信用維持率の設計図|『半値暴落でも追証にならない』が成り立つのはレバ1.5倍まで。2倍は株価▲27.8%で追証に届く——野村の追証ライン30%と代用掛目80%で引き直した、レバレッジの現実的な上限【野村流のレバレッジ論①】
🧓 「ふぉっふぉ、今日はワシの領分——“信用をどれだけ張ってよいか”の設計図じゃ。多くの者は『どの銘柄を買うか』ばかり考える。だがレバレッジをかける投資家にとって、本当に生き死にを分けるのは“いくら建てるか”のほうじゃ。相場は必ず暴落する。問題は、その暴落が来たときに追証で強制退場になるか、それとも“待ってました”と買い向かえるか——その一点を、平時のうちに数字で設計しておく」
🦞守田「リスク番として先に立場を言う。レバレッジは、破産への最短距離になりうる道具だ。今日の話は“レバをかけろ”という煽りではない。かけるなら、暴落に耐える設計を先に済ませておけ——その作法の話だ。最後にたっぷり釘を刺す」
そもそも「維持率」とは何か——一枚の式で捉える
🧓「まず土俵を揃える。信用取引には委託保証金維持率という数字がある。ざっくり言えば“建てた玉に対して、保証金がどれだけ残っているか”の比率じゃ。これが各社の定める最低ラインを割ると追証(おいしょう)——追加の入金を迫られ、応じられなければ強制決済じゃ」
🦉夜見「うちの管理表では、暴落時の維持率をこの一枚の式で置いています」
📐 委託保証金維持率の式(実務の標準) 維持率 =( 委託保証金 − 建玉の評価損 )÷ 建玉金額
・委託保証金:現金は100%評価だが、現物株を代用有価証券として差し入れる場合は掛目80%(=現物時価の8割しか担保にならない) ・建玉の評価損:株価が下げた分だけ、分子から直接引かれていく ・分母の建玉金額は約定時の金額で固定
🦉「ここを取り違えている人が多いので強調します。現物株を担保にした瞬間、その価値は8掛けになります。そして暴落では、担保が縮むのと同時に、建玉の評価損が分子から引かれる——痛みは二重に来る。『現物と同額までなら安全だろう』という感覚は、この式の前では通用しません」
ストレステスト|「現物:信用」の比率別に、暴落耐性を測る
🧓「では表を見い。左が平時の現物:信用の比率——これが実質のレバレッジ倍率じゃ。野村の追証ラインは30%じゃから、そこに何%の下落で到達するかを右端に置いた」
| 平時の 現物:信用 | 実質レバ | 平時 | ▲20% | ▲30% | ▲50% | 追証(30%)到達 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 100 : 20 | 1.2倍 | 400% | 300% | 250% | 150% | ▲74.0% |
| 100 : 50 | 1.5倍 | 160% | 108% | 82% | 30% | ▲50.0% |
| 100 : 75 | 1.75倍 | 107% | 65% | 45% | 3% | ▲37.1% |
| 100 : 100 | 2.0倍 | 80% | 44% | 26% | ▲10% | ▲27.8% |
🧓「この表は、ワシが最初に描いた設計図を、実務の式で引き直したものじゃ。正直に言おう——数字はワシの見立てより、ずっと厳しかった」
🦞守田「ここが今日いちばん重要な訂正だ。レバ2倍は、株価▲27.8%で追証に届く。▲27.8%は“滅多に来ない暴落”ではない。数年に一度は起こりうる下落幅だ。『半値になっても大丈夫』などという水準では、まったくない」
🧓「一方で、レバ1.5倍(現物100:信用50)なら、追証到達はちょうど▲50%じゃ。令和のブラックマンデーでも関税ショックでも、指数が飲み込んだのはせいぜい2〜3割。“半値”という歴史的暴落を食らって、ようやく追証ラインに触れる——『半値でも耐える』が本当に成り立つのは、2倍ではなく1.5倍のほうじゃった」
🦎日向「レバ1.2倍だと……▲74%。もう、事実上は追証が来ない世界ですね」
🦞守田「そういうことだ。この一枚の表が、そのままレバレッジの選び方になっている」
🪜 レバレッジは、段階を踏んで上げる ・入口は レバ1.2倍程度(現物100:信用20)。追証到達は▲74%=事実上来ない。まずは値動きが自己資本にどう効くかを体感する ・銘柄選択・買い時・「価格と価値のズレ」の評価に自信がついてきたら、1.5倍程度まで引き上げてよい(現物100:信用50)。追証到達▲50%=歴史的暴落にようやく届く水準で、実用上はここが上限 ・レバ2倍は「かなりリスクを取っている」という認識を持ちながらやるべき水準。▲27.8%で追証=数年に一度の下落で届く
🧓「商会がこの2倍を張れるのは、銘柄選択と仕込み時期に経験に裏打ちされた自信があり、かつ“目論見を外したら自分の間違いを認めて、ちゃんと損切りできる”という前提があるからじゃ。ワシにとってもレバ2倍は「限界値」であって、余裕のある水準では断じてない」
💴 野村の“超低金利”は、そのまま余裕にはならない 野村證券の買方金利1.69%は、他社と比べても低い水準だ。キャリーを組むうえでは大きな武器になる。 だが——その分、追証ラインは30%と厳しめに設定されている(法定最低は20%)。しかも追証の受入期日は発生日から2営業日目と短い。 低金利という恩恵を受け取る代わりに、維持率には人一倍の余裕を持って構える——これが野村で信用を使う際の作法だ。
ただし「同率下落」は保守的すぎる|実効下落率で引き直す
🦦河内「ここで一つ、大事な前提を確認させてください。先ほどの表は“現物も信用建玉も、同じ率で下落する”という前提で計算しています。ですが、これは相当に保守的な置き方です」
🧓「そこよ。プライムの有名な人気株が半値になったとして、うちの保有株が同じだけ下がるとは、ワシは思っておらん。うちの現物は資産バリュー株が中心——PBRが1倍を大きく割り、現金や不動産で下値が守られている銘柄群じゃからのう」
🛡️ 資産バリュー株が、指数ほど下げない三つの理由 ・中身が半分にならない:相場が暴落しても、会社が持っている現金や不動産の価値そのものが半減するわけではない。株という“形”は同じでも、値札の裏にあるものが違う ・保有者の層が違う:人気株を高値で掴んだ短期の買い手と、安く仕込んだ長期の保有者では、投げ方がまるで違う。狼狽での安値売りが出にくい ・下がれば買い需要が出る:元々が割安なので、下げるほど「NAV比でさらに安い」と判断する買い手が入ってくる
🧓「じゃから、指数が▲50%を飲み込むような局面でも、うちの保有株は悪くて▲30%程度——ワシはそう見積もっておる」
🦉夜見「では、その実効下落率▲30%で引き直します。“市場は半値、でも自分の保有株は▲30%”という前提の維持率です」
| 現物:信用 | 実質レバ | 実効▲30%時の維持率 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 100 : 20 | 1.2倍 | 250% | 余裕 |
| 100 : 50 | 1.5倍 | 82% | 余裕 |
| 100 : 71.5 | 1.72倍 | 48.3% | 追証到達は▲38.7% |
| 100 : 100 | 2.0倍 | 26% | 追証 |
🦉「商会の実ポジション(現物6,750万円:信用建玉4,825万円=レバ約1.72倍)で言えば、実効▲30%でも維持率は48.3%。追証ラインの30%まで、まだ距離があります。追証に届くのは実効▲38.7%——資産バリュー中心なら、そこまでの下落はかなりの異常事態です」
🦞守田「認める。“資産バリューを代用に敷く”のは、レバレッジの土台として理にかなっている。グロース株を目一杯の代用にしてレバ2倍——これは論外だ。暴落で担保も建玉も同時に溶ける。攻めてよいのは、土台が堅いからこそだ」
🦞「ただしリスク番として、この前提に二つ釘を刺す」
⚠️ 「うちは下げにくい」を過信しない ・真のパニックでは相関が1に近づく——換金売りが出る局面では、良い銘柄も無差別に投げられる。「下げにくい」は平時から中程度の下落までの話 ・流動性の薄い中小型は、下げないのではなく“売れない”——板が消えてギャップダウンすることがある。下値の堅さと、換金のしやすさは別物
結局いちばん大事なのは|「何を、いくらで、信用に載せたか」
🧓「ここまでの話を突き詰めると、答えは一つに戻る。維持率の設計より前に、“信用に何を載せるか”で勝負はほぼ決まっておる」
🎯 信用ポジションに載せてよい銘柄の条件 ・下値が堅い:現金・不動産・含み資産で、株価の下に“床”がある ・上値が大きい:NAV比の割安、カタリスト、還元余地——伸びしろがある ・安く掴めている:高値掴みは、それだけで下値の堅さを失う。同じ銘柄でも、取得価格が違えば別のポジション
🦦河内「そして現物側(=担保)の質も、同じくらい効きます。含み益がたっぷり乗っていれば、多少下げても取得原価まで距離があり、担保としてしぶとく残ります。さらに同じように手堅い銘柄で分散が効いていれば、一つの銘柄の事故が担保全体を崩さない——理想はこの形です」
🦞守田「まとめるとこうだ。レバレッジの安全余裕は、倍率の数字だけで決まらない。①信用に載せた銘柄の下値の堅さ ②その取得価格 ③現物担保の含み益と分散——この三つが揃って初めて、同じレバ1.5倍でも“耐えられる1.5倍”になる」
🐒 乱入|「レバ2倍とか、ぬるいだろ」
🐒レバナス小猿「ちょっと待った待った!レバ2倍で偉そうに?俺なんかレバナスに全ツッパよ。指数が上がりゃレバ3倍相当でスイスイ増える。お前らの“資産バリュー”とやら、上がるのを待ってる間に俺は倍にしてるっての」
🧓「ふぉっふぉ、来おったな小猿。……で、去年の暴落で、お主のレバナスはどうなった?」
🐒小猿「……い、一時的に半分以下に。でも握ってりゃ戻るし!」
🦞守田「そこが決定的な違いだ。レバナスの“半分”は、複利の毒で戻りが遅れる——日々リバランスするレバレッジ型は、暴落後の横ばいでも価値が削れる(減価)。しかも追証で強制決済されれば“握って戻す”すらできない。一方うちのレバ2倍は、土台が資産バリューの現物で、暴落しても追証にならない設計だから、その“戻り”を最後まで握れる。“握力があるレバ”と“握力を奪われるレバ”は、同じ倍率でも別物だ」
🦎日向「あっ……わかった気がします。小猿さんのツッコミ、実はいちばん大事な確認事項ですよね。『上がる時の速さ』じゃなくて、『下がった時に握り続けられるか』——レバの良し悪しって、そこで決まる」
🧓「ええ気づきじゃ、日向。小猿の茶々を、そのままチェックリストに変えるとこうなる」
✅ “レバの握力”チェック(小猿の茶々を規律に変換) ・その暴落で追証になるか?(なる=握れない=失格) ・土台の現物は減価する道具か、下値の床がある資産か? ・戻るまでの間、金利コストに耐えられるか?(→次章)
🐒小猿「ぐ……“速さ”じゃなく“握力”か。おぼえとけよ……(また来る)」
30%暴落で「更に沢山買う」ための、三つの余力源
🧑💼沼田「ここで設計目標を言語化しておく。“半値暴落でも追証にならず、30%暴落なら更に沢山買えるだけの余力を持っていたい”——これが狙いだ。前章で見たとおり、それを満たすのはレバ1.5倍(追証到達▲50%)まで。では“30%で更に買う弾”は、どこから出てくるのか。三つある」
① 維持率のバッファそのもの 🧓「表のとおり、レバ1.5倍なら▲30%地点でも維持率82%——追証ライン30%まで、たっぷり距離がある。この“余った維持率”のぶんだけ、暴落した安値で新規に建てられる。暴落後は同じ資金でより多くの株数が買える——維持率の余白は、そのまま買い出動の弾薬じゃ。逆に平時から2倍まで建てておくと、▲30%地点で維持率26%=すでに追証で、買うどころではない。“買い向かう余力”を残すこと自体が、レバを抑える理由でもある」
② 現物の含み益クッション 🦦河内「資産バリューを地道に集めた現物には、平時から含み益が乗っている玉が多いんです。暴落でそれが薄くなっても、“取得原価まではまだ距離がある”玉は、代用価値がしぶとく残る。含み益は、暴落時にこそ効く隠れた保証金です」
③ 定期入金と配当の再投資 🧓「そして地味やが最強の弾——毎月の入金と、年間の受取配当じゃ。暴落は一日で終わらん。数週間から数か月かけて底を這う。その間に入ってくる現金を代用に足していけば、維持率は自力で回復し、買い余力は勝手に増えていく。“暴落を待つ側”にとって、キャッシュフローは時間を味方につける装置じゃ」
🦞守田「ただし②③には順序がある。暴落の初動で全弾を撃つな。①の維持率バッファで打診、②③で二の矢三の矢——“最後の駄目押し”に一番厚い弾を残すのが、急落買いの作法だ」
コストの確認|レバ2倍は「金利1.69%」を払い続ける
🧓「攻めの前に、財布の話をせにゃ不公平じゃ。信用の買い方金利は、いまや年1.69%——かつての0.5%から段階的に上がった。レバ2倍(現物と同額の建玉)を年間通して持てば、建玉に対して1.69%のコストが毎年出ていく」
🦉夜見「配当落調整金まで含めた実質の損益分岐はおよそ2.0%。つまり信用で建てる銘柄は、最低でも配当利回り2%前後を稼いでコストを相殺できるものが望ましい。うちが信用で持つのが高配当・累進配当の資産バリューに寄るのは、この“キャリーの相殺”という理由もあります」
🧓「そう。配当2%超の玉をレバ2倍で持てば、金利を配当で消しながら、値上がりとカタリストを“タダで”待てる。これが野村流のレバレッジの気持ちよさじゃ。金利を錬金術に変える話は、別稿で詳しくやっとる」
🦞 守田のリスクの釘(ここだけは飛ばすな)
🦞「攻めの設計図を描いたあとだからこそ、リスク番から釘を刺す。以下を一つでも軽視するなら、レバ2倍は身の丈を超える」
⚠️ レバ2倍を張る前の“6つの確認” ・各社の最低維持率・追証ラインを、自分の口座で必ず確認する。本稿の数字はモデルであって、あなたの証券会社の判定式ではない ・代用有価証券の掛目(多くは80%)を織り込む。現物の額面フルでは担保にならない ・追証には“期限”がある。解消できねば、底値で強制決済という最悪の売りを食らう ・損切りラインを、建てる前に決める。「資産バリューだから」は握り続ける理由になるが、追証を無視する理由にはならない ・現物の集中リスク——土台が資産バリューでも、数銘柄に偏れば“床”は同時に抜けうる。代用は分散して敷く ・これは万人向けではない。生活防衛資金と別勘定で、失っても生活が壊れない範囲でのみ
🦞「特に三つ目——追証の期限だけは強調しておく。“いつか戻る”は正しくても、“期限までに戻る”とは限らない。握力のあるレバの前提は、追証にならないこと。だから平時の設計で、暴落しても追証に届かない比率に収めておく——今日の話は、全部そこに帰る」
まとめ|暴落を「買い場」に変えるための一枚
🧑💼沼田「今日の設計図を、一枚に畳む」
| 論点 | 結論 |
|---|---|
| 計算式 | 維持率=(委託保証金−建玉評価損)÷建玉金額。現物株の代用は掛目80%=担保は時価の8割 |
| 追証ライン | 野村證券は30%(法定最低20%より厳しい)・受入期日は発生日から2営業日目 |
| 実用上の上限 | レバ1.5倍(100:50)=追証到達▲50%。「半値でも耐える」が成り立つのはここ |
| レバ2倍の現実 | 追証到達は▲27.8%=数年に一度は起こりうる下落幅。「かなりリスクを取っている」自覚が要る限界値 |
| 段階の踏み方 | 入口1.2倍(追証▲74%)→ 銘柄選択・買い時・価格と価値のズレの評価に自信がついたら1.5倍へ |
| 実効下落率 | 同率下落は保守的な前提。資産バリューは中身・保有者層・買い需要の三つで指数ほど下げず、実効▲30%程度と見積もる(商会の実ポジ1.72倍なら維持率48.3%・追証到達▲38.7%) |
| 最重要 | 倍率より「何を、いくらで載せたか」。①信用玉の下値の堅さ ②取得価格の安さ ③現物担保の含み益と分散——この三つが“耐えられるレバ”を作る |
| 30%暴落での余力 | レバ1.5倍なら維持率82%=安値で更に建てられる(2倍だと26%で既に追証) |
| 成立条件 | 現物が資産バリュー中心で“下値の床”があること(=代用の値持ち) |
| 買い増しの弾 | ①維持率バッファ ②現物の含み益 ③定期入金・配当 |
| コスト | 買い方金利1.69%・損益分岐≈2.0%→配当2%超の玉で相殺 |
| いちばんの釘 | 各社の追証ライン・掛目・追証期限を口座で確認。損切りラインを先に決める。万人向けではない |
💬 野村より 「レバレッジは、臆病者の道具じゃ。“暴落が来ても追証にならない”とわかっているから、暴落を恐れずに、むしろ買い場として待てる。目一杯に張って祈る者は、暴落で退場する。平時に設計を済ませた者だけが、暴落の日に“ふぉっふぉ、来おったか”と笑って買える。攻めの上限を知り、その内側で淡々と——それが、レバを“握力”に変える作法じゃ」
シリーズ:①信用維持率の設計図(いくらまで建ててよいか・本記事)/②信用キャリーの10年設計(そのレバレッジは何を稼ぐか)
関連:買い方金利1.69%の錬金術/資金管理・生き残りの技術/NISAと信用の期待値/信用二階建て・代用の作法
※本稿は投資助言ではありません。信用取引はレバレッジにより損失が預託額を上回る可能性があります。委託保証金維持率・最低維持率・追証ライン・代用有価証券の掛目・追証期限は証券会社ごとに異なるため、必ずご自身の口座でご確認ください。数値は一定の前提を置いたモデル試算です。