値を下回っていること——昭和化学は◯(税引後の金融資産521円>株価496円)
🐒小猿「……②が△なら、まだ結論出てなくない?」
🦎日向「あっ、小猿さんの茶々、そのまま買う前のチェックリストになりますね。整理するとこうです」
✅ 小猿の茶々→エントリー前チェックリスト ・「渋い=いいこと」で思考停止していないか? → ②が△である以上、これは賭けの一部。断定しない ・複利のエンジンは何か言えるか? → 現時点では保有株の値上がり。本業ではない ・下値は何が守る? → 税引後の純金融資産521円が現値496円を上回る ・配当で待てる? → 配当だけなら1.21%で待てない。ただし1,000株なら優待込みの総合利回りが2年保有で2.73%——待つ根拠はこことBPSの伸び ・いつ間違いだと認める? → 中計期間中に政策保有株の売却がキャッシュフロー計算書に現れなければ、②は×に落ちる
🐒小猿「……条件を先に3つ出されると、逆に文句つけづらいな(ぐぬぬ)」
🐝花岡「私も一言。高配当担当としての評価は、配当だけ見れば変わりません。利回り1.21%で減配、性向は自社目標割れ。ただ、優田が出した総合利回り2.73%と、沼田の言う『社内複利』——この2つを足すと、話は変わります。要は、配当を待つのではなく、BPSの伸びと優待の育ちを待つ株だということですね」
🦞 留保|「日本株ファンドを内蔵している」という問題
🦞守田「最後に、この銘柄で最も見落とされやすい論点を、もう一度だけ強く置く」
⚠️ 投資有価証券は推定56.8億円=時価総額の107.5% ・実質的に「事業会社の皮をかぶった株式ポートフォリオ」 ・日本株が30%下落すれば、BPSは1株あたり約160円(17%)毀損する ・今回のBPS+59.23円のうち52.2円が保有株由来だったということは、逆回転も同じ勢いで起きるということ ・個別株リスクではなく、市場ベータを大量に抱えている ・この銘柄のダウンサイドは、日本株市場全体のダウンサイドとかなり重なる。分散効果は限定的
🦞守田「他の留保も並べる」
| リスク | 内容 |
|---|---|
| バリュートラップ | 石橋系43.9%+自己株11.1%で資本規律が働かない。「割安のまま5〜10年」が最も確率の高いシナリオ |
| 還元意思の不在 | 上方修正しても配当据え置き。配当性向14.5%は自社の中計目標15%すら下回る |
| 持分法損益の変動 | 経常利益の約20%が持分法(主にオーベクス15.43%)。今回開示に転じたが、変動要因であることは変わらない |
| 本業の構造的縮小 | 主力の濾過助剤は前期マイナス1.0%。国内ビール市場の縮小と、助剤を使わない膜ろ過技術への置換という2つの構造要因 |
| 下期計画の薄さ | 通期3.20億に対し下期は0.70億のみ。保守的とも読めるが、下期のコスト要因を織り込んでいる可能性も同等にある |
| 流動性 | 真の浮動株は300万株前後(時価15億円程度)。平常時の出来高は300〜5,600株で、まとまった売買で価格が飛ぶ |
| 情報開示の薄さ | 決算補足資料なし・説明会なし・アナリストカバレッジなし。理解されないものは安いまま放置される |
買い方|「BPSの伸びを待つ株」として、少額から
🧑💼沼田「以上を踏まえて、握り方を決める」
🧱 握り方の設計(現値496円) ・コア保有にしない。バリューバスケットの一角として、少額から ・1Qの上方修正と税引後純金融資産521円への逆転で、8月上旬より買いやすくなった ・買い下がりの終着点は1,000株(優待の区分が1,000株の一段しかないため)。例:400株@496円+300株@465円+300株@435円=平均468.4円 ・1,000株を超える分は優待の付かない純資産バリュー枠として別勘定に ・9月権利の権利付最終日は2026年9月28日。ただし1年未満は米2kg。本命は2年後の6kg ・ただし496円は「買ってよい価格」であって「急いで買う価格」ではない ・次の判定日は11月中旬の2Q決算。上期営業2.50億に対する着地と、通期の再修正の有無を見る ・本命の検証は政策保有株の売却が実際にキャッシュフロー計算書に現れるか。現れたら買い増す ・440円割れ(PBR0.47倍)は資産価値対比で明確な買い場 ・700円超(PBR0.74倍)では資産バリューの論拠が薄くなるため一部利確を検討
🦉夜見「シナリオ別の水準です。BPSが940.65円へ切り上がったため、前回のレポート(BPS881円・株価492円)から全体が上方にシフトしています」
| シナリオ | 確率 | 株価 | 496円比 | 前提 |
|---|---|---|---|---|
| ベア | 25% | 420円 | ▲15% | 日本株調整で保有株の含み益が縮小+下期計画が現実化 |
| ベース | 45% | 550円 | +11% | 資産の伸びに株価が半分だけ追随。PBR0.58倍=「安いまま」のシナリオ |
| ブル | 25% | 700円 | +41% | 政策保有株の売却実行・自己株消却または増配。PBR0.74倍 |
| MBO | 5% | 850円 | +71% | BPS940円近辺での非公開化(前提にはできない) |
🦉夜見「確率加重の期待値は約570円、現値比プラス14.9%。8月上旬時点の試算(期待値526円・プラス6.9%)から、倍以上に改善しました」
🦉夜見「改善の中身は3つです。①営業減益率がマイナス55.2%からマイナス28.3%へ半減、②経常・純利益が非開示から開示へ、③BPSが881円から940円へ切り上がった。株価はほぼ動いていないのに、分母だけが育った局面です」
🧑💼沼田「この改善を受けて、評価ランクをBからB++へ引き上げる。ただしA−には届かない。還元姿勢が1ミリも動かず、触媒が細いままだからだ。『基本シナリオは安いまま』という結論そのものは、変えない」
まとめ|「妙味はある。ただし、あなたが待てるなら」
🧑💼沼田「今日の昭和化学工業を、一枚に畳む」
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 昨日の決算 | 営業利益を60%上方修正(2.00億→3.20億)。非開示だった経常5.90億・純利益4.40億も開示。1Qは売上が四半期の過去最高で営業+8.8% |
| なのに売られた | 上方修正でも配当は6円据え置き。配当性向14.5%は自社の中計目標15%すら下回る。高値531円から496円へ押し戻された |
| だが長期には | 配らないぶん、20.315%の課税を免れて社内に残る。1株あたり年7.17円(21.8%)の差。BPSは2年3か月で+31.8%=年率13.1%で、株価は横ばい |
| 条件① | 留保資本が価値を壊さない場所にあるか → ◯。国産鉱床・切替コスト・1Qの営業利益率5.89%→6.31% |
| 条件② | いずれ株主に渡す意思があるか → △。中計で縮減を明記も、今期の性向は目標割れ。ここが最大の未解決点 |
| 条件③ | 株価が資産価値を下回っているか → ◯。税引後の純金融資産521円>株価496円。PBR0.53倍 |
| 待つ間の報酬 | 1,000株で年2回の優待(3月:特産品2,500〜3,000円/9月:あきたこまち2kg→4kg→6kg)。2年保有で総合利回り2.73%。優待は源泉徴収されず、手取りでは全額配当より0.31pt有利 |
| 複利のエンジン | 現時点では珪藻土ではなく銀行株。BPS+59.23円のうち52.2円が保有株の値上がり由来 |
| 最大のリスク | 暴落ではなく時間の浪費。「安いまま5〜10年」が基本シナリオ。加えて時価総額の107.5%に相当する保有株=市場ベータを内蔵 |
| 握り方 | コア保有にしない。買い下がりの終着点は1,000株(優待の区分が一段しかないため、それ以上は優待が希薄化)。440円割れは買い場、700円超は一部利確 |
💬 沼田より 「昨日、この会社は上方修正を出して、それでも売られた。配当を6円のままにしたからだ。——そこで多くの人は『還元しない会社は買えない』と結論する。私は、そこで一段止まって考えるほうを選ぶ。配当を出さないということは、20.315%を国に渡さずに、会社の中で回し続けるということだ。実際この会社のBPSは、2年3か月で31.8%増えている。株価は横ばいのままで、だ。その差は、いつか埋まるかもしれないし、埋まらないかもしれない。ただ一つ確かなのは、埋まるのを待っている間、こちらが損をしていないということだ。失望した誰かが売った値段で、増え続けている資産を買う。国産鉱床を握り、ビール工場の濾過工程に組み込まれ、値上げが通り始めた会社の資産を、だ。そして待っている間、この会社は年に2回、米と特産品を送ってくる。2年持てば米は6kgに増える。BPSが年13%で伸び、優待が3倍に育つ——時間が二方向から味方する銘柄は、そう多くない。——ただし、これを主力にはしない。②が△のままだからだ。安全域とは、当たったときの大きさではなく、外れたときの小ささのことだから」
関連:配当性向が低い会社は、いま静かに得をしている(本稿の論点を紹介銘柄6社で検証したコラム)/低配当性向という妙味/ネットネット株の探し方/群栄化学(4229)現金と有価証券が時価総額の87%/片倉工業(3001)資産×カタリスト
※本稿は投資助言ではありません。評価ランク・目標株価・下値めどは一定の前提を置いた暫定値です。株価および株価から導いた指標は2026年8月14日終値496円を基準にしており、時点によって異なります。1Q時点の現預金・投資有価証券・繰延税金負債の実額は開示されていないため、純金融資産・修正NCAV・投資有価証券残高は自己資本および剰余金の開示値からの当方推定です(1株純資産940.65円、自己資本100.18億円、剰余金66.25億円は開示値)。投資有価証券の内訳、土地の含み益、浮動株数も当方推定を含み、確定値ではありません。株主優待の総合利回りは、地域特産品を2,750円、あきたこまちを800円/kgと仮定した試算です(米価を600〜1,000円/kgで振ると2年保有の総合利回りは2.49〜2.97%)。優待内容・継続保有の判定基準は変更される可能性があるため、必ず会社の適時開示および公式サイトでご確認ください。MBOについて具体的な観測報道は存在せず、実現を示唆・保証するものではありません。減益・減配・バリュートラップなど下振れ要因が明確に存在します。投資はご自身の判断と責任でお願いします。