日本精機(7287)|TOPIXに新しく入る35銘柄で、PBR1倍を割っていたのは2社だけ——二輪メーター世界首位、100億円の自社株買いと500億円の買収のあとで数え直す【B++・PBR0.59倍】
🦎 「課長。TOPIXに新しく入る35銘柄の一覧が出ました。全部並べたら、PBR1倍を割っている会社が2つだけあります」
沼田「10月7日の公表だな。どこだ」
日向(見習い)「日本精機とJトラストです。日本精機は二輪車のメーターで世界首位。指数に入るなら連動する資金が買いますよね。それでまだ安いなら、と思って」
待伏「イベント担当の待伏です。開く前に一つ。この会社は、8月に出た四半期決算のあとで姿が変わっています。6月末の数字だけで採点すると読み違えます」
📅 3週間に起きた3つのこと
| 日付 | 出来事 | 中身 |
|---|---|---|
| 9月18日 | 自己株式の買い入れ | 361万株(発行済みの6.27%)を2,764円で。約100億円 |
| 10月1日 | 東洋電装を完全子会社化 | 取得額498億円。全額を借入で調達 |
| 10月7日 | TOPIXへの新規採用が公表 | 実施は10月30日 |
待伏「順番に行きます。まず自社株買い。会社は『3年間の純利益の合計に対して総還元性向80%』を公約していました。9月の1回で、3年の合計は103%になっています」
日向「公約を超えたんですか」
待伏「超えました。前の期に20億円の枠を決議して1株も買えなかった分を、まとめて実行した形です。買えなかった理由を会社は『インサイダー取引規制への抵触を回避する観点から』と説明しています。買収の交渉と時期が重なっていました」
夜見「財務分析担当の夜見です。その結果を貸借対照表で見ます」
| 項目 | 6月末の決算 | 出来事のあと(概算) |
|---|---|---|
| 株数(自己株式を除く) | 5,748万株 | 5,387万株 |
| 1株純資産 | 4,063円 | 4,150円 |
| 現金・流動の金融資産 − 借入金 | +448億円 | ▲158億円 |
夜見「6月末には約448億円のネットキャッシュがありました。いまの時価総額1,502億円の約3割にあたります。それが、いまは借入のほうが多い計算です。東洋電装が持っている現金や借入金は開示がないので、ここには入れていません」
沼田「現金を持っているから安い、という株ではなくなったわけだ」

🏍️ 稼いでいるのは二輪
堀田「モート担当の堀田だ。セグメントを見れば、この会社の形は一目で分かる」
| セグメント(2026年3月期) | 売上収益 | 営業利益 |
|---|---|---|
| 四輪車用計器(HUDを含む) | 1,743億円 | ▲17.9億円 |
| 二輪車用計器 | 823億円 | 95.6億円 |
| 自動車販売 | 270億円 | 13.3億円 |
| そのほか3事業 | 329億円 | 10.0億円 |
堀田「二輪車用計器は営業利益率11.6%。3年前の519億円から823億円まで伸びた。インド、アセアン、ブラジルだ。1959年にスーパーカブ用のメーターを受注してからの商売で、振動と雨と埃に耐える作りが効いている」
日向「四輪は赤字なんですね。ヘッドアップディスプレイも世界首位って書いてあるのに」
堀田「そこがこの会社の難しいところだ。HUDは年210万台を作って世界首位だが、四輪の部門は3期続けて営業赤字だ。中国で日系と欧州系の自動車メーカーが売れなくなり、欧州の拠点は35.8億円の赤字を出している。首位であることと儲かることが、四輪ではまだつながっていない」
夜見「全社のROEは3.7%です。会社の目標は今の中期計画で5%、2030年3月期に8%。PBR1倍の早期達成も掲げています」
🤝 500億円の買い物
待伏「10月1日に買った東洋電装は、四輪と二輪のスイッチを作る非上場の会社です」
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 取得額 | 498億円(時価総額の33%) |
| 売上高(2025年3月期) | 1,000億円 |
| 営業利益 | 25.3億円(利益率2.5%) |
| 純資産 | 513億円 |
| ホンダ向けの売上比率 | 80%超 |
夜見「純資産とほぼ同じ値段で買っています。単純に足すと、売上は4,200億円、純利益は利息を引いて約122億円。1株利益は約226円で、PERは13.8倍から11.4倍に下がる計算です。会計基準の違いや統合の費用は入れていない、私たちの概算です」
守田「リスク管理担当の守田だ。足し算の裏側も見ておく。ホンダグループ向けの売上は、いまが30%。東洋電装を足すと約41%になる。資金は三菱UFJ銀行から500億円、期限は1年だ。長期への借り換えはこれからになる」
日向「メーターとスイッチで、表示と操作の両方を持つんですね」
守田「会社の狙いはそうだ。ただ、相乗効果の数字は『買収手続きの完了後に検討を開始する』とある。まだ紙の上にもない」

🦅 乱入|ドル建て鷹「指数の買いなら、もう終わってるぞ」
ドル建て鷹「聞こえたぞ。TOPIXに入るから買われる? そのルールは2年前に公表されてる。海外の資金はとっくに先回りして、もう売る側に回ってる頃だ」
日向「鷹さん……でも、連動する資産は160兆円って」
鷹「全部が同じ日に買うと思うのか。素人の計算だな」
墨田「AIバックチェック担当の墨田です。鷹さんの言う先回りは、値動きで確かめられます。35銘柄を、基準日の8月末から公表前日までで並べました」
| 銘柄 | 8月末からの値動き | PBR(公表前日) |
|---|---|---|
| AIメカテック | +41.9% | 11.2倍 |
| フェローテック | +30.3% | 2.0倍 |
| Jトラスト | +13.7% | 0.6倍 |
| 日本精機 | +2.9% | 0.68倍 |
| 西川ゴム工業 | ▲9.9% | 1.4倍 |
墨田「先に大きく買われたのは、もともと売買が活発な銘柄でした。日本精機は基準日からほとんど動いていません。公表日の終値も2,825円です」
鷹「動いてないのは、誰も欲しくないからだろう」
夜見「需要のほうを数えます。JPXの資料では、TOPIXに連動する資産が約160兆円、構成銘柄の浮動株時価総額が775兆円。割ると約2割です。日本精機に当てはめると126〜249億円で、1日の売買代金5.2億円の24〜48日分になります」
鷹「……思ったより多いな」
守田「鷹の言い分も半分は正しい。この数字は割り算で、値上がりの幅ではない。160兆円の全部が指数どおりに買うわけではないし、10月30日を過ぎれば買いは止まる。浮動株の比率も、JPXが使う数字ではなく、うちが大株主から置いたものだ」
鷹の茶々から、指数の採用を材料にするときの確認項目として残したのは3つです。
- 基準日から公表までに、すでにどれだけ上がったか(日本精機は+2.9%)
- 買い需要は売買代金の何日分か(概算で24〜48日分)
- 実施日のあとに残る理由があるか(指数の買いは10月30日で終わる)
🏷️ 値札と採点
河内「安さ担当の河内です。指数の話を外して、値札だけを見ます。10月9日の終値2,568円で、PBRは0.59倍、PERは13.8倍、配当利回りは3.50%です」
河内「1倍は割れていますが、1年前のPBRは0.3倍前後でした。直近5年のレンジは0.22〜0.72倍で、いまはその上寄りです。土地は長岡の工場用地で、含み益は数えていません。持っている株は時価で帳簿に載っています」
| 軸 | 点 | ひとこと |
|---|---|---|
| 🦦 安さ | 1 | 1倍割れだが5年の高値圏。隠れた資産は数えられない |
| 🦉 財務 | 2 | 自己資本比率67.6%。ただし500億円のつなぎ融資 |
| 🦫 モート | 2 | 二輪メーターとHUDで世界首位。四輪は赤字 |
| 🐊 触媒 | 3 | 総還元80%の公約を実行、持ち合い解消、TOPIX採用、来年5月に新中計 |
| 🐝 インカム | 2 | 配当は50円→80円→90円。利回り3.50% |
| 🦞 リスク | 1 | ホンダ向けが約4割へ。買収の統合はこれから |
| 確度 | 11 | 18点満点 |
夜見「上値は規則どおり、1株純資産4,150円に直近5年のPBRの高値0.72倍を掛けて2,988円。いまの株価から+16.4%です。下値は過去の最安のPBRで913円、▲64%です」
日向「触媒は満点なのに、ランクはB++ですか」
沼田「そうだ。会社が変わる材料は揃っている。ただ、株価はこの1年でその分をもう払っている。うちの物差しは、過去のレンジのどこにいるかで幅を決める。上寄りにいる株は、材料が良くても幅が出ない」
| 株価 | 幅 | ランク |
|---|---|---|
| 2,568円(いま) | 小 | B++ |
| 1,743円 | 中 | B++ |
| 1,431円 | 大 | A- |

🔭 3年後の3ケース
| ケース | 前提 | 3年後の株価 | 配当込み |
|---|---|---|---|
| ベア(25%) | 四輪の赤字が続き、買収の効果が出ない。PBR0.35倍 | 1,474円(▲43%) | ▲32% |
| ベース(50%) | 今期予想に東洋電装の利益が少し乗る。PBRは10月上旬の0.68倍のまま | 3,036円(+18%) | +29% |
| ブル(25%) | ROEが7%前後に上がり、同業並みのPBR0.88倍 | 4,104円(+60%) | +70% |
墨田「確率で均すと2,912円、配当を足して3年で+24%です。配当は90円の据え置きで3年分を置きました。確率と1株利益は私たちの置きで、会社の計画ではありません」
守田「上に行くには、買収した会社を含めて利益率が上がる必要がある。その数字が最初に出るのは、来年5月の新しい中期計画だ」
📋 まとめ
| 見るところ | 数字 |
|---|---|
| 事業 | 二輪車用計器(売上823億円・利益率11.6%)とHUDで世界首位。四輪は3期連続の営業赤字 |
| 値札 | 株価2,568円・PBR0.59倍・PER13.8倍・利回り3.50% |
| 6月末のあと | 自社株買い約100億円、買収498億円(全額借入)。ネットキャッシュは借入超過へ |
| 還元 | 3年累計の総還元性向103%(公約80%)。次の方針は2027年5月の新中計 |
| TOPIX | 10月30日に新規採用。買い需要は概算126〜249億円(売買代金の24〜48日分) |
| 採点 | B++(幅・小/確度11点)。上値2,988円・下値913円 |
| 幅が変わる株価 | 1,743円で「中」、1,431円で「大」 |
日向より 「『指数に入るのに安い』と思って開いたら、安かったのは1年前でした。会社は現金を使い切って、買収と還元に踏み出しています。材料の良さと値札の安さは別々に数える、というのを今回は表で確かめました」
📊 完全版レポート(タブ式・11章)
日本精機(7287)統合投資分析レポート——6月末と出来事のあとの貸借対照表、セグメントと地域別の業績、東洋電装を足した概算、総還元の内訳、TOPIXの買い需要の計算、3年後の3ケース、採点の根拠と下値の置き方、検算メモまで。
免責事項:本記事は投資助言ではありません。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・指標は2026年10月9日終値時点(株探の確定値)です。財務は2027年3月期第1四半期決算短信(2026年6月末・IFRS)に、9月の自己株式取得と10月の東洋電装の株式取得を反映した当商会の概算で、東洋電装の資産・負債は含みません。業績・セグメント・還元方針・世界シェアの記述は会社の決算説明会資料と有価証券報告書、買収・借入・自己株式・TOPIX採用は適時開示、TOPIXの定期入替はJPX総研の公表資料によります。ランク・上値・下値・3年後の3ケース・東洋電装の単純合算・指数連動の買い需要(連動資産と浮動株時価総額の割り算、浮動株比率の置き)は当商会の計算で、将来の株価や会社の計画を示すものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。







