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2026年8月時点
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📅 画面は2026年8月に撮影

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🧑‍💼 筆者

沼田課長
沼田課長
課長・プレイングマネージャー
野村信用を活用したバリュー株×TOB待ち伏せ戦略。TOBヒット20件超。【目標】4,308万円 → 2億円(2030年)

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逆バリュー投資②|1年で株価が3倍以上になった貸借銘柄を全部調べたら、高PERは4つの型に分かれた【空売り候補スクリーニングの手順を公開/売ってはいけない高PERの見分け方】


🦎 「課長。この前の実験、続けていいですか」

沼田「逆バリューか」

日向「はい。前回は『なぜ少量ずつ売るのか』という考え方の話でした。今回は、探し方をやります」

沼田「やってみろ。ただし条件がある」

日向「はい」

沼田「『上がりすぎている株』を探すな。『上がりすぎていて、かつ売れる株』を探せ」

日向「……売れる株?」

沼田「やってみれば分かる。そこで3割が消える」


🔧 第1章|空売りの前に消える3割──貸借銘柄とは何か

日向「まず、上がった株を集めました。過去1年の上昇率ランキング、上位75銘柄です」

夜見「財務分析担当の夜見です。そこからETF3本を除きます。個別株は72銘柄」

日向「で、課長に言われた『売れるかどうか』を1社ずつ調べたんですが」

🧱 制度信用の3区分(株探の表示) ・貸借 … 買建(信用買い)と売建(信用売り)の両方ができる → 空売り可 ・信用 … 買建のみができる → 空売り不可 ・現物 … 制度信用の対象外。現物取引のみ → 空売り不可

日向「72銘柄の内訳が、これです」

信用区分銘柄数空売り
貸借50できる
信用(買建のみ)20できない
現物のみ2できない

日向「……22銘柄、つまり3割近くが、そもそも売れませんでした」

沼田「そこが最初の関門だ。『この株は高すぎる』という判断が正しくても、売る手段がなければ何もできない」

堀田「モート担当だ。しかもこれは偶然ではない。貸借銘柄の指定には流動性や株主数の基準がある。急騰した小型株ほど、売れない側に残りやすい」

日向「上がりすぎた株ほど売れない……逆じゃないですか」

守田「リスク管理担当の守田だ。逆ではない。それが仕組みだ。だから逆バリューは、最初から土俵が狭い」


📊 第2章|貸借50銘柄にPERを当てたら、9社が残った

日向「残った貸借50銘柄に、条件を重ねます」

🔍 今回のスクリーニング条件 ・過去1年の上昇率ランキング上位(75銘柄)→ ETF除外で 72銘柄 ・信用区分が 貸借(=空売りができる) → 50銘柄 ・PER 50倍超 または PER算出不能 → 9銘柄

コード銘柄市場2025年9月 → 2026/9/15終値騰落PERPBR
285Aキオクシア東P3,150 → 51,750+1,542.9%算出不能11.46
6072地盤ネットHD東S166 → 1,094+559.0%算出不能17.63
4062イビデン東P3,633 → 19,115+426.1%64.3倍9.43
7746岡本硝子東S188 → 795+322.9%316倍9.35
3444菊池製作所東S354 → 1,215+243.2%107倍2.60
6522アスタリスク東G430 → 1,425+231.4%算出不能6.19
4392FIG東P330 → 981+197.3%50.7倍3.05
8035東エレク東P20,600 → 50,650+145.9%算出不能10.82
3436SUMCO東P1,289 → 2,900.5+125.0%算出不能1.79

📅 数字の基準日 ・株価・PER・PBRは 2026年9月15日の終値(株探の確定値) ・「2025年9月」は、上昇率ランキングから取得した約1年前の株価 ・決算の数値は各社の開示による ・スクリーニングは断面です。上の9社は、この基準日でも条件を満たしています

日向「9社出ました。ここから売り候補を選べば——」

墨田「AIバックチェック担当の墨田です。待ってください」

日向「早い」

墨田「この9社を1社ずつ決算で開きました。同じ『高PER』という見た目の裏に、性質のまったく違う4つの型が入っています」

墨田「区別せずに売ると、事故になります」


机に広げた決算資料と電卓を前に、書類を読み比べるフクロウの夜見
🦉 夜見賢三 ——数字は、並べて初めて意味が出る

📉 第3章|型①|業績が追い付いていない──岡本硝子(7746)

待伏「待ち伏せ担当の待伏です。いちばん教科書的なのがこれです」

決算期売上高営業利益最終利益EPS
2023年3月期48.9億円1.33億円2.14億円9.2円
2024年3月期45.8億円0.61億円1.01億円4.4円
2025年3月期46.9億円1.26億円0.89億円3.8円
2026年3月期47.3億円▲0.78億円▲1.49億円▲5.6円
2027年3月期 予想55.5億円1.92億円0.75億円2.5円

待伏「5期並べると、はっきりします。売上は48.9億円から55.5億円へ、4年で13%増えただけです」

夜見「EPSは9.2円から2.5円へ、4割以下に減っています」

日向「……株価は4.2倍になってるのに」

夜見「株価795円に対して、今期の予想EPSは2.5円。PERは316倍です」

沼田「誤解しないように言っておくが、これは会社の悪口ではない。売上は伸びているし、今期は黒字に戻る計画だ。問題は会社の中身ではなく、値札のほうにある」

堀田「この型の特徴は、下がるときに理由が要らないことだ。PER316倍は『何かを期待して』付いた値段で、期待が薄れるだけで戻る」


🩸 第4章|型②|赤字なのに上がっている──地盤ネットHD・アスタリスク

夜見「PER算出不能の銘柄のうち、本当に赤字なのは2社でした」

🏗️ 地盤ネットホールディングス(6072)|PBR17.63倍

決算期売上高営業利益最終利益EPS
2024年3月期18.8億円▲0.48億円▲0.95億円▲4.2円
2025年3月期18.8億円1.09億円0.74億円3.3円
2026年3月期31.9億円0.35億円1.97億円8.8円
2027年3月期 予想36.0億円▲1.25億円▲1.27億円▲5.7円

待伏「前期は最終1.97億円で過去最高でした。ところが今期は、会社自身が赤転を予想しています」

日向「株価は1年で6.6倍、PBRは17.6倍。……そこに赤字予想」

📱 アスタリスク(6522)|4期連続赤字

決算期売上高最終利益
2022年8月期24.1億円3.22億円
2023年8月期17.6億円▲1.70億円
2024年8月期15.8億円▲3.89億円
2025年8月期16.7億円▲1.82億円
2026年8月期 予想14.5億円▲3.30億円

夜見「売上は24.1億円から14.5億円へ、4割減っています。赤字は4期連続で、今期は幅が広がる予想です」

日向「株価は3.3倍……」

守田「ここで止める。『赤字なのに上がっている』は、売りの理由としては弱い」

日向「え」

守田「赤字の会社が上がるのは、たいてい将来の何かを買われているからだ。その何かが実現するかどうかを、こちらは判定できない。判定できないものに売り向かうのは、賭けであって投資ではない」

沼田「守田の言うとおりだ。うちが売るのは『高すぎる』ではなく『高さを維持できない』と言い切れるときだけだ」


🛑 第5章|型③|売ってはいけない高PER──菊池製作所・FIG

墨田「ここがいちばん重要です。同じ高PERでも、絶対に売り向かってはいけない型があります」

🔧 菊池製作所(3444)|PER107倍

決算期売上高営業利益最終利益
2023年4月期51.0億円▲6.31億円▲11.01億円
2024年4月期52.1億円▲6.49億円▲8.18億円
2025年4月期54.6億円▲5.20億円0.43億円
2026年4月期60.9億円▲2.48億円1.03億円
2027年4月期 予想61.8億円1.77億円1.37億円

夜見「3期連続の営業赤字から、今期ようやく営業黒字に戻る計画です。PER107倍が高いのは、利益がまだ小さいからです」

日向「……分母が小さいだけ」

堀田「そのとおりだ。そして売上は51.0億円から61.8億円へ、着実に伸びている。回復の初期に付くPERは、必ず高く出る」

守田「この型に売り向かうと、いちばん危ない。利益が回復するほどPERは自動的に下がり、株価は下がらない。売り方の負けパターンとして典型的だ」

💻 エフ・アイ・ジー(4392)|PER50.7倍

待伏「こちらも中身が伴っています。売上133億円→予140億円、営業利益8.34億円→予10.0億円。2024年12月期に14.12億円の最終赤字がありましたが、翌期には7.83億円の黒字へ戻しています」

日向「高PERだけど、伸びてるほう……」

沼田「そうだ。PERという数字は、売り候補を見つける道具ではない。『中身を開けるべき銘柄』を絞る道具でしかない」


🦑 第6章|墨田「私も、危うく取り違えました」

墨田「4つ目の型を出します。これは当商会の失敗になりかけたものです」

墨田「キオクシア・東京エレクトロン・SUMCOの3社は、PERが『算出不能』と表示されます。最初、私はこれを赤字だと解釈しました」

日向「違うんですか」

墨田「違います。会社が今期の業績予想を開示していないからです。3社とも決算短信の予想欄が『-』で、赤字だからではありません」

⚠️ PERが出ない理由は2つある ・①赤字 … 地盤ネットHD、アスタリスク → 分母がマイナス ・②会社が予想を開示していない … キオクシア、東エレク、SUMCO → 分母が存在しないだけ

墨田「この2つを混ぜると、『半導体大手3社が赤字なのに上がっている』という、事実と違う記事ができあがります」

日向「……あぶなかった」

沼田「スクリーニングは、ここが怖い。表の空欄には意味が2つ以上あるのに、機械は1つに見せる。だから最後は必ず、1社ずつ決算を開く」


会議机を囲む沼田と日向のところへ、テック番長と全世界坊主が割り込んできている場面
🦍 テック番長 + 🧘 全世界坊主 ——今日も、茶々を入れに来た

🐒 乱入|レバナス小猿「上がってる株を売るんですか?」

レバナス小猿「ちょっと待ってくださいよ。いま『1年で6倍になった株』の話してましたよね」

日向「はい」

小猿「それ、買うんじゃなくて……売るんですか?」

日向「検討します」

小猿「正気ですか!? 6倍になった株はですね、7倍にもなるんですよ。ボクの世界では、上がってる株を売るのは自殺行為です」

守田「小猿、その指摘は正しい」

小猿「またそれだ」

守田「空売りは損失が理論上無限で、買いにはないコストが2つかかる」

🚨 買いにはないコスト ・踏み上げ … 上がるほど損失が膨らみ、証拠金の追加が要る ・逆日歩 … 売り建てが多い銘柄では、持っているだけで日々かかる費用が発生する ・加えて、配当落調整金を支払う側に回る

守田「だから第1回で書いたとおり、うちの売建は全体の1.5%しかない。本命は買いだ。売りはおまけだ」

小猿「……じゃあ、なんでやるんですか」

日向「あ、それ僕が答えます」

小猿「おっ、新人くん」

日向「バリュー投資って、価値と値段がズレてるところを探す作業じゃないですか。ズレは、安いほうにも高いほうにも出るはずなんです」

日向「なのに僕たち、安いほうしか見ていなかった。それって、物差しの半分を捨ててるのと同じでは、と思って」

小猿「……えっ、けっこう良いこと言いますね」

沼田「こいつが企画者だからな」

小猿「ボク、今日は絡む相手を間違えた気がします」


🧯 第7章|守田の歯止め

守田「最後に、この連載の枠を明示しておく」

🛡️ 逆バリュー投資の運用ルール ・売建は全体の数%まで。買いポジションのヘッジという位置づけを超えない ・一度に売らない。分割で、高値をコツコツ。バリュー株の段階買いの鏡像 ・短期の踏み上げは覚悟のうえ。それが耐えられない金額では建てない ・「登り100日、下げ3日」。下げは速いので、深追いせず適度に利確する ・回復途上の高PER(型③)には手を出さない

墨田「記事としての注記も置きます。本稿で挙げた9銘柄は、スクリーニングを通過した「中身を開けるべき銘柄」であって、売り推奨ではありません。当商会がこのうちのいずれかを実際に売り建てているかどうかも、本稿では述べていません」

沼田「それでいい。今日の記事の値打ちは銘柄ではなく、72社が50社になり、9社になり、そこから4つの型に割れたという手順のほうにある」


会議机に集まって書類を見ている河内・夜見・守田・日向
沼底バリュー商会・全体会議 ——結論は、全員で出す

📋 まとめ|今回の手順と発見

段階結果
過去1年の上昇率上位75銘柄(ETF3本を除き72銘柄)
信用区分で絞る貸借50/買建のみ20/現物のみ2 = 3割近くが売れない
PER50倍超 or 算出不能9銘柄
型①業績が追い付いていない岡本硝子(株価4.2倍・EPSは4年で4割以下・PER316倍)
型②赤字なのに上がっている地盤ネットHD(PBR17.6倍・今期赤転予想)/アスタリスク(4期連続赤字・減収)
型③売ってはいけない高PER菊池製作所(黒転直後で分母が小さいだけ)/FIG(中身が伴う)
型④PERが出ないだけキオクシア・東エレク・SUMCO = 赤字ではなく予想未開示

日向より 「スクリーニングを回して分かったのは、機械が出した9社のうち、性質が同じものは1つもなかったということでした。同じ『高PER』でも、売っていいのは1社か2社で、絶対に売ってはいけないものが混ざっている。条件を通ったところが終点ではなく、そこが入口でした。次回は、この中から実際に決算資料を全部開けてみます」

沼田「新人が9社開けて帰ってきた。それだけで、この企画は元が取れている」


この連載は不定期で続きます。

関連:逆バリュー投資①|なぜ少量ずつ売るのか/バリュー投資の通信簿/信用キャリーの10年設計

※本稿は投資助言ではありません。特定銘柄の売買、とりわけ空売りを推奨するものではありません。空売りは損失が理論上無限であり、踏み上げ・逆日歩・配当落調整金の支払いなど、買いにはないコストが発生します。制度信用の区分(貸借/信用/現物)は株探の表示に基づく2026年9月8日時点のものであり、区分は取引所の判断で変更されます。実際に空売りが可能かどうかは、必ずご自身の証券会社で確認してください。株価・PER・PBRおよび上昇率は2026年9月8日時点、業績数値は各社の決算短信によります。本稿で挙げた銘柄は、スクリーニング条件を通過した分析対象として記載したものであり、企業の事業内容や経営を否定するものではありません。当商会が各銘柄のポジションを保有しているか否かについては述べていません。投資はご自身の判断と責任でお願いします。