コラム|安全域は「安く買う」以外の作り方がある——コアは小型の資産バリュー、サテライトは急落した大型テーマ株。分割売りで元本を回収し、残った数枚を恩株に変えるまで【最新ポートフォリオを設計図として読む】
🧑💼 「最新ポートフォリオを公開した。だが今日は、あれを成績表として見ない。設計図として読む」
沼田「数字が並んでいると、人はつい『いくら儲かったか』を見る。だがあの表がほんとうに語っているのは、どこに何を置いているかという配置のほうだ。配置には理屈がある。今日はそれを言語化しておく」
まず全体|二層に分かれている
夜見「財務分析担当の夜見です。2026年8月26日終値時点の骨格を出します」
| 銘柄数 | 評価額 | 含み損益 | |
|---|---|---|---|
| 現物 | 65 | 39,637,774円 | +2,105,782円 |
| 信用建玉 | 66 | 49,851,698円 | +253,406円 |
| 現金 | — | 3,585,588円 | — |
| 総ポジション | 131 | 93,075,060円 | +2,359,188円 |
夜見「ここに、今日いちばん大事な数字があります。評価額は信用のほうが1割大きいのに、含み益は現物が8.3倍あります」
沼田「それは失敗ではない。設計どおりだ。現物は稼ぐ層、信用はまだ仕込んだばかりの層——役割が違う」
🦦 コア|現物は「動かさない小型バリュー」で埋めている
河内「割安発掘担当の河内です。現物3,963万円の中身を、2つの軸で切ります」
🧱 現物65銘柄の中身 ・スタイル:ディープバリュー19銘柄+バリュー23銘柄=42銘柄 2,893万円で現物の73.0% ・規模:超小型(300億円未満)21銘柄+小型(300〜1000億円)15銘柄=36銘柄 3,072万円で現物の77.5% ・大型(1兆円以上)は15銘柄で316万円しかなく、しかもうち9銘柄は単元未満株
河内「現物の4分の3が、小型以下の資産バリューです。ここが動かさない層——コアです。値動きで判断せず、資産と収益力が壊れていない限り持ち続ける枠」
堀田「モート担当から補足する。なぜコアを小型に寄せるのか。大型株には情報の非対称が残らないからだ。アナリストが何人も見ている会社で、有報を読んだくらいの差は出ない。逆に売買代金が数百万円の会社は、そもそも誰も読みに来ない。だから読んだ分だけ差が出る」
河内「その代わり、コアには重大な制約があります。薄いので、まとまった金額では出入りできません。実際うちの東部ネットワークは、先日1日まるごと出来高がゼロでした。だから最初から『出るつもりのない金』しか置かない——現物である理由はそこです」
🐊 サテライト|信用は「急落した大型テーマ株」を多めに集める枠
待伏「イベント担当の待伏です。信用側の性格は、現物とはっきり違います。大型と中型を合わせた23銘柄1,517万円が、信用全体の30.4%を占めています」
| 銘柄 | 規模 | 株数 | 評価額 | 取得比 |
|---|---|---|---|---|
| ダイキン工業 | 大型 | 100 | 2,098,500円 | +0.5% |
| 新明和工業 | 中型 | 900 | 1,766,700円 | ▲1.2% |
| ミネベアミツミ | 大型 | 400 | 1,342,400円 | ▲1.0% |
| カナデビア | 中型 | 1,000 | 1,190,000円 | +1.1% |
| IDOM | 中型 | 900 | 1,158,300円 | +0.2% |
| 日本トムソン | 中型 | 400 | 709,200円 | +4.6% |
| ファナック | 大型 | 100 | 602,300円 | ▲0.3% |
| IHI | 大型 | 200 | 527,600円 | ▲0.4% |
| 川崎重工業 | 大型 | 200 | 515,000円 | ▲0.2% |
| 鹿島建設 | 大型 | 100 | 482,900円 | +0.1% |
待伏「見ていただきたいのは、右端の列がほぼ全部ゼロ近辺だということです。プラス4.6%からマイナス1.2%の間に固まっている。これは8月19日の急落日に拾った玉が、まだほとんど動いていないという意味です」
沼田「サテライトの目的は、コアとは正反対だ。コアは『安いから持つ』。サテライトは『安くならない会社が、需給だけで一時的に安くなった瞬間を拾う』」
⚖️ なぜ大型でなければいけないのか ・板が厚い——数百万円単位で出入りしても値段が動かない。コアでは絶対にできないこと ・セクター全面安のとき、個社の業績と無関係に叩き売られる——歪みが大きい ・戻るときも速い。機関投資家が買い直す対象だから ・ただし『安い』わけではない。資産の床がない銘柄も多い
堀田「ここが今日の急所だ。バリュー投資の安全域は、本来『安く買う』ことで手に入れる。だが大型テーマ株は、めったに安くならない。では、安全域はどこから調達するのか」
💡 安全域を「買値」ではなく「回収した現金」で作る
沼田「答えは出口側だ。買うときに安全域が取れないなら、売りながら作ればいい」
🪜 分割売りで安全域を作る手順 ・急落日に、狙っていた大型テーマ株を多めに拾う(1枚ではなく複数単元) ・戻り始めたら全部は売らない。段階的に売って、投じた元本を回収していく ・元本を回収しきった時点で、残っている株の実質取得原価はゼロになる ・この残り数枚が恩株——ここから先は、何が起きても損にならない ・戻らなければ、回収前に撤退する。そのときの損は損益通算で実質8割に圧縮される
夜見「数字にします。1,000円で1,000株=100万円を投じ、1,200円まで戻ったとします」
| 段階 | 売却 | 回収額 | 残り株数 | 残り玉の実質取得原価 |
|---|---|---|---|---|
| 拾った直後 | — | 0円 | 1,000株 | 1,000円 |
| 1,150円で400株 | 400株 | 460,000円 | 600株 | 900円 |
| 1,200円で300株 | 300株 | 360,000円 | 300株 | 600円 |
| 1,250円で200株 | 200株 | 250,000円 | 100株 | マイナス700円=恩株 |
夜見「最後の行で、回収額の累計107万円が投じた100万円を超えます。この時点で残った100株は、取得原価がゼロを通り越してマイナスになる。株価がいくらになろうと、この100株から損は出ません」
沼田「これが『安全域を自分で作る』ということだ。グレアムは安全域を買値で確保しろと言った。それは正しい。だが買値で取れない場所では、出口で作るしかない。重要なのは順序で、先に多めに拾っていないと、分割で売る枚数がそもそも無い」
守田「リスク番から一つ釘を刺す。この手順が成立する前提は『底値付近で拾えたら』だ。拾った値段が高ければ、分割売りは単なる損切りの分割になる。恩株は結果であって、目標にするものではない」
🦩 そして少量を現引きする|信用のままでは取れないものがある
優田「優待担当の優田です。良い位置で仕込めた少量は、売らずに現引きします。信用のまま持ち続けるのと、現物に移すのとでは、受け取れるものが3つ違います」
🔁 現引きで変わる3つ ・配当が満額になる——信用建玉では配当落調整金として84.685%しか入らない ・優待の権利が生きる——信用建玉には優待が付かない ・期日が消える——制度信用の6か月という制限がなくなり、時間が敵から味方に変わる
夜見「1つ目を金額にします。いまの信用建玉から発生する年間配当は約130万円です。建玉のまま権利を通過すると、受け取るのは調整金として84.685%、しかもそれは譲渡損益に算入されるためさらに課税されます」
夜見「現引きすれば配当所得として満額を受け取れるので、手取りの差は配当額の12.2%。年およそ19万5,000円です。『権利落ち前に現引きする』という運用は、この差を取りにいく動きになります」
優田「そして優待は、現引きしないと1円も取れません。東海染工の500株でQUOカード1万円、昭和化学工業の1,000株であきたこまちが2年保有で6kgに育つ——どれも現物の話です。恩株になった数枚を現引きしておけば、取得原価ゼロの株が毎年インカムを出し続けます」
野村「じいさんから運用の骨組みを一つ。いま総ポジション9,307万円に対して純資産は4,347万円、レバレッジは2.06倍じゃ。維持率69.2%で、追証ラインの20%まで株価下落率で30.2%の余裕がある。サテライトを多めに拾えるのは、この余裕があるからで、余裕が先で買いが後じゃ」

🦍 乱入|「落ちてくるナイフを、レバ2倍で掴んでるだけでしょ」
テック番長「おいおい待てよ。要するに急落した大型株をレバレッジ2倍で買い向かってるだけじゃねえか。それ、投資の教科書で『やるな』って書いてあるやつの合わせ技だぞ。逆張り、ナンピン、信用取引。三点セットで死ぬパターンだろ」
守田「番長、その指摘は正しい。だからこの枠には制約が3つ掛かっている」
🛡️ サテライトに掛けている3つの制約 ・枠を限定する——大型テーマ枠は信用の30.4%まで。コアには一切混ぜない ・余裕を先に確保する——維持率69.2%=株価が30.2%下がるまで追証は来ない。この余白の範囲でしか拾わない ・出口を先に決めておく——戻ったら分割売り、戻らなければ損益通算の枠として損切り。どちらでも成立する
番長「……いや、待て。3つ目がずるくないか。『どっちに転んでも成立します』って、それただの言い訳じゃないの」
野村「言い訳ではない。損切りが実質8割になるのは、税制がそう作られているからじゃ。年内に利益が出ておれば、確定した損はそこから引かれる。20.315%が戻る計算になる。つまりこの枠は、最初から『外れても2割は国が持つ』という前提で設計してある」
守田「ただし番長の指摘のうち、一つはまだ潰せていない。『底値付近で拾えたら』という前提が外れた場合だ。いまの大型テーマ枠23銘柄は、取得比プラスマイナス数パーセントに固まっている。まだ判定されていない。戻れば設計どおり、戻らなければ番長が正しかったことになる」
番長「……お、おう。素直だな」
日向「あっ、番長のツッコミ、そのまま点検リストになりますね。3つの問いです。①その枠は全体の何%か(30.4%)/②追証まで何%の余裕があるか(30.2%)/③戻らなかったときの出口を、買う前に決めてあるか。答えられないなら、それはただのナンピンです」
まとめ|二層の役割分担
沼田「今日の設計を、一枚に畳む」
| コア(現物65銘柄) | サテライト(信用66銘柄) | |
|---|---|---|
| 中身 | 小型・超小型の資産バリューが77.5% | プライムの大型・中型テーマ株が30.4% |
| 買う理由 | 安いから(資産と収益力に対して) | 安くならない会社が、需給で一時的に下げたから |
| 安全域の出どころ | 買値そのもの | 分割売りで回収した現金 |
| 出口 | テーゼが壊れるまで持つ | 戻れば分割売り→恩株化/戻らなければ損益通算 |
| 流動性 | 薄い。出るつもりの金は置かない | 厚い。数百万円で出入りできる |
| いまの含み益 | +2,105,782円 | +253,406円(まだ判定前) |
💬 沼田より 「保有をぜんぶ公開して分かったことがある。数字を並べると、自分がやっていることの説明を迫られる。なぜ現物は小型ばかりなのか。なぜ大型は信用にあるのか。なぜ信用の含み益はほとんどゼロなのか。説明できない配置があるなら、それは設計ではなく、ただ買ってしまったものが積み上がっただけだ。——今日の答えはこうだ。コアは安さで安全域を取り、サテライトは出口で安全域を作る。前者は待てば効くが、後者は自分で刻まないと永久に生まれない。そして刻み終えて残った数枚を現引きすれば、取得原価ゼロの株が毎年配当と優待を出し続ける。恩株とは、うまくいった結果につける名前であって、狙って行く場所ではない。狙うのは、そこに至る手順のほうだ」
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※本稿は投資助言ではありません。数値は最新ポートフォリオの2026年8月26日終値時点のものです。分割売りの試算は手数料・税を考慮しない単純計算で、実際には売却益に20.315%が課税されます。損益通算による還付は、同一年内に他の譲渡益があり、かつ特定口座・申告分離課税である場合の話です。NISA口座では損益通算できません。維持率・レバレッジは現物すべてを代用差入れ・信用はすべて買建とした試算であり、実際の数値は口座画面をご確認ください。信用取引は損失が預託額を上回る可能性があります。個別銘柄は保有の事実を記載したものであり、推奨ではありません。投資はご自身の判断と責任でお願いします。









