日本株バリューを『大量に』持つ商会が、なぜ超長期米国債ETFを買うのか|株クラッシュの保険=2255・237A、しかも信用なら『保険料』を配当が肩代わりする【バリュー投資コラム】
🦞 「うちのポートフォリオを裏返すと、そこにあるのは割安な日本株バリューの山だ。誇らしい。……だが、リスク番として正直に言う。この山は、株式市場が総崩れになる日には、まとめて沈む。バリューだろうが何だろうが、暴落の初動は”全部一緒に叩き売られる”。——だから今日は、その山に1本だけ差しておく傘の話をする」
なぜ”保険”が要るのか|バリュー株の山は、クラッシュに無防備
🦞守田「まず前提を確認する。沼底バリュー商会は、東部ネットワーク・広済堂・応用地質……と、割安な日本株を厚く持っている。個々は下値が資産に守られた良い銘柄だ。だが——株式市場全体がクラッシュする局面では、割安も優良も関係なく、初動でまとめて売られる。2020年3月も2008年も、そうだった」
🦎日向(見習い)「じゃあ、暴落が来たら耐えるしかないんすか?」
🦞「耐えるのが基本だ。だが、“耐える”を助ける資産を、少しだけ混ぜておく手はある。株が暴落するとき、逆に買われやすい資産——それが超長期の米国債だ。景気が悪化して株が売られると、投資家は安全資産に逃げ、中央銀行は利下げする。金利が下がれば、長い債券ほど価格が跳ね上がる。株の下げを、債券の上げが一部埋める。これが”保険”の理屈だ」
🧑💼沼田「うちは日本株バリューが主戦場だ。それは変えない。ただ、主力が”株一色”だからこそ、逆相関の資産を一定数だけ持つ意味がある。全財産を賭けるのではない。傘は、雨の日にさせればいい本数だけあればいい」
主役の2銘柄|同じ”超長期米国債ETF”でも、役割が違う
🦉夜見「今日の主役は、東証に上場する円建ての超長期米国債ETF2本です。名前は似ていますが、中身の役割がきれいに分かれます」
| 2255 iシェアーズ米国債20年超 | 237A iシェアーズ米国債25年超 ロングデュレーション | |
|---|---|---|
| 中身 | 利付の米国債(20年超) | STRIPS=ゼロクーポン債(25年超) |
| 為替ヘッジ | なし(ヘッジあり版は2621) | なし(ヘッジあり版は238A) |
| 分配金 | あり・利回り約3.86%(年4回・株価207.5円) | 出るが薄い・利回り約1%前後(1口あたり年およそ1.5円÷株価154円。ゼロクーポン=利息を分配しないため) |
| デュレーション | 長い(約16〜17年) | 東証で最長(約27〜30年) |
| 信託報酬 | 0.14%(税抜) | 0.14%(税抜) |
| うちでの役割 | 利ザヤの取れる保険(信用向き) | 値幅が最強の保険(現物向き) |
🦉「ポイントは2255は利息を払う普通の債券、237Aはゼロクーポン(STRIPS=利息部分を切り離した元本のみの債券)という違いです。ゼロクーポンは利息を払わない代わり、金利変動への感応度(デュレーション)が極端に長くなる——237Aは東証で最長です。だから同じ”金利1%低下”でも、237Aのほうが値上がり幅が大きい。クラッシュ保険としての”効き”は237Aが上。分配金も出ます(ゼロクーポンでも税務上の”みなし利息”を分配)が、額の変動が大きい」
🦎「なるほど……2255は”利息が安定して出る傘”、237Aは”一番よく開くけど、開き具合も利息も気まぐれな傘”、って感じっすね」
妙味の核心|信用なら”保険料”を、配当が肩代わりしてくれる
🧓野村「ふぉっふぉ、ここからがワシの領分じゃ。保険というのは普通、“保険料”を払うもの——寝かせた資金の機会損失、というコストがかかる。じゃが2255には、その常識を裏返す仕掛けがある」
💡 野村流・“保険料が逆に入ってくる”構造(2255を信用で持つ)
・2255の分配金利回り=約3.86% ・信用の買い方金利=年1.69%(錬金術の記事参照) ・つまり——金利1.69%を払ってなお、分配3.86%が入る。差し引き年2%前後のキャリー(利ザヤ)が残る ・保険(クラッシュ待ち)をしているのに、待ち時間そのものがプラス収益になる
🐝花岡「普通の保険は、何も起きなければ保険料が”掛け捨て”です。でも2255を信用で持つと——クラッシュが来なくても、分配3.86%と金利1.69%の差が毎年ポケットに入る。掛け捨てどころか、掛けているだけでお金が貯まる保険。ここがこの銘柄の一番の色気です」
🧓「そして株がクラッシュしたら、利下げで2255も237Aも跳ね上がる。平時は利ザヤ、有事は値上がり——ワシが信用を”設計”と呼ぶのは、こういう構造のことじゃ。博打じゃない」
🧓「ついでに、237Aの”参考利回り”も正直に言うておく。237Aの分配金利回りは、直近実績で年1%前後(1口あたり年およそ1.5円 ÷ 株価154円)——ゼロクーポン=利息を払わん債券じゃから、利付の2255(3.86%)と違うて分配は薄い。ネットには”8.9%“などと出回っておるが、あれは回数や単位を取り違えた数字で、実額から計算すればせいぜい1%程度じゃ。つまり237Aを信用で持つと、分配1%に対し金利1.69%で”逆ザヤ”——持つほど持ち出しになる。237Aで”実質見込める”のは利回りではのうて、クラッシュ時にいちばん大きく開く”値幅”のほうじゃ。利ザヤが欲しければ2255を信用で、値幅の保険が欲しければ237Aを現物で——これが答えじゃな」
なぜ”為替ヘッジなし”を選ぶのか
🦎「あれ、でも2255も237Aも”為替ヘッジなし”っすよね? ドル円が動いたら、その分ブレませんか?」
🦉夜見「鋭い。ブレます。だが、あえて”なし”を選ぶ理由があります。為替ヘッジには”コスト”がかかり、それが日米金利差の分だけ年5%前後にもなる。ヘッジあり版(2621・238A)は、そのコストで分配金や値上がりがごっそり削られる。超長期債では、ヘッジコストが妙味を食い潰してしまうんです」
🦞守田「その代わり、正直な弱点も背負う。クラッシュ=リスクオフの局面では、円高になりやすい。ドル建ての債券が値上がりしても、円高がその一部を相殺する。——ここは次の”正直な話”で、たっぷり釘を刺す」
正直に|“効くクラッシュ”と”効かないクラッシュ”がある
🦞守田「ここが今日いちばん大事な話だ。この保険は、万能ではない。クラッシュには2種類あって、片方には効くが、もう片方には効かない」
⚠️ 保険が”効く”クラッシュと”効かない”クラッシュ
・効く:景気後退(リセッション)型——株安→利下げ→長期債が上昇。2020年3月・2008年はこれ。傘がしっかり開く ・効かない:インフレ・金利上昇型——2022年のように、株も債券も同時に下がる。利上げ局面では、この傘は逆に濡れる ・為替の相殺——ヘッジなしゆえ、リスクオフの円高がドル建て債券高を一部打ち消す
🦞「だから鉄則はこうだ。①保険は”一定数”に留める(PFの全部を賭けない)②2255を信用で持つなら、金利上昇局面の値洗い(含み損)に耐えられるサイズに限定する。237Aはデュレーションが約27〜30年——金利が1%上がれば、価格は3割近く動く。この激しさを信用レバレッジで抱えるのは自殺行為だ。だから237Aは”現物”、2255は”利ザヤの取れる範囲の信用”——この使い分けが命だ」
🧑💼沼田「保険を”儲けの主役”にした瞬間、それは保険じゃなく投機になる。主役はあくまで日本株バリュー。米国債は、その山が総崩れする日のための、控えめな傘——この分をわきまえることが、一定数に留める理由だ」
📌 【追記・2026-08-01】「耐えられるサイズ」を数字にすると 野村の追証ラインは維持率30%(法定最低20%より厳しく、受入期日は発生日から2営業日目)。買方金利1.69%という低金利の恩恵と引き換えに、維持率には人一倍の余裕を持つのが作法です。 実務式(代用有価証券の掛目80%)で追証に届く下落率は、レバ1.2倍で▲74%/1.5倍で▲50%/2倍で▲27.8%。入口は1.2倍、自信がついたら1.5倍まで。2倍は「かなりリスクを取っている」自覚が要る限界値です。 とくに本稿の2255のような債券ETFは、日本株バリューと違って“資産の床”で下値が守られる性質ではありません。金利上昇局面の値洗いは指数以上に効きうるため、信用に載せるサイズは日本株バリューよりさらに保守的に。詳細はレバレッジ論①(維持率の設計図)へ。
うちの持ち方|237Aを打診(154.2円・6480株)
🧑💼「例によって手の内を晒す。うちは先日、237Aを1株154.2円で6,480株、約100万円分を打診買いした」
💡 沼底バリュー商会の米国債ETFポジション
・237A:154.2円 × 6,480株(約100万円)を現物で打診=東証最長デュレーションで”値幅が最強の保険”を現物で確保。金利変動が激しいぶん信用では抱えず、現物でクラッシュ時の跳ねを最大化する枠 ・2255:信用でのキャリー枠を検討=分配3.86% − 金利1.69%の利ザヤを取りながら、同じ保険を”待ち時間つき”で持つ枠
🦞「237Aを現物にしたのは正解だ。237Aはデュレーションが約27〜30年——金利が1%動けば価格は3割近く動く。この激しさを信用レバレッジで抱えれば、金利上昇局面の値洗いで一発退場になりかねない。金利リスクが桁違いに激しい237Aは現物、相対的にマイルド(デュレーション約16〜17年)で分配も安定する2255は”利ザヤの取れる範囲で信用も可”——分配の有無ではなく、金利リスクの激しさで分けるのが正しい。約100万円という”打診”サイズなのも良い。保険は、日本株の山に対して一定数あればいい」
ライバル乱入|「ようやくドル資産か」と、鷹が上機嫌
🦅ドル建て鷹「ほう……ようやく分かってきたじゃないか。円建て内需株ばかり抱えていたお前らが、とうとうドル建ての翼に手を伸ばした。歓迎するぞ。もっと買え、全部ドルにしろ」
🦞守田「鷹、半分は認める。だが勘違いするな。これは”ドルで稼ぐ”ために買うんじゃない。株の山が崩れる日の”保険”として買うんだ。だから為替の翼が目当てじゃない——むしろヘッジなしの円高相殺は、うちにとって弱点ですらある。お前の”全部ドルにしろ”は、保険を主役にしろと言っているのと同じ。それは投機だ」
🐒レバナス小猿「ウキーッ! 債券なんて地味の極み! 保険? そんなもん要らねえ、暴落しても握ってりゃ戻る! レバナス全力ホールドだ!」
🦉夜見「小猿さん、あなたのレバナスは、暴落でレバレッジぶん深く沈み、戻るのに何倍も時間がかかる。そのとき2255・237Aは逆に跳ねて、“暴落で増えた保険を利益確定して、安くなった株を買い増す原資にできる”。保険の本当の価値は、下げを和らげることより——暴落の底で、動ける現金を作ってくれることです」
🦍テック番長「金利の時代はもう終わる! 債券なんて時代遅れ、これからはAIとテック株だけよ!」
🧑💼沼田「番長、“終わる”かどうかを当てにいくのが投機で、どっちに転んでも生き残れるように備えるのが投資だ。テック株が正しければ、うちの日本株もついていく。テックが弾ければ、この傘が開く。片方に賭けないのが、うちの流儀だよ」
🦎「……今日もライバルの茶々が、全部そのまま論点になってるっすね。鷹の”全部ドル”=保険を主役にするな、小猿の”要らない”=暴落の底で動く現金の価値、番長の”時代遅れ”=どっちに転んでも生き残る備え……」
🦞「そうだ。保険を語るのに、派手さは要らない。要るのは”最悪の日に何が起きるか”の想像力だけだ」
まとめ
🧑💼「整理しよう」
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| なぜ持つ | 日本株バリューの山は株クラッシュに無防備=逆に動く超長期米国債を”一定数”の保険に |
| 2255 | 利付・分配3.86%。信用なら金利1.69%を上回り、待ち時間が利ザヤになる保険 |
| 237A | ゼロクーポン・デュレーション最長(約27〜30年)。分配も出るが薄い(利回り約1%<信用金利1.69%で逆ザヤ)=利回りでなく”値幅”の保険を現物で持つ |
| うちの保有 | 237Aを154.2円×6,480株(約100万円)で打診/2255は信用キャリー枠を検討 |
| 最大の留保 | 効かないクラッシュ(インフレ・利上げ型)がある・為替ヘッジなしの円高相殺・信用×デュレーションは限定 |
| 心構え | 保険を主役にしない。一定数に留める |
💬 守田より(今日は沼田課長ではなくリスク番から) 「バリュー投資家は、安く買うことばかり考えがちだ。だが、長く生き残る投資家は、“最悪の日”を先に設計している。うちのポートフォリオは日本株バリューの山——普段はそれでいい。だが山が総崩れする日のために、逆に動く傘を一定数だけ差しておく。2255は、その傘が平時に利ザヤという”保険料の逆流”を生むのが賢い。237Aは、いざという日に一番大きく開くのが頼もしい。ただし忘れるな——この傘は、インフレ・利上げ型の嵐には逆に濡れるし、為替の円高にも一部相殺される。万能ではない。だからこそ”一定数”だ。保険は、掛けすぎれば家計を圧迫し、無ければ最悪の日に沈む。ちょうどいい本数の傘を、配当をもらいながら差しておく——それが、暴落を”チャンス”に変える準備だ」
関連:野村の錬金術(買い方金利1.69%)/資金管理・生き残りの投資論/NISA vs 信用の期待リターン/含み損の意思決定論
※本記事は特定ETFの売買を推奨するものではありません。超長期債ETFは金利変動で価格が大きく動き、為替ヘッジなしのため為替変動の影響も受けます。信用取引はレバレッジにより損失が拡大し得ます。数値は2026年7月時点の公開情報(発行体資料等)に基づく概算で、分配金利回り・デュレーションは変動します。投資判断はご自身の責任で。